将来的にはFlashにも対応

低コスト機器でPC並のGUIを実現、三菱が新技術

2009/02/10

 三菱電機は2月10日、組み込み機器向けでGUI描画処理を高速に行うための小型のIPコアを開発したと発表した。テレビのメニュー画面や電車の列車内案内パネル表示のような、低速なプロセッサしか載せられない組み込み向け機器に搭載することで、PCのFlashのように滑らかで素早い反応のGUIを実現できるという。

三菱電機が記者会見で行ったデモンストレーション(撮影:@IT)

 同日記者会見でデモンストレーション用システムを披露した情報技術総合研究所表示システム技術部部長の田中敦氏は、組み込み機器の最低ラインである66MHz駆動程度のプロセッサでも、XGA/60fpsの画質でベクターグラフィックやスケーラブルなフォントが扱える様子を示して見せた。これは2GHz駆動のPC向けCPUより高速な描画だという。新型IPコアにより、従来レスポンスや視認性の悪かった組み込み機器のGUIでも、PC並のGUIが実現できるという。

mitsubishi01.jpg 三菱電機 情報技術総合研究所表示システム技術部部長 田中敦氏

 開発したのは高品質な文字表示を行う独自アルゴリズム「Saffron」をハードウェアで実現する描画処理用IPコアと、ベクターグラフィック処理のIPコア「Sesamicro」。すでにこれまでにもSaffronはソフトウェアとして提供されていて、アドビのFlashに搭載されている。今回、Saffronをハードウェアで実装可能としたことで、CPUに負荷をかけることなく毎秒8万文字の描画を実現したという。拡大・縮小、回転などをリアルタイムに行うことができる。

 Sesamicroは一般的なベクターグラフィックを独自の描画回路としたもの。将来的にはSesamicroをベースにした組み込み向けの共通GUIプラットフォームを開発。車載表示やFA表示、AV表示器などに展開していくという。SesamicroはOpenVGに準拠しており、将来的にはFlash対応も視野に入れているという。

 開発した2つのIPコアは、一般的なPC向けのCPUやGPUが1億オーダーのトランジスタを搭載しているのに対して、いずれも40万トランジスタ程度と小型化を実現したことが特徴。これは組み込み向けのGPUと比較しても1桁から2桁程度小さいという。「もともとケータイ向けに3Dグラフィックを作っていて、そのときに培ったノウハウを脈々と技術者が持っていた。こうした小型化は簡単にできることではない」(田中氏)。小型化したことで低価格のFPGAや組み込み機器用カスタムLSIに低コストで搭載できるという。直接カスタムLSIに搭載することで、既存のシステムボードの設計に変更を加える必要がないこともメリットという。

 開発した両IPコアは2009年中に機器に組み込んで事業化する予定だが、現在のところ外販する計画はないという。

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(@IT 西村賢)

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