フィックスターズが新製品

Cell利用でフルHDをリアルタイムエンコード可能に

2009/02/24

 フィックスターズは2月24日、1920×1080のフルHD映像をリアルタイムで動画圧縮フォーマット「H.264」のエンコードできる新製品「CodecSys CE-100/200」を発売した。4月上旬から国内出荷を開始するほか、米国子会社を通じて海外にも販売する。価格はCodecSys CE-100が290万円、同CE-200が330万円(ともに税別)。

 CE-100/200の両システムともレノボのワークステーション「ThinkStation」をベースに、並列処理に強い「Cell Broadband Engine」を搭載したアクセラレータボード「GigaAccel180」をPCI Expressスロットに装備しており、一般的なCPUでは実現不能だったリアルタイムでのフルHD映像のエンコードを可能とした。上位モデルのCE-200にはキャプチャボードが付属し、ライブ映像をリアルタイムでH.264形式にエンコードできる。

 リアルタイムで行えることで、フィックスターズは、IPTV向け映像素材の作成やBlu-rayディスク用のオーサリング向けの圧縮、テープメディアで保存されている大量の映像アーカイブのデジタル化といった作業の生産性を大幅に向上できるとしている。

デモンストレーション映像

専用ハードと汎用PCの課題を解決

 MPEG-2に比べて約半分の容量に圧縮可能なH.264は次世代のコーデックとしてBlu-rayやIPTV向けで注目されているが、「MPEG-2の数倍から10倍以上の演算量が必要。クラスタ構成でも実時間の3〜5倍の処理時間がかかる」(Cellエンジニアリング第1事業本部第1部 部長 近村啓史氏)ことが課題。高速な処理が可能な専用LSIを使うと開発費が高額になり、逆に汎用PCとソフトウェアによるアプローチでは、十分な処理速度が得られなかったという。

fixstars01.jpg フィックスターズ Cellエンジニアリング第1事業本部第1部 部長 近村啓史氏。手にしているのはCell/B.E.搭載の「GigaAccel 180」

 今回発表したCE-100/200シリーズは、米Broadcast International社との共同開発で、BI社が持つコーデック技術を、フィックスターズが蓄積したCell向けの最適化技術で実装した形だ。ソフトウェア実装としたことで、入力フォーマットの追加やエンコーダアルゴリズムの改善、構築済み既存システムのインテグレーションなどが可能という。

 汎用PCとの比較では、例えば、インテルCore 2 Duo(2.53GHz)のシステムと比べた場合、汎用CPUのみで、1080i、60fpsの16.7秒の映像をH.264でエンコードすると実時間の8.36倍に当たる139.55秒かかるのに対して、8個の演算ユニットを持つCellを2.8GHzで使った場合には14.28秒と実時間以内でのエンコードが可能という。

 フィックスターズではCodecSysシリーズで初年度100セット、3億円程度の売り上げを見込んでいるという。今後はCellを2個搭載したブレードサーバをプラットフォームにしたハイエンド製品も計画中で、ゴールデンウィークごろには出荷する予定という。

 フィックスターズはCellを始め、GPGPU、マルチコアCPUを使ったソフトウェア開発を、コンサルティングやハードウェア調達も含めて提供する企業。2002年の設立以来、金融、デジタルメディア、医療、製造検査の分野で高速計算、大容量データ処理のソリューションを提供してきている。

(@IT 西村賢)

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