C#やObjectve-C、Python本は成長

米国でRuby関連書籍の売り上げが減速か

2009/02/27

 出版社の米オライリー・メディアは2月25日、プログラミング言語関連書籍の2008年の売り上げデータから、各言語関連書籍の市場シェアを可視化したデータを公開した。データはオライリー1社のものではなく、書籍販売のPOSデータを管理・提供するニールセン・ブック・サービシズから得たものという。

 データを可視化して分析を加えているのは、オライリー・メディアのOpen Tech eXchange部門で発行人を勤めるマイク・ヘンドリクソン(Mike Hendrickson)氏。2月25日付けのブログ投稿によれば、2008年のプログラミング言語関連書籍の売り上げ実績は174万部で、2007年の185万部から5.9%減少。ただし、コンピュータ関連書籍全体は8%減少しており、これと比べてプログラミング言語関連書籍の売れ行き自体は特に悪いわけではないという。

 ヘンドリクソン氏が公開したグラフによれば、2008年第4四半期の売り上げで、前年同期比965%増という大躍進を遂げているのはObjective-C。ほかにActionScriptも33%増と好調。逆に落ち込みが激しかったのはRubyで、51%減となっている。ほかに落ち込みの大きい言語としては「JavaScript(24%減)」、「Visual Basic(15%減)」、「Perl(25%減)」、「Java(12%減)」などがある。ただし、これらのカテゴリー分けでは、プログラミング言語そのものを解説した書籍だけでなく、その書籍のコードサンプルで使われている言語も含まれている。

 Objective-Cの販売部数が激増しているが、ヘンドリクソン氏は、Mac OS XやiPhoneでの開発に注目が集まったこと以外に、この成長の理由は考えつかないとしている。

langs01.jpg 2008年第4四半期の米国市場でのプログラミング言語関連書籍の販売部数のシェア。緑色は増加傾向、赤は減少傾向を示していて、色が濃いほど増減が激しいことを表している 出典:O'Reilly Media

 以上の数値とグラフは、直近の第4四半期で前年と比較したものだが、通年で見ても似た傾向が見て取れる。

 例えばRubyは出版タイトル数自体は40点から69点へと増えて出版ブームが続いているように見えるが、売り上げ点数で見ると、2007年に9万5700部あった売り上げが、2008年は6万1200部と36%減という結果となっている。

 売り上げ部数の多いメジャーな言語群では、C#が躍進。23万部の売り上げは27万部になり、シェアも13.6%から15.6%へ2ポイント上昇している。一方、Javaは24万部から21万部へ販売数がダウン。米国市場での書籍販売数で、C#はJavaを抜いたことになる。これは過去3、4年で一貫した傾向にあり、2005年から3年連続でC#関連書籍の販売数は増加、逆にJava関連書籍の販売数は減少している。

 このほか通年で比較して2007年から2008年にかけて売り上げを順調に伸ばしたのはPHP(15万8000部→17万3000部)、Python(4万6000部→5万9500部)などで、逆に売り上げが落ちたのはJavaScript(20万3000部→17万3000部)、Perl(3万8000部→2万9000部)、VBA(6万7000部→5万6000部)、Visual Basic(10万部→7万2000部)などとなっている。

 ほかに注目すべき動向としては、売り上げ部数が2000部以下の、ごくマイナーな分類の書籍の売り上げが伸びていること。このジャンルには「Alice」「Haskell」「F#」などが入っていて、ヘンドリクソン氏は関数型言語が普及期にさしかかるにつれて、こうした書籍の売り上げが成長しているとしている。このほか、ややマイナーという分類では、Lua(2400部→1万1000部)、Processing(2000部→8700部)などが成長の注目株だ。

langs02.jpg トップ10のプログラミング言語の関連書籍販売部数推移。2008年にRubyは圏外になっている 出典:O'Reilly Media

ネット上での人気は?

 出版市場の売り上げ部数シェアは、プログラミング言語の人気を推測する1つの指標となり得る。しかし一方、紙ベースの出版市場は縮小傾向にあり、技術者が情報をオンラインで取得するケースが増えていると考えられる。

 特定のキーワードによる検索数の推移をグラフ化する「Google Trend」を使って「C#」と「Java」を比較してみると、Javaというキーワードによる検索が世界的に減少傾向であることが分かるが、まだ検索数ではJavaがC#に大きな差を付けていることが分かる。Web上の情報量でもJavaとC#は差が大きい。グーグル以外の検索エンジンも含めて、検索にヒットするページ数を元にランキングを公表しているTIOBE Softwareの「TIOBE Programming Community Index」という指標では、Javaは1位にランクしていて6位のC#に差を付けている。

 一方、Google Trendで「Ruby」「Python」「Perl」を比較すると2004年からPerlが一貫して減少傾向にあり、2007年初頭にはこれら3つがほぼ並んでいることが分かる。その後、RubyとPythonがほぼ同数で推移する一方、Perlは減少を続けている。ただし、日本語圏だけで見ると事情は異なり、Perlは減少傾向にはあるものの、検索数では依然Perl、Ruby、Pythonの順に多い。

 PythonとRubyについて米国だけで見ると、2005年以降はRubyがPythonをかわして常に1〜2割程度は検索数が多い様子も見て取れる。これはRuby書籍の売れ行き不振という出版市場と逆の傾向を示しているとも考えられる。Ruby人気がうかがえるのは日本でも同じだ。逆にイタリアやドイツ、フランスなど欧州諸国ではRubyよりもPythonの検索数のほうが多い。

 書籍の売り上げが伸びているPHPについても、検索数推移は逆のトレンドを示しており、2004年以降はコンスタントにPHPの検索数が落ちている。

langs03.png Google TrendによるC#、Javaの検索数の推移比較グラフ。減少傾向にあるものの、相変わらずJava(水色)のほうがC#(赤)よりも検索数が多い。過去30日で比較すると検索ボリュームは約4倍。
langs04.png Perl(黄色)、Python(赤)、Ruby(水色)の比較。Perlは減少傾向にある。

(@IT 西村賢)

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