Kindle端末よりも使いやすいか
アマゾンのKindle for iPhoneはキラーアプリになる?
2009/03/05
米国のApp Storeで3月3日、「Kindle for iPhone」がリリースされた。これでiPhoneは突如、真の電子書籍リーダーとなり、入手しやすい豊富なコンテンツが一気にそろった。待てよ、確かにアマゾンはKindleアプリケーションを開発中だと言っていたけれど、まだそれから1カ月も経っていない。このアプリケーションが今リリースされたことに正直私は驚いている。しかも、電子書籍リーダーの新モデル「Kindle 2」が顧客に出荷開始された日(正式には2月24日)から、こんなにすぐに。
アマゾンがKindleの書籍をiPhoneに対応させたのは正解だ。同社の主要なデジタル事業は、コンテンツの販売であって、端末の販売ではないのだから。アマゾンはKindleを販売することで、デジタル書籍やオンライン雑誌など、端末で読める各種コンテンツの販売促進を目指している。
戦略としては、アマゾンは長期的な視点から電子書籍ビジネスに取り組んでいる。つまり、同社の狙いは、いずれは書籍に取って代わり、恐らく新聞などの購読型出版物にも取って代わるであろうデジタルコンテンツのプラットフォームを構築することだ。アマゾンにとっては、著作権で保護された自社のコンテンツをより多くの端末に対応させることが利益につながるのだ。
その点、アマゾンがアップルの携帯電話を選んだのは正しい判断だ。アマゾンはほかの各種スマートフォンにもKindleの書籍を対応させる必要があるだろうが、とにかくiPhoneは多くの点でKindleよりも優れた電子書籍リーダーだ。Kindleは持ち歩くには少し重いが、iPhoneなら気軽に持ち歩ける。マルチタッチスクリーンや大きなストレージ容量、カラーディスプレイなども、iPhoneならではの特徴だ。なお、Kindle for iPhoneはiPod touchにも対応している。
電子書籍は数十年前から存在しているが、いくつかある欠点のせいでその採用は広がらずにいる。中でも、電子書籍の品ぞろえや価格の問題、厳しいデジタル著作権管理(DRM)などは、電子書籍普及の最大の阻害要因となっている。だがアマゾンには電子書籍が豊富に取りそろえられており、価格も驚くほど手ごろだ。もっとも、初代のKindleを使ってみた限りでは、DRM機能には問題があるように思えた。しかし、今では状況も違っている。アマゾンのIDを鍵として使うことで、iPhoneやiPod touchも含め、複数の電子書籍リーダー向けにKindleの書籍をアンロックできるようになっているのだ。
私は昨年夏に初代のKindleをテストしてみたが、その時点では、この端末は不出来な電子書籍リーダーとしか思えず、購入済みの書籍については「無駄な買い物」になったとあきらめていた。だが昨晩遅く、iPhone 3GにKindleアプリケーションをインストールしてみたところ、以前に購入してあった書籍をアマゾンからすぐにダウンロードできるようになっていた。料金は支払い済みだから、もちろん無料でだ。
電子書籍を購入するための手順は、Kindle本体ほど明快ではないが、十分なレベルには達している。iPhoneとKindleはどちらも内蔵のワイヤレス3G接続でKindle Bookstoreにアクセスできるようになっている。だがiPhoneでは追加のステップが必要だ。ユーザーはSafariを使わなければならないのだ。恐らく、電子書籍をデスクトップPCで購入してからiPhoneにダウンロードする方が簡単だろう。この点については、iPhone向けに提供されているそのほかの電子書籍サービスや電子書籍リーダーと同様だ。
個人的には、今回のリリースは私にとって格好のタイミングだった。私は先週、ノキア N96をしばらく使わないことに決めたところだ。以前の記事で、私は皆さんに「iPhoneを使うのをやめても生活できるか?」と問い掛けた。もしApp Storeを使いたいのなら、その答えはノーだ。今でも私は、iPhoneは電話としては満足できる代物ではないと思っている。だが、ポケットPCとしてならピカ一だ。App Storeが同端末の有用性を大きく拡大してくれる。
電子書籍の人気は今後急速に伸びて行くだろう。そして、メインストリームユーザーにとって電子書籍を利用しやすい存在へと変えたアマゾンの功績は大きい。アップルが料金設定やDRMへの対応によってデジタル音楽の世界で成し遂げたことを、アマゾンは今、電子書籍の世界で成し遂げようとしている。だがDRMに関してはアマゾンの方が賢明だ。アマゾンはKindle Bookを自社の電子書籍リーダー以外の端末でも利用できるようにしているが、一方のアップルはiTunesの楽曲を多くの端末で利用できるようにするためにDRMのフリー化に踏み切らなければならなかった。
(eWeek Joe Wilcox)
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