サムスンのバイラル広告の映像が話題に

24台のSSDでRAID、Office 6つを0.5秒起動

2009/03/11

 容量256GBのサムスン製MLCタイプのSSD24台を使い、2GB/秒という桁違いに速いストレージを実現したデモンストレーション映像がYouTube上で話題となっている。マイクロソフトのOffice製品を一気に6つ同時に起動しても0.5秒。スタートメニューにある53のアプリを順次起動しても18秒で完了。デフラグは一瞬だ。

 次々とアプリケーションが画面に飛び出してくる映像は、普段PCのノロさにイライラしているPCユーザーに快哉(かいさい)を叫ばせるに十分なインパクトだ。

ssd01.png 24台のSSDを1台のPCに接続したデモンストレーション映像
ssd02.png Word、ExcelなどMicrosoft Office製品6つがすべて0.5秒で起動
ssd03.png ベンチマークを取ったPCのパーツ構成
ssd04.png 映像はマーケティングチームの行き詰まった企画会議から始まり、ITオタクの思いつきからスーパーマシンを制作、最後にはパーティー風の演出でさんざん驚いて見せるなど白々しさも

 シーケンシャルリードで比べた場合、7200rpmの一般的なハードディスクで数十〜100MB/秒、SSDの中でも非常に高速な部類に入るインテル製SSD「Intel X-25E Extreme SATA SSD」でも200〜250MB/秒程度だから、こうした単体ドライブの10〜20倍の速度ということになる。

 3月2日に公開されたこの映像は、イギリス在住のssdawesomeというユーザーがアップロードしたもの。一見ユーザーが自発的に作ったコンテンツにも見えるが、実際には、サムスンのSSD製品のプロモーションのために外部プロダクションによって制作されたものと見られる。ユーザープロフィール中にサムスンのSSD製品紹介ページへのリンクがあるほか、映像の最後には同ページへのURLが書かれている。また、冒頭には「サムスンからSSDの良さを紹介してくれと頼まれた」とあったり、映像の途中でもホワイトボードに「Samsung PRESENT」とある(そもそも1台4万円前後もするドライブを100万円もかけて24台も購入する個人ユーザーはいないだろうが)。

 SSDの優位性を示すデモンストレーションとしては疑問も残る。同様のRAID構成ならハードディスクでもかなり高速になるだろう。そもそもシーケンシャルリードやランダムリードが速いのは当然で、SSDで問題となるのはランダムライトの性能だ。映像の最後に登場するシステム構成を見ても、RAIDコントローラ×2、グラフィックボード2枚など常軌を逸したハイスペックぶりで「速くて当然」という感想にもつながりかねない。1つで17〜18万円もするCPU(Core 2 Extreme QX9775)は3.2GHz駆動の、現在“究極”の4コアプロセッサだ。

 こう考えると、これはベンチマークのためのベンチマークという冷めた見方も可能だ。しかし、この映像は公開から約1週間で合計56万回も再生され、1800を超えるユーザー評価を集めている。現在評価の平均は満点の5つ星だ。この原稿を書き始めてから書き終えるまでの間にも再生回数は3万回ほど上積みされている。

 コメントを見ると、専門家と見られるユーザーからRAIDコントローラのスペックの上限について詳細な突っ込みを受けていたり、無意味なベンチマークだという批判があったりもするが、おおむね好評のようだ。これは、バイラルマーケティングとしては上々の結果と言えるだろう。

 この映像からリンクされているサムスンのページには、8つほどサムスンが用意したマーケティング映像がある。中には、窓から放り投げたSSDが数メートル下のコンクリに直撃、それでもWindowsが起動するのだということを証明するシーンなど、それなりに見応えのある映像がある。しかし、50万回も再生されるビデオなどないだろう。

samsung.png YouTubeの映像からリンクが貼られているサムスンのSSD関連ページ

 露骨すぎない程度に、さらりとスポンサーとの関係を明かしていること、詳細なベンチマークの条件を明かしていること、そして何よりもギークな人々の心をつかむだけの楽しい実験であったことなど、この映像が好評を博している理由はいくつかありそうだが、今後のマーケティングを考える上で示唆に富む事例といえそうだ。

(@IT 西村賢)

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