表示の遅さ、価格が課題

カラー電子ペーパー端末、富士通が一般販売へ

2009/03/18

 富士通フロンテックは3月18日、独自開発のカラー電子ペーパーを採用した携帯情報端末「FLEPia」(フレッピア)を個人や法人向けに一般販売すると発表した。Webサイトを通じて販売していく。出荷は4月20日開始で価格は9万5000円(税別)。2年間で5万台の出荷を目指す。これまで電子ブックなどで実用化されてきたのは主にモノクロ製品で、一般販売される電子ペーパー搭載端末としてはカラーは初めて。

flepia01.jpg カラー電子ペーパーを採用した携帯情報端末「FLEPia」(フレッピア)
flepia02.jpg 厚さは12.5mm
flepia03.jpg ボディカラーは白と黒の2色

 携帯電話とのBluetooth接続によるダイヤルアップ機能やWi-Fi(11b/g)にも対応。Windows CEベースであるため、Internet Explorer for Windows CEによるWebブラウジングやWebメールの利用、Windows CE付属のメールソフトの利用も可能。WordやExcel、PDFの閲覧のほか、電子書籍ビューアとして「T-Time」(.book形式)、「ブンコビューア」(XMDF形式)を搭載。電子書籍販売のパピレスと提携し、主に文庫本など2万冊が読める環境を整えた。コンテンツはSDカード(別売)に保存できる。

 スペックは8インチ、XGA(768×1024ドット)、重量385グラム、幅158mm×高さ240mm×厚さ12.5mm。電磁誘導方式のワコム製タッチパネルを採用している。バッテリ駆動時間は約40時間(64色表示2400回分。1ページ1分で更新した場合)。表示色数は最大26万色だが、各ピクセルのコントラストを最大値に上げるのに時間がかかるため、画面書き換えは3度に分けて行うプログレッシブ方式を採用する。1度目のスキャン(1.8秒)で64色、2度目(5秒)で4096色、3度目(8秒)で26万色を表示する。メニューなどコンテンツによっては色数を抑えて速度を優先させることができる。また、ユーザー自身が表示色数を指定できる。1度のスキャンだけではコントラストが低いが、明るい場所でモノクロの電子書籍を読む場合などには十分という。


 多くのコンテンツで4096色表示を行うと考えると書き換え時間は5秒ということになる。1度目のスキャンでも内容は十分把握できるほか、書き換え中のページ繰りも可能なため、実際の体感速度は5秒より短い。ただ、これは市場で先行するモノクロ電子ペーパーの書き換え時間に比べるとかなり遅い。米アマゾンのKindleやソニーのPRS-505が採用するE-Ink社の電子ペーパーでは書き換え時間は0.5秒程度。価格も9万5000円(税別)とKindle(360ドル)やPRS-505(270ドル)に比べて高価だ。

flepia04.jpg 富士通フロンテック 経営執行役常務 利根廣貞氏

 価格や画面の書き換え時間に課題は残るが、「将来のコンテンツのカラー化を考えると、モノクロでは限界がある」(富士通フロンテック 経営執行役常務 利根廣貞氏)との判断から一般販売に踏み切った。「現在も改良を進めており、1秒以下を目指している。カラー化により、コミックや新聞といったコンテンツ提供者に受け入れられるのではないかと考えている。今後は(8型だけでなく)6型や12型などバリエーションを増やし、年間10万、20万台規模のビジネスにつなげていきた。小型モデルでは4、5万円を目指した商品も出していきたい」(利根氏)としている。

 富士通フロンテックは金融や流通の情報端末、表示システムなどを手がけており、2007年4月からカラー電子ペーパーの法人向け出荷を開始している。液晶パネルなど競合するデバイスに比べて消費電力が少ないことから、飲食店でのメニュー端末や銀行の窓口業務の補助端末などで活用できるのではないかという。また、今回、一般販売を開始することで個人利用は80%程度になると見込んでいる。PCより軽く、ケータイより画面の広い書籍・ドキュメントビューアとして、幅広い年齢層で電車内や屋外での利用を期待しているという。

 一般販売に踏み切ったことでコンテンツ市場の広がりにも期待する。「これまでにも朝日新聞や日経新聞とは話をしてきたが、購読料をどうするのか、既存販売店はパスするのか、ビューア端末はリースにするのかどうかなど、話が行きつ戻りつしている。今回、具体的に商品を出したので、ビジネスができるのではないかと期待している」(利根氏)という。

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