安定性が向上
大幅に改善されたIE8――しかしライバルたちはすでに一歩先へ
2009/03/23
「Microsoft Internet Explorer 8(IE 8)」は、同Webブラウザの従来バージョンと比べると大幅に改善されている。使い勝手、セキュリティ、安定性が向上したIE 8は、現在のIEユーザーにとって必須のアップグレードだといえる。しかし競合ブラウザのユーザーに訴求することはなさそうだ。
eWEEKラボで行ったIE 8の最終版のテスト、ならびに以前に実施した同ブラウザのリリース候補版と後期ベータ版のコードのテストの結果、IE 8は、IE 7から大幅に改善されていることが分かった(IE 7自身もIE 6から大幅に改善された)。IE 8では従来版と比べてユーザーインターフェイスが改良されたほか、セキュリティ機能の強化や標準のサポートの改善も施された。
IE 8は現在のIEユーザーにとって価値のあるアップグレードだが、Mozilla Firefox、Google Chrome、Apple Safari、OperaのユーザーにIE 8への乗り換えを促すほどの魅力があるかどうかは疑問だ。IE 8の最初のベータ版がリリースされた後、Webブラウザ市場を巡る状況は劇的に変化した。IEのライバル製品はいずれも新バージョンがリリースされ、Google Chromeという強力な競合製品も新たに市場に参入したのだ。
IE 8はあらゆる点で新世代のWebブラウザであるが、よりアグレッシブかつ頻繁にアップグレードが行われている競合ブラウザに対しては、すでに一歩後れを取っている。しかしIEをメインブラウザとして利用しているユーザーであれ、時折ほかのブラウザからIEに切り替えるだけのユーザーであれ、IE 8へのアップグレードをぜひ検討すべきである。
IE 8では、数カ所にわたるインターフェイスの改善により、使い勝手が大幅に向上した。
インターフェイスの改善点の1つに、タブ管理機能が全般的に洗練されたことがある。IE 8で新しい空白のタブを開くと、最近閉じたタブのリスト、「InPrivate」ブラウジングセッションを開始するオプション、IE 8の新しい「アクセラレータ」機能など、Webサーフィンに関連したいくつかのオプションが表示される。これはIE 7の空白タブと比べると歓迎すべき改善だが、Opera、Google Chrome、Apple Safari 4ベータに見られる「スピードダイヤル」風の機能の方を好むユーザーもいる。
IE 8独自の優れたタブ管理機能の1つに、同一サイトから開いたタブを識別するための色分け機能がある。テストでは、ブラウザセッションでさまざまなWebサイトのそれぞれから多くのタブを開いたときに、この色分け機能が非常に便利だと感じた。
IE 8の新しい「アクセラレータ」機能も魅力的だ。アクセラレータというのは、新しいWebページを開かなくても、閲覧中のページ内から地図、翻訳、検索といった高度な機能にアクセスすることを可能とするプラグイン(拡張機能)の一種だ。
例えば、Webページ内でテキストを選んで翻訳アクセラレータを選択すると、そのページ内のボックスに翻訳されたテキストが表示されるのは便利だ。別のブラウザウィンドウやタブの中でヤフーのBabelFishサービスなどを立ち上げなくても済むからだ。
IE 8のもう1つの新機能が「WebSlices」である。これは、WebサイトがコンテンツをIE 8ブラウザ内に直接連携するためのシンプルな手法である。例えば、気象情報やニュース記事をチェックするのに個別のWebサイトにアクセスしなくても、これらのサイトからWebSlicesを取り込めば、ブラウザのツールバー上から1クリックでそれらの情報を確認することができる。
IE 8には「おすすめサイト」というウィジェットも搭載された。これは、ユーザーが閲覧しているサイトに類似したサイトへのリンクを表示するという機能だ。
IE 8で採用されたそのほかの新しいインターフェイス機能の多くは、以前から競合ブラウザに組み込まれているとはいえ、歓迎すべき改善であるには違いない。これらの新機能としては、文字を入力し始めるとブラウザの履歴からサイトを表示する「スマートアドレスバー」、ページ内検索機能の改善(検索した単語がWebページ内で強調表示される)、IE 8の検索フィールドに文字を入力し始めると、お勧めの検索語を表示する機能などがある。
さらにIE 8には、ブラウザのセキュリティの改善や、ユーザーのプライバシーを守るための新機能なども盛り込まれた。
プライバシーも大切
プライバシー関連で最も注目すべき新機能が「InPrivateブラウズ」機能である(これは「ポルノモード」とも呼ばれている)。InPrivateブラウズでは、ユーザーが特別なウィンドウを開くことにより、そのセッションに関する情報がブラウザのキャッシュや履歴に一切保存されないようにすることができる。InPrivateブラウズセッション中は、ブラウザのアドレスバーに「InPrivate」アイコンが表示される。
InPrivateブラウズセッションを開始するには、IE 8の「Safety」メニューから特別なウィンドウを開く。空白の新規タブから(あるいはキーボード上でCtrl+Shift+Pを押すことによって)InPrivateセッションに入ることもできる。この機能については、Google Chromeなどのブラウザが備える同様のプライバシーモードのように、任意のリンクを右クリックすることにより、別のプライベートブラウジングウィンドウでInPrivateセッションを起動できるようにしてもらいたかった。
InPrivateブラウズには「InPrivatフィルタリング」という魅力的な機能が組み込まれている。この機能はサードパーティーのサイトがユーザー情報をサイト間で移動するのを防止するのに役立ち、ユーザーはこういったデータ共有を許可するサイトを指定することができる。
そのほかにもプライバシー関連の新機能として、IE 8では「Delete Browsing History」機能のオプションが追加された。ユーザーはどのデータを削除するかをきめ細かくコントロールできるようになり、一部のWebサイトのデータは残し、ほかのサイトのデータは削除するといったことが可能になった。
IE 8のセキュリティ機能は、IE 7や競合ブラウザで追加された機能(ユーザーが悪質なWebサイトに移動したり、マルウェアがブラウザを通じて動作したりするのを防止する機能)がベースになっている。
IE 8の「SmartFilter」は、ユーザーがWebサイトに移動する前にそのサイトをチェックするサービスである(ユーザーがこれを無効にすることもできる)。既知のフィッシングサイトあるいはマルウェアが含まれていることが知られているサイトであると特定された場合、IE 8はユーザーがそのサイトに移動する前に警告ページを表示する。
またIE 8では、閲覧中のサイトの主要ドメイン名が太字で表示される。これは、ユーザーがアクセスしようとしているサイトのURLに似ている(実際には異なる)URLを識別するのを容易にする。
これらの分かりやすいセキュリティ機能に加え、スクリプティング攻撃、ActiveXの悪用、不正なデータ実行を防止するための機能がIE 8には組み込まれている。こういった対策がセキュリティを改善するのは確かだが、同ブラウザのセキュリティは万全だと期待するのは禁物だ。新しいブラウザすべてについていえることだが、今回のIEの新バージョンでもセキュリティ問題が出現するのは避けられないだろう。
マイクロソフトは、IE 8で安定性の改善も図った。中でも最も歓迎すべき改善点がタブの隔離である。これは、不安定なサイトにアクセスしたときに、ブラウザ全体がクラッシュするのではなく1つのタブだけがクラッシュするというもの。テストではこの機能はきちんと動作したが、問題を起こしたサイトをタブ内で何度も再読み込みしようとするのには少しいらいらした。停止ボタンを押すまで、タブがクラッシュする動作が繰り返されたからである。
標準のサポートに関しては、朗報もあれば残念なニュースもある。
IE 8は、マイクロソフトのブラウザとしてはIE 5以来、標準サポートが最も充実した製品であるのは明白だが、最新世代のWebブラウザの中では標準への対応が最も遅れている。Web Standards Projectの標準対応テスト「Acid3」では、IE 8は最新ブラウザの中で最も得点が低かった。
また、IEの従来版向けに作成されたサイトとIE 8との間の潜在的な互換性問題に対処するため、IE 8には「互換性ビュー」という機能が用意されている。これを有効にすれば、IE 8ではうまく動作しないサイトを表示させることができる。IE 8の後期ベータ版、リリース候補版および最終版のテストでは、平均すると1週間に1回は互換性ビューを利用しなければならなかった。ほかの最新ブラウザで問題に遭遇するサイトよりも、IE 8で問題が起きるサイトの方が多かったのは確かだ。幸運なことに、これらのサイトでは互換性ビューによって問題が解決した。
IE 8は頻繁な使用という状況においても全般的に安定していることが示され、リソースを大量に消費することもないようだ。
新ブラウザをリリースするベンダの例に漏れず、マイクロソフトも現在出回っているブラウザの中でIE 8が最も高速だと主張している。各社のブラウザのスピード競争に関する私の見解はすでに明らかにしているので、テストではIE 8は通常のWeb利用に関しては十分高速であるように思われたと述べるにとどめておく。
マイクロソフトの新ブラウザでは当然かもしれないが、IE 8は現在、Windows XPとVista上でのみ利用できる。マイクロソフトの新ブラウザを試したい人は、こちらからダウンロードできる。
(eWEEK Jim Rapoza)
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