創業者がMariaDBでコミュニティ開発を継続
MySQLがフォークか、オープンアライアンスが誕生
2009/05/14
オラクルによるサン・マイクロシステムズ買収で注目が集まるOSSプロダクトの1つ「MySQL」に異変が起きている。MySQLのオリジナル開発者で創業者でもあるマイケル・ウィデニウス(Michael Widenius)氏は5月13日、オープンソースコミュニティベースでMySQL関連の開発やサポートを行うためのハブとなる「The Open Database Alliance」(ODA)の設立を発表した。
PostgreSQLと並んでオープンソース界でデータベース製品のデファクトスタンダードとなっているMySQLは、サン・マイクロシステムズに2008年1月に買収されたことで同社の一部門に。その後、2009年4月にオラクルがサン・マイクロシステムズを買収すると発表したことから、開発体制やライセンスモデルなどを巡って憂慮の声や憶測が流れていた。オラクルのデータベース製品との整合性はどうなるのか、これまで通りオープンソースによるサポートビジネスは残るのかなど先行きは不透明だ。
サンはエンタープライズベンダとしてはオープンソースとの親和性が高いが、それでもMySQL創業者のウィデニウス氏は、リリースポリシーの衝突から2009年2月にサンを退社している。退社の事情を述べたブログ記事の中で同氏は、「サンは考え得る限り最高のMySQLの買収者で、いろいろうまく行かなかったことを今でも残念に思っている」と述べている。
オラクルによるサンの買収によって、MySQL関連事業はオラクルに吸収されることが確定したが、買収発表直後の4月21日にはウィデニウス氏はブログ上で懸念を表明。オラクル買収後のMySQLの行く末を悲観的なトーンで分析した上で、「誰もオープンソースプロジェクトを所有することなどできない。プロジェクトというのは、デファクトのプロジェクトリーダーたちと、プロジェクトに携わる開発者たちによって形作られるのだ。もし企業がこうした人々の信頼を失うなら、みんな立ち去ってプロジェクトをフォーク(分岐)し、自分たちの望むものにするだろう」と発言していた。
ウィデニウス氏は、すでにMySQL互換の「MariaDB」をコミュニティベースで開発している。MariaDBの公式ページによれば、MariaDBはMySQLの「ブランチ」と表現されている。MySQLはコアになるストレージエンジンが入れ替え可能という特徴があるが、MariaDBはMySQLをベースに、Mariaストレージエンジン、PBXTというエンジンを搭載。Mariaストレージエンジンをデフォルトとしたものだという。ほとんどのケースでMariaDBはMySQLと同じ挙動を示し、すべてのコマンド、ライブラリ、APIなどを備えているという。
端的に言えば、ODAの発表は事実上のフォーク宣言と見ることができるかもしれない。ウィデニウス氏は互換性の高さを最大限に保証するためにか、「フォーク」という言葉は使っていないし、MySQL/MariaDBと並置して言及しているが、開発コミュニティの心をどちらがつかむかによっては、現在MySQLと呼ばれているコードベースの開発が停滞し、MariaDBにリソースが移る可能性もあるのではないか。ちなみにMySQLの「my」は英単語ではなく、ウィデニウス氏の娘の名前から取られているが、「maria」もそうだ。mariaは末娘の名前だ。
ODAの運営ルールなど、まだ詳細は詰めていないという。ただ、運営のイメージとしてウィデニウス氏が思い描いているエコシステムは、オープンソースと企業の関係を考える上で示唆的だ。サン退社後、新たにMySQL企業を作ってはどうかと周囲の人々に提案されたが、大きな会社を作るという考えが好きになれなかったという。MySQLが独立企業であったときも、スタッフが70人以下のときのほうがうまく行ったからだという。そのため、MariaDBを開発するMonty Program Abは“家族指向”の少数精鋭主義の小さな会社とし、その周囲に緊密に協力する企業のアライアンスを作りたい、と述べている。これは、もともとMySQL LABとして同氏がオリジナルのMySQLを開発し始めたときに似ているという。
ウィデニウス氏は開発コアメンバーを少なくすることで、「成長に伴うさまざまな問題を回避できる」としている。これは、大企業という組織になじまなかったウィデニウス氏個人の問題なのか、あるいはオープンソースプロジェクトというものが、特定の大企業による運用になじまないということを示しているのか、それは分からない。いずれにしても、まだ当分MySQLを巡る動向から目が離せない。
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