MapReduce用いた分散処理基盤も独自開発
IIJのクラウドコンピューティング戦略は「インフラ」から
2009/05/28
インターネットイニシアティブ(IIJ)は5月28日、2009年から2010年にかけて、クラウドコンピューティングサービスを展開していく方針を明らかにした。すでに展開してきたデータセンターやネットワークサービスを統合しつつ、インフラレイヤを中心としたサービスを提供する計画だ。
同社はこれまで、Webホスティングやデータセンターサービスに加え、「いまでいうプライベートクラウドサービスに近い、企業向けのアウトソーシングサービスとして、『IBPS』を提供してきた」(同社取締役 ソリューションサービス本部長 時田一広氏)。こうしたノウハウを踏まえ、データセンターのファシリティやサーバ、ストレージ、ネットワークといったハードウェアリソースをネットワーク越しに提供するIaaS(Infrastructure as a Service)領域から提供を開始し、順次、ミドルウェアも含めたPaaS(Platform as a Service)やアプリケーション領域をカバーするSaaS(Software as a Service)といったサービスを拡大していく方針だ。
IIJは、これらのサービスを提供する基盤として、既存のデータセンターを活用するだけでなく、2010年をめどに、コンテナを用いたモジュラー型データセンターも導入。これらを用いてクラウド基盤を構築していく計画という。
クラウドコンピューティングを支えるための技術もいくつか開発した。その1つが、「ddd(distributed database daemon)」。米グーグルが開発した分散処理技術「MapReduce」を利用した、大量のデータ処理に適した分散処理基盤だ。
dddはもともと、NetFlowで収集したバックボーンのトラフィック情報を蓄積し、解析する「Salon」というシステム向けに、同社が独自にC/C++とRubyで開発したものだ。1日当たり数GBから十数GBに上るデータを高速に処理するため、データを複数のノードに分散して処理する。各ノードはP2Pでつながっており、ノードのどれかに障害が発生したとしても、自動的にデータを複製し、システム全体として問題なく処理を続けられるようにしているという。また、どのノードにどのデータを格納したかは分散ハッシュテーブルで管理することにより、スケーラビリティを確保した。
dddを活用することで、高価なストレージやサーバ類を用意することなく、安価なサーバを多数稼働させることができ、インフラに要するコストを削減できる。同時に、運用の工数も削減できるため、長い目で見た場合のコスト削減につながるとしている。さらに、ApacheやSquidといったさまざまなアプリケーションを搭載することも可能で、「簡単にコンテンツ配信プラットフォームになる」(IIJ ネットワークサービス本部 副本部長 木村和人氏)。間もなくリリース予定のLinuxディストリビューション「Fedora 11」の配布にも、dddを活用するという。
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