Twitterクライアントも290行で
ソニー・エリクソン、JavaFX対応のアプリ配信ストアを発表
2009/06/04
ソニー・エリクソンは6月3日、米国サンフランシスコで開催中のJavaOneで、同社がこれまで提供してきたケータイ端末向けのコンテンツ販売サービス「PlayNow」において、アプリケーション販売も開始すると発表した。13カ国が対象で、38モデルの端末が対応する。ソニー・エリクソンは今後、エントリ向けの3G端末でもJava Platform対応していくとしている。
JavaOneの2日目、午前の基調講演に登場した同社バイスプレジデントのリコ・サカグチ(Rikko Sakaguchi)氏は、「コンテンツやサービスがなければ結局意味がない」として、これまでの取り組みを紹介。ソニー・エリクソンはこれまで、「コミュニケーション・エンターテイメント」という標語を掲げて、2004 年からリングトーン(日本でいう着メロに似た楽曲コンテンツ)やゲーム、MP3の音楽、壁紙などのダウンロードサービスを提供してきた。5月末には映画コンテンツを追加するなど、コンテンツサービスを充実させている。
PlayNowでは、これまでにもすでにゲームというジャンル限定ではあるものの、ソフトウェアのダウンロードサービス自体は行ってきた。これに加え、7月1日にオープン予定の申請用サイトにおいて、開発者から直接アプリケーションを受け付けるようにする。登録できるアプリケーションは、Symbian OS向けとJavaME向け。Javaに関してはJavaFXもサポートする(正確には同社の端末のランタイム、Java PlatformがJavaFX SDKに対応している)。
開発者の登録やアプリケーション登録は無料。iPhoneのApp Storeと同様に販売価格に対して3割をソニー・エリクソンが取り、7割が開発者の取り分となる。この比率について、同社で開発者・パートナー関連のビジネスを担当するクリストファー・デイビッド氏は「いろいろ意見もあると思うが、取りあえずスタート地点としての数字だ」とした。
JavaFX対応でアプリ開発が容易に
注目されるのは、JavaFX対応だ。基調講演で同社はサンプルとして、Twitterクライアントを披露した。実行すると現在地の地図を表示して人々のつぶやき(ツイート)をアイコンとともに次々と表示する。特別目を引くようなものではないが、ソースコードが290行しかないというのは特筆すべきだろう。
もう1つ、デモンストレーションで目を引いたのは、JavaFXで開発したアプリケーションのバイナリ(バイトコード)がSymbian OSとWindows Mobileの両方で動いていたことだ。ソニー・エリクソンはJavaME向けプロファイルのMSA(Mobile Service Architecture)準拠のJavaスタック「Java Platform」を持っており、このVMに向けてJavaFXをコンパイルする。SDKはサン・マイクロシステムズのものが使えるという。つまり、すでに提供されているJavaFXのSDKで作ったバイナリが、そのまま動くということだ。
今後はアクセラレータへの対応も
サンのJavaFXの開発担当者が開いた技術セッションでの説明によれば、基本的にJavaFXは既存のMSA準拠のJavaランタイムを含む端末であれば利用可能だという。現在は、OpenVGやOpenGL をJavaFXのAPIから利用することでアクセラレータを活用できるようにする作業を進めているとした。OpenVGは、2Dベクトルグラフィックの標準規格でSVGなどでも利用されるものだという。多数の多角形をアルファブレンディングで重ねた上で回転させるというデモンストレーションでは、開発者向けのHTC Diamond端末(Windows Mobile)を使い、ネイティブアプリケーションでOpenVGを使ったものと、JavaFXからOpenVGを使ったものとで同等のパフォーマンスが出ていることを示していた。300MHz以上のプロセッサ、20〜50MB程度のメモリを備える端末であれば、リッチなグラフィカルアプリケーションが作成可能という。
もともとサンは、JavaFXファミリーの発表時にはJavaFXスクリプトのほかに、モバイル向けJavaFX実行環境を含む「JavaFX Mobile」を提供していくとしていた。これはOSとしてLinuxを含むフルのソフトウェアスタックだ。今回のソニー・エリクソンの発表はサンの製品ではなく自分たちが持つJava Platformで独自にJavaFXへ対応したということになる。
ソニエリ以外の端末でJavaFXは対応するのか
気になるのはソニー・エリクソン以外の端末でもMSA準拠であれば、同様にJavaFXが使えるかという疑問だ。これについては、JavaFXはMSAのサブセットをサポートしているため、グラフィック以外は基本的に動くということだ。
技術解説セッションでは、Android端末に搭載されるDalvik VMへの対応についても質問が出た。この点について、サンはコメントを控えている。ただし、同じJava言語による開発が可能といっても、Dalvik VMとJavaVMはバイトコードに互換性がないこと、またAndroidがGUIツールキットやアプリケーションフレームワークまで備えた、PCでいえば一種のデスクトップ環境であること考えると、Android端末とJavaFXという組み合わせには現実味がなさそうだ。
ソニー・エリクソンに続く形でJavaアプリ配信ストアがほかにも立ち上がるのか、もしそうだとしたら互換性は取れるのか。日本のiモードやEZアプリにはるかに遅れた、iPhoneにも大きく水を開けられた形だが、モバイル向けJava対応アプリ市場が伸びるのか、今後が注目される。
関連リンク
情報をお寄せください:
- 実運用の障害対応時間比較に見る、ログ管理基盤の効果 (2017/5/9)
ログ基盤の構築方法や利用方法、実際の案件で使ったときの事例などを紹介する連載。今回は、実案件を事例とし、ログ管理基盤の有用性を、障害対応時間比較も交えて紹介 - Chatwork、LINE、Netflixが進めるリアクティブシステムとは何か (2017/4/27)
「リアクティブ」に関連する幾つかの用語について解説し、リアクティブシステムを実現するためのライブラリを紹介します - Fluentd+Elasticsearch+Kibanaで作るログ基盤の概要と構築方法 (2017/4/6)
ログ基盤を実現するFluentd+Elasticsearch+Kibanaについて、構築方法や利用方法、実際の案件で使ったときの事例などを紹介する連載。初回は、ログ基盤の構築、利用方法について - プログラミングとビルド、Androidアプリ開発、Javaの基礎知識 (2017/4/3)
初心者が、Java言語を使ったAndroidのスマホアプリ開発を通じてプログラミングとは何かを学ぶ連載。初回は、プログラミングとビルド、Androidアプリ開発、Javaに関する基礎知識を解説する。
キャリアアップ
- - PR -
- - PR -
転職/派遣情報を探す
「ITmedia マーケティング」新着記事
年末商戦必勝法 Z世代に刺さるのはAIフル活用? エモい動画? セレブとのコラボ? それとも……
ブラックフライデーが目の前に迫っている。2024年のホリデーシーズンは消費者の消費意欲...
「世界一のSNS」AI・メタバースへの注力で再躍進あるか?――2025年のSNS大予測(Facebook編)
AIをフル活用する一方でメタバースとの統合を深め、Facebookのユーザー体験はかつてと大...
「AIによる顧客体験(CX)向上」に懐疑的な見方が広がる――Qualtrics調査
Qualtricsが実施した年次グローバル調査から見えたカスタマーエクスペリエンス(CX)の現...