IP TVを超えるインターネット・サービス化を志向
シスコ、「MedianetでTVサービスの収益モデル変革を」
2009/06/18
シスコシステムズは6月17日、同社が注力している放送事業者および通信事業者向けのビデオ・ソリューション「Medianet」について説明した。
シスコはMedianetをケーブルTV、IP TVに次ぐ第3段階のビデオサービスとして位置付けている。従来の放送の枠を超えた柔軟性を、映像ソース、配信先媒体、配信/視聴形態の3点で実現する。新たなビデオ視聴体験の提供により、事業者にとっての新たな収益源を生み出すことにもつながるという。
「ケーブルTV、IPビデオ・オン・デマンド、Webサイトの3つに、単一のIPに基づく共通アーキテクチャを適用できる」と米シスコのワールドワイド・ビデオプラクティス担当バイスプレジデント、スティーブ・シルバ(Steve Silva)氏はMedianetの特徴を説明した。
Medianetでは、従来型のケーブルTVのように、セットトップボックス経由でテレビにコンテンツを表示する形態が基本。しかし同一のコンテンツを、適切なトランスコーディングによって携帯電話端末やWebサイトにも展開できる。さらにこれをユーザー情報と組み合わせることで、例えば視聴者が通勤中に携帯電話端末で視聴していたビデオを一時停止し、停止した時点からテレビで再生を再開するといった付加サービスが可能。
セットトップボックスが映し出す画面も完全にIPベースだ。従って、P in Pを用いて複数の形式の動画を同時に表示することもできるし、Webコンテンツとして展開されている付加情報やチャットなども、画面にオーバーレイして表示できる。
Medianetは多様な形式の動画ソースに対応する。YouTubeのようなインターネット上の動画コンテンツをはじめ、外部のコンテンツを自動的に取り込める。これにより、事業者間のコンテンツ提携も容易になるという。
シルバ氏は、英Virgin MediaとBBCの提携を例に挙げた。
BBCは、過去1週間の全番組をインターネット経由で視聴できる「iPlayer」サービスを提供しており、Virgin Mediaではこのコンテンツをテレビで見られるようにしている。しかし、通常では他事業者の放送素材の取り込み、変換、再送出を実現するシステムに、大きな投資が必要となる。そこで「Virgin Mediaでは、BBCとの間でIP VPN接続を行い、ブリッジだけをすることで、投資の抑制に成功した」(シルバ氏)
Medianetソリューションには、ルータやスイッチ、セットトップボックス、「Contents Delivery System」(CDS)などが含まれる。そのうち中核的な役割を果たすのがCDSだ。
CDSは基本的にキャッシュ/コンテンツ配信機器。しかしキャッシュした動画コンテンツを自動的に複数の形式にトランスコードすることができる。その際に広告を挿入する作業も大幅に自動化できる。動画の前後に広告を入れるだけでなく、動画コンテンツ中に広告を挟み込むことも可能。こうしてCDS上に用意したコンテンツのうち、端末および視聴者の情報に応じて適切なものを送り込むことができる。CDSを視聴者の近くに配置することで、コンテンツ品質を確保することも容易になるという。
シスコはMedianetでテレビ/ビデオサービスの収益モデルを変えられるとしている。その手法の1つがターゲット広告だ。視聴者にログインさせることで、それぞれの視聴者のプロファイルを参照し、年齢層などに応じてあらかじめ用意しておいた広告を適用することができる。また、同一のコンテンツをテレビ、Web、携帯端末に透過的に展開できるため、広告のインベントリを増やすこともできるとしている。
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