管理アプライアンスで自動化を推進
仮想化環境でWASを進化、IBMの目指すもの
2009/07/03
日本IBMは、「WebSphere Application Server」(WAS)を仮想マシンイメージ化した製品と、その構成や仮想化環境への投入、削除などのライフサイクル管理を行うハードウェア/ソフトウェア一体型の管理アプライアンス製品を6月に発表した。
これらの新製品の目的は、仮想化技術を用いることで、WASの導入および展開の効率化、迅速化、そして省力化を高めることにある。
WASの仮想マシンイメージ「WebSphere Application Server Hypervisor Edition」はVMware ESX 3.0/3.5、ESXi 3.5をサポートする製品。OSはSUSE Linux Enterprise Server 10.2を使用、これにWAS、IBM HTTP Serverをインストールしている。WASはV7.0.0.3およびV6.1.0.23の2バージョンを用意する。
もう1つの新製品「IBM WebSphere CloudBurst Appliance V1.0」は、ソフトウェア/ハードウェアが一体化したアプライアンス形式の製品。WAS Hypervisor Editionに必要な追加構成を加えた共通イメージと、WebSphereの構成トポロジ・パターンを事前に用意しておき、必要に応じてIPアドレスを割り当てるだけで仮想環境に投入することができる。投入したWAS仮想マシンへのアプリケーションのインストールも、事前にスクリプトを用意しておけば自動化できる。展開しているWASが不要になれば、CloudBurst ApplianceにWASのライセンスを“回収”し、ほかの用途に利用できることになる。
日本IBM 理事 ソフトウェア事業 WebSphere事業部長 デビッド・ベイト(David Bate)氏が6月18日の記者発表で行った説明によると、新製品はWASのライフサイクル全般にわたって効率化や自動化のメリットをもたらすことができる。
まず、開発・テストの段階では、小規模構成で、これらの作業に必要な期間だけWASを利用することができる。必要であれば複数バージョンのWAS、あるいは複数アプリケーションのテストを同時に行うことも可能だ。仮想マシンイメージであるため、必ずしもテストのためにサーバ機を調達する必要はない。
テストが終わったら、本番環境に適したトポロジー構成で、WASを運用開始できる。
さらにこのアプリケーションの利用がピークに達した場合には、即座に適切な構成で追加のWASを投入し、処理能力を向上することが可能だ。利用ピークが過ぎて、この追加のWASが必要なくなったら、撤去することができる。
新製品はサーバ機の効率的な利用を促進できる。開発からテスト、本番運用へと段階を移行する際に、サーバ機を買い換える必要はない。しかも仮想マシンイメージであるため、一度適用した構成を保持したまま、次の段階に移行することができる。
WASのライセンス利用自体も効率化できる可能性がある。WAS Hypervisor Editionと従来のWASのライセンス料を比較すると、どちらもサーバのフルキャパシティで利用する場合の価格は同程度だが、Hypervisor Editionでは、例えばクアッドコア・プロセッサ1基搭載のx86サーバの1コアだけを仮想マシンで使って稼働する場合、ソフトウェア・ライセンス料は4コアをフルに使う場合の4分の1になる。従って、小規模な開発環境などでの利用は1インスタンス当たりのライセンス料が有利となる。
ただし、短期間のみ利用する仮想マシンのための特別なライセンス体系は用意しない。期間限定で、繁忙期のみ多数のインスタンスを投入してキャパシティを向上させるような使い方の場合でも、利用する最大コア/インスタンス数のライセンスを購入しておく必要がある。
CloudBurst Applianceの機能は、汎用的な仮想マシン・プロビジョニング・ツールとかぶるような印象を受けるが、WASに特化したアプライアンスとしているのが重要なポイントだという。
一般的なプロビジョニング・ツールだけしかない環境では、WASの投入作業を行う管理者に、プロビジョニングツールとWASの双方に関する知識が要求される。これに対し、CloudBurst Applianceでは、これを電源オンしてネットワークにつなげておけば、仮想マシンイメージはWASのスペシャリストがつくるとして、WASの投入作業自体は新入社員でもできるという世界を目指している。
WAS Hypervisor EditionおよびWAS Cloud Burst Applianceは現在VMWare ESX 3.xにしか対応していない。しかしIBMでは、ESX 4.xやほかのハイパーバイザへの対応も検討している。米アマゾンのAmazon Web Servicesが利用しているAMI(Amazon Machine Image)形式の仮想マシンイメージへの対応も、ビジネス面の可能性も含めて考慮中だという。
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