ウインドリバーが新ソリューションを解説
組み込み向けハイパーバイザに求められるもの
2009/07/09
マルチコア化や仮想化は組み込みの世界でもトレンドとなりそうだが、非対称なマルチコア構成、高いリアルタイム性への対応など、PC向けとは異なる技術的チャレンジと導入メリットがある。7月9日に都内で会見したウインドリバーは、6月に発表したばかりの組み込み機器向けのハイパーバイザ製品「Wind River Hypervisor」について、機能的特徴とターゲット市場について説明した。
リアルタイム処理、デバイスの直接アクセス
Wind River Hypervisorはシングルコアおよびマルチコアに対応するハイパーバイザだ。対応プロセッサはx86プロセッサおよびPowerPC。フットプリントは「一般的な組み込みOS程度」に小さく、特にIntel-VTを使った場合にはオーバーヘッドも抑えられるという。
サーバ仮想化の世界では既存OSがそのまま動くことが重視されるため、完全仮想化が主流だが、Wind River Hypervisorは現在のところ準仮想化に対応する。
組み込み開発では、「デバイスのすべての機能が使えることが重要」(小宮山氏)であるため、最大公約数的な仮想デバイスではなく、各デバイスのドライバをゲストOSに統合した形でソリューションを提供するという。ゲストOSとしてVxWorks6.7とWind River Linux 2.0.2に対応し、ほかのOSへの対応も行うという。
また、リアルタイム制御でハードウェアからの割り込みを優先的に処理するニーズがあるため、一般的な時分割スケジューラではなく、リアルタイムスケジューラを実装して標準としている。
AMPマルチコア構成でスケーラビリティ
組み込み機器では機器制御を行うコアと、利用者とのインタラクションを行うコアを分けて、異なるアーキテクチャを使うなど、AMPの利用も多いが、こうしたケースではハイパーバイザを導入することで、開発プロセスの効率化が可能という。AMP環境で、各コア上で異なるOSを稼働させる構成では、開発中に各OSに割り当てるリソースを変更することがある。こうした再構成で、例えばメモリ割り当てを誤った場合、突然OSが落ちるなど原因を特定しづらい不具合が発生するという。ハイパーバイザを使った構成では物理メモリを直接OSに割り当てる代わりに、物理メモリのアドレスを動的にマップすることで、こうした問題を解決できるという。メモリ割り当てなどは、ハイパーバイザを介して一元的に行えるため構成変更も容易だ。
物理的なプロセッサコアが1つだけの場合でも、ハイパーバイザ上の仮想コア数を増やすことはできる。このため、AMP構成で開発していたシステムを、高速な単一プロセッサに統合することも可能。部品点数を減らし、コスト削減ができる。
ネットワーク機器などのデバイスで、管理用に汎用OSを使い、パケット処理にフットプリントの小さなカスタムOSを使う構成にする場合、ハイパーバイザのないシステムでは各OSをコアに割り当てることになる。ここにWind River Hypervisorなどハイパーバイザのレイヤを入れることで、コアとOSの対応を切り分けられる。これまで、どこかのノードが落ちてシステム全体が停止したようなケースも、ゲストOSの自動ロードを含むライフサイクル管理により対応可能。障害耐性が向上する。コア数が増えてきたときのパフォーマンスも、ハイパーバイザを入れた場合のほうが有利だという。
OS間通信についてもハイパーバイザ導入にはメリットがある。Wind River Hypervisorではプログラミングにソケット通信を使いつつ、高速な共有メモリを使った通信を行う仕組みを提供。メモリ共有とネットワーク通信の双方のメリットが生かせるという。ウインドリバーでは、開発環境「Wind River Workbench」でもWind River Hypervisorに対応する。複数ゲストOSを対象としたデバッグも可能。
想定しているターゲット市場は、航空宇宙・防衛、自動車、コンシューマデバイス、産業、ネットワーク機器などのデバイス市場。過去に開発してきたシステムを活用しつつ、新規アプリケーションをLinux上で開発するといったニーズに応えていく。
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