IEはもはや後追い
企業がIE以外のブラウザに乗り替えるべき10の理由
2009/07/27
米マイクロソフトのInternet Explorer(IE)は最近、非難の的になっている。同社は欧州連合(EU)から、Windows 7をリリースするときにIEをバンドルしないよう強い圧力をかけられている。Opera Softwareは以前から、マイクロソフトはユーザーがほかのブラウザをインストールするのを困難にしていると批判している。
こうした苦情に応えて、マイクロソフトは最近、IE8のデフォルト設定を変えて、ユーザーがほかのブラウザを選びやすくしたと発表した。同社によると、IEは今後、ユーザーの同意なしでインストールされることも、デフォルトのブラウザになることもない。このアップデートは8月に実施される。
マイクロソフトがIEの方針を変えたことは注目に値するが、このことは「企業はIEの利用を考え直すべきなのか」という疑問を提起している。Forrester Researchの最近の調査によると、IEは依然として法人市場の78%を占めている。Mozilla Firefoxのシェアは18.2%で、グーグル ChromeやアップルのSafariは1桁台の前半だ。
IEが人気なのはその機能のおかげではなく、企業がレガシーアプリケーションのサポートのためにIEに頼っているからだということは認めざるを得ない。残念ながら、場合によっては、IEが企業のアプリケーションをサポートできる唯一のブラウザというケースもある。
だからといって、それが理想的な状況というわけではない。むしろ逆だ。IEは決して市場でベストなブラウザではない。実際、競合ブラウザに見劣りしかねない欠点も幾つかある。IEに依存した状況を見直したい企業もあるだろう。
その理由を以下に示す。
1. IEは後追いである
IEは魅力的かもしれないが、ブラウザ市場を先導しているのはIEではない。バージョン6のリリース以来、IEはFirefox、Safari、さらにはOperaにまで後れを取っていた。IEはブラウザにタブを導入するのが遅かったし、サイトのレンダリングの大幅な改善もまだだ。IEは常にほかのブラウザの後を追っている。
2. 生産性の問題
IEはついにタブを導入したが、生産性を高める基本的な機能がほとんどない。競合ブラウザでは、アドレスバーから検索ができるし、設定をいじってブラウザのパフォーマンスを高めることなどもできる。こういった機能はより高速で魅力的なブラウザ体験を生み出し、それが社員の生産性を高める。
3. IEの検索機能は不出来
社員がFirefoxやOperaを使うようになれば、これらブラウザの検索機能がIEよりもずっと高度であることがすぐに分かるだろう。オプションが多く、検索が速く、探しているサイトにより速くたどり着ける。IEの検索オプションもよくはなっているが、もっと改善が必要だ。
4. 拡張機能
Firefoxの拡張機能はとにかく際立っている。こうした拡張機能は当面はコンシューマのみが対象だが、一部ではあるものの、企業に訴求するアドオンが増えてきている。法人の世界にぴったりなプロダクティビティツールや企業関連の拡張機能もある。
5. スピードの問題
ブラウザのスピードによってWebの利用は変わってくるが、私はIEのスピードがFirefoxやChromeとは比べものにならないことに気付いた。Chromeで同じ回線を使ってWebに接続してみて、Chromeと比べてIEがいかに遅いかにがっかりした。マイクロソフトは、IEの新バージョンはもっと速くなると約束してきたが、今のところ、IEは競合ブラウザと比べると並はずれて遅い。
6. セキュリティはどうか?
IEは最初にリリースされて以来、いくつかの深刻なセキュリティ問題を経験してきた。パッチがリリースされるたびにほぼ毎回、マイクロソフトはさらなるセキュリティホールを見つけてはふさいでいる。セキュリティ問題はすべてのブラウザにあるが、FirefoxとChromeでははるかに少ない。これらの方が安全なのだ。企業がこれらのブラウザを導入したら、セキュリティの脅威から逃れられるかもしれない。
7. 統合が大事
SafariとChromeの素晴らしい機能の1つが、企業向けアプリケーションとの統合だ。ChromeはGoogle Docsと統合されており、文書をタイプしたり、スプレッドシートに何かを加えたり、プレゼンテーションに画像を挿入したりといったことが簡単に手早くできる。SafariはMacアプリケーションやiPhoneソフトと統合されている。マイクロソフトは近年、統合を重視するようになっているが、その成果は競合ブラウザほど魅力的なものではない。
8. ライバルは機敏
マイクロソフトはブラウザ市場のリーダーだが、ライバルの方がずっと革新に意欲的だ。その理由の1つは、マイクロソフトがレガシーアプリケーションに依存していることにある。マイクロソフトがライバルより速いペースでアップデートすることに消極的だったり、官僚主義的な意思決定プロセスのために動きが遅かったりすることも原因だ。同社のライバルは機敏だ。スピーディーな革新に積極的だ。そして最も重要なのは、彼らがチャンスをつかむのを恐れていないということだ。これはマイクロソフトの身に跳ね返ってくるかもしれない。
9. 勢いを増すライバル
StatCounterによると、マイクロソフトは過去1年のうちにブラウザ市場でFirefox、Chrome、Operaにかなりのシェアを奪われている。実際、IEはかつてコンシューマ市場で78%のシェアを握っていたが、今のシェアはわずか55%だ。それでもほかを大きく引き離してはいるが、勢いは衰えている。自宅でほかのブラウザを使う理由を見出す人が増えるにつれて、人々は代替ブラウザに満足するようになり、会社でもブラウザを乗り替えるのが容易になるだろう。潮目が変わっている。
10. グーグルの野望
市場シェアが1桁台のブラウザを無視するのはたやすいが、グーグルのChromeブラウザは際立っている。市場で勝者になるのに必要な特徴をすべて備えている。そして最も重要かもしれない要素を持っている――、それは、グーグルがバックにいるということだ。グーグルは巨大で、強力で、どの事業に参入しようともマイクロソフトを打ち負かしたいという野望を持っている。つまり、グーグルは法人市場でマイクロソフトを倒したがっているということだ。しかもChromeを使って。グーグルの未来は明るい。IT管理者はそれを忘れてはいけない。
結局のところ、IEはまだ一人勝ちの状態にある。IEは企業が今必要と考えるものを提供している。だが、将来もそうかというと、かなり疑わしい。
(eWEEK Don Reisinger)
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