グーグルの強力なライバルに

MS-ヤフー提携で、Bingは「超人ハルク」になる

2009/07/30

 米マイクロソフトとヤフーの提携が発表され、アナリストはその意味合いや影響についてさまざまに論じているが、こうした大規模な提携が完全に落ち着くまでには何カ月、あるいは何年もの時間がかかるものだ。だが1つ最初から明らかな点もある。それは、「オンライン検索市場をめぐる競争において、競合各社がしのぎを削った結果、最後にグーグルとBingがより分けられた」ということだ。

 ヤフーがマイクロソフトのBing検索エンジンの採用を決めたことで、マイクロソフトは検索市場において30%弱のシェアを確保したことになるが、一方では、グーグルが65%という圧倒的なシェアを誇っている。この数字からすると、マイクロソフトとヤフーの陣営は依然として明らかに劣勢だが、これまでBingの市場シェアが8.4%だったのと比べれば、まだましだ。

 今回の提携が発表されるまでは、ヤフーとマイクロソフトの検索エンジンはどちらも、グーグルという名のディーゼルエンジンの18輪トレーラーを相手に、たかだか最高時速120〜130km程度で戦いを挑む小型のフィアット車のようなものだった。それが今や両社のエンジンは少し大きめの車体に統合され(さしずめ、人気SUV車のハマーといったところか)、大型トレーラーの衝撃にも、路上に粉々に打ち砕かれることなく耐え得るであろう力を獲得したのだ。

 もっと端的に言えば、今回の提携はBingがこの先も生き残るということを保証するものだ。さらに重要なのは、Bing検索エンジンとそのエンジニアがヤフーの各サイトから追加のデータを入手できるようになれば、Bing検索の精度もますます高まるという点だ。先ほど私は新生Bingをハマーに例えたが、それよりも、マイクロソフトとヤフーの提携はBingを検索エンジン市場の「超人ハルク」に変えるチャンスをもたらすと言った方が適切かもしれない。

 だがこれまでは、Bingの長期的な見通しについては疑問視する声も少なくなかった。確かに、Bingは大々的な宣伝とともにスタートし、マーケティングには数千万ドルもの費用が投じられ、さらには「グーグル幹部がBingの検索アルゴリズムに脅威を感じている」といった記事まで報じられた。実際、6月にスタートしてからの数週間、Bingの市場シェアは微増を続け、マイクロソフトはBing Shoppingのトラフィックは30%増加し、Bing Travelのトラフィックは50%増加したとも報告している。

 だがマイクロソフトはオンライン市場への参入を加速するにあたり、かなりの出費を迫られている。同社は先ごろ低調な四半期決算(4〜6月期)を発表したが、とりわけオンラインサービス部門の損失は7億3200万ドルと、前年同期の4億8500万ドルの損失をさらに上回る結果となった。だからこそ、私は先週、「果たしてマイクロソフトはBingへの資金の大量投入を長期的に継続するのだろうか?」という疑問を投げ掛けたのだ。

 今となっては、恐らく、その答えはイエスだろう。なぜなら、マイクロソフトとヤフーの提携により、Bingはグーグルをベースとしない唯一のメジャーな検索エンジンということになるからだ。もちろん30%の市場シェアを確保したとは言え、マイクロソフトはまだグーグルのアルゴリズム検索エンジンの独占状態に対し、明白かつ差し迫った危機を提示できたわけではない。だが超人ハルクのように巨大化した新生Bingが、ライバルとして力を強めたのは確かなことだ。

原文へのリンク

(eWEEK Nicholas Kolakowski)

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