アップルが締め出すのも無理はない
iPhoneキラー?――企業向け機能が魅力のGoogle Voice
2009/08/03
TechCrunchのブロガーであるマイケル・アーリントン氏が最近、「Google Voiceが使えないのなら、私のiPhoneをドブに捨てるつもりだ」と発言したことが物議を醸している。Google Voiceはグーグルが提供するVoIPソリューションで、ユーザーは1つのGoogle Voice番号を追加すれば、どんな電話機でも着信電話を受けることができるようになる。米国内でのGoogle Voice経由の通話は無料。テキストメッセージも無料だ。
Google Voiceはボイスメール技術を搭載し、音声を瞬時にテキスト化する機能も備える。本格的な機能を備えたこの製品は現在、招待されたユーザーに提供され、Web上、そしてAndroidベースの携帯端末とBlackBerryスマートフォンで利用できる。
Google Voiceには制約もある。まず、ユーザーはGoogle Voiceの番号をグーグルから購入しなければならない。また、新たな電話番号を顧客に知らせなくてはならないという理由でGoogle Voiceを敬遠する企業もあるかもしれない。しかし電話番号の可搬化が進んでいる状況は、多数のニュースメディアが報じている。固定電話や携帯電話で使われている電話番号も間もなく、Google Voiceと連係するようになるだろう。
着信側の電話機にGoogle Voiceの番号が表示されないことも批判の的になっている。電話をかけると、着信側の電話機にはGoogle Voiceの番号ではなく、送信者が発信を行った端末の電話番号が表示されるのだ。グーグルはこの問題に対処し、Google Voiceに対応したスマートフォンで現在利用可能なアプリケーションの多くは、発信者のGoogle Voice番号を着信相手の電話機に表示するようになっている。
恐らくGoogle Voiceが直面している最大の障害は、iPhoneで利用できないことだろう。Google VoiceのiPhoneアプリはアップルによって拒絶された。同社によると、Google Voiceの機能は、iPhone上ですでに提供されている機能と非常によく似ているというのが理由だ。アップルが拒絶したことで、何百万人ものユーザーがGoogle Voice機能を利用することができないのだ。これに対して、アーリントン氏をはじめとする多くのブロガーたちが反対意見を表明している。
ブロガーたちが声高に叫ぶ中、私はGoogle Voiceが企業にとって新たな選択肢になる可能性について静かに思いをめぐらせた。また、Google VoiceはiPhoneキラーになるのだろうか。
その可能性はある。
セキュリティと選択肢
著名なハッカー会議であるBlack Hatの最近のリポートで、セキュリティ研究者のチャーリー・ミラー博士が、iPhoneユーザーに影響を与える攻撃コードを発表した。ミラー氏によると、簡単なSMSメッセージによってiPhoneに侵入口が開かれる恐れがあり、悪質なハッカーはこの脆弱性を利用してファイルのアップロードやコードのダウンロードを実行したり、ピボット攻撃を仕掛けたりすることが可能になるという。セキュリティ意識の高い企業であれば、そのためにiPhoneの利用をためらうかもしれない。
この問題を重視する企業では、iPhoneよりもGoogle Voiceに目を向ける可能性がある。Google Voiceでは通話が無料であるのに加え、すでに社内で使用しているスマートフォンにダウンロードできる。しかも、社内の電話だけでなく、従業員の自宅の電話や携帯電話でも着信できるのだ。これにより、不在着信の数を大幅に減らすことができ、これはビジネスチャンスの逸失の減少にもつながる。
Google Voiceでは、ユーザーが携帯端末を自由に選択できる。企業では電話会社と長期契約を結んでいる場合が多いため、契約中の電話会社とその会社が提供する携帯電話を使い続けようとする傾向が強い。契約している電話会社がSprintであれ、Verizon Wireless、T-MobileあるいはAT&Tであれ、従業員のBlackBerryやAndroidベースの携帯端末にGoogle Voiceをインストールできるのだ。企業におけるBlackBerryの位置を考えれば、この選択の自由は非常に魅力的だ。
充実した機能
Google Voiceは基本的な機能を提供するだけではない。BlackBerry、T-Mobile G1あるいはiPhoneで現在利用できる機能よりもはるかに多くの機能を企業の従業員に提供する。
Google Voiceでは特定の相手からの着信をブロックできる。また、特定の相手からかかってきた電話をどの電話で受けるかを指定することも可能だ。例えば、大切な顧客からの電話に対しては、従業員が使用するすべての電話機で着信音を鳴らし、それほど重要でない顧客から電話がかかってきた場合は、社内の電話だけが鳴るようにするといったことが可能だ。販売部門のスタッフであれば、発信者ごとに個別のあいさつメッセージを作成することもできる。パーソナライズしたメッセージが契約獲得につながる可能性もある。これはシンプルな機能だが、ビジネスにおいては価値がある。
Google Voiceは、そのほかにも数々の魅力的な機能を提供する。ボイスメールメッセージを再生する機能や、Web上の受信ボックスから着信およびボイスメールを確認する機能など、非常に魅力的なサービスが日々改良されている。
また、グーグルが電話番号をGoogle Voiceにポーティングする計画を実行すれば、Google Voiceは企業が現在利用している電話サービスに代わる有力な選択肢になる可能性も十分にある。Google Voiceは企業にとってはまだ完全ではないかもしれないが、ちょっとした改良がいくつか施されれば、完ぺきなものに仕上がる可能性もある。
アップルは警戒した方がいい。
(eWEEK Don Reisinger)
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