ストレージ1ノード当たり384GB

最大5.3TBのフラッシュで高速化、オラクルがExadata2発表

2009/09/16

 米オラクルは9月15日、買収予定の米サン・マイクロシステムズと共同開発したデータウェアハウス(DWH)アプライアンス向け新製品「Exadata Database Machine Version 2」(Exadata2)を発表した。日本での販売については未発表。PCI-Express接続のフラッシュメモリを搭載したカスタムストレージサーバと、最新のOracleデータベース搭載のサーバを統合することで、ディスクアレイを使った従来の一般的なシステムと比較して約10倍の速度を実現できるという。

oracle00.png Exadata Database Machine Version 2。ラック構成で拡張(スケールアウト)が可能という

DBマシンとストレージグリッドで構成

 Exadata2は2つのモジュールからなる。1つは「Sun Oracle Exadata Storage Server」でストレージのノードとなる2Uのサーバ。オラクルは“セル”と呼んでいる。もう1つは「Sun Oracle Database Machine」(以下、DBマシン)。名前の通り、こちらはデータベースサーバで、Oracle Enterprise Linux 5.3に最新のOracle Database 11g R2を搭載する。

 この2つのモジュールは、CPU処理性能やI/O性能、ストレージ容量など必要に応じて追加していくことでスケールアウトすることができる。DBマシンとセルの間は、40GbpsのデュアルポートのInfiniBandで接続する。

oracle01.png Exadata2の構成概念図

 セルは2基のインテル Xeon E5540を搭載するサンのサーバだ。最大の特徴は、「FlashFire」と呼ぶ技術。1台のセル当たり96GBのフラッシュメモリを搭載するPCI-Expressカードを4枚装備し、合計384GBのフラッシュメモリにより、I/O性能を劇的に向上する。セルは12台のSAS/SATAドライブを搭載でき(それぞれ最大7.2TB、24TB)、512MBのキャッシュと24GBのメモリを搭載する。可動部のあるハードディスクに比べてフラッシュメモリはランダムアクセス性能が高く、IOPS性能で比較すると、SASで3600 IOPS、SATAで1440 IOPSのところ、フラッシュで7万5000 IOPSと高速だ。アプリケーションの違いによってアクセスパターンが異なるため一概には言えないが、多くの場合、10〜20倍のパフォーマンスが出るというのもうなずける。

 セルは、複数をまとめてグリッド・ディスクとすることもできる。グリッドは、複数の“スライス”として、アプリケーションやユーザーごとに割り当てることができる。Exadata2はDWHアプライアンス市場をターゲットとしている感が強いが、ERPやCRMなど既存アプリケーションで利用しているデータベースを1つに統合する、データベースコンソリデーションにも有用だ。こうした場合、アプリケーションの種類やユーザー、クエリの負荷などに応じてスライスを分けることで優先順位を付けられるという。データはセル間で冗長化されているが、冗長度の設定をスライスごとに変えることもできる。例えばバックアップ用領域は冗長化しないという運用もできる。

 FlashFireはキャッシュメモリで一般的に使われる「Least Recently Used」(LRU)ではなく、Oracleデータベースに最適化したキャッシュアルゴリズムを実装しているという。LRUではキャッシュが溢れた場合に、アクセス時刻がいちばん古いデータを破棄するという方法だが、Exadata2ではOracleデータベースと連携できるため、パフォーマンスに影響する重要なテーブルやキーを優先してキャッシュできるという。

 DBマシンとセルの間は、iDB(Intelligent Database protocol)と名付けた独自プロトコルで通信する。iSCSIのような上位レイヤのプロトコルに比べて、オーバーヘッドが小さいのが特徴。DBマシンはアプリケーションから受け取ったSQLクエリを実行するのに必要なデータをストレージからブロック単位やテーブル単位で読み出す代わりに、SQLクエリをセルに投げて処理をオフロードすることができるという。セルは、受け取ったSQLクエリを処理して(セル上ではCELLSRV(Cell Services)と呼ぶマルチスレッドのデーモンが稼働している)、クエリにヒットするカラムや行だけをDBマシンに送り返す。

DWHアプライアンス市場に本家が殴り込み

 Exadata2は、シングルサーバ、1/4ラック、1/2ラック、フルラックの構成で出荷予定。SATAでフルラック構成とした場合、ハードディスクで336TB、フラッシュメモリで5.3TBの容量となる。

 Exadata2は、ソフトウェア企業としてのオラクルには不可能だったレベルで、ハードウェアとの密な統合により性能向上を果たしている。DWHアプライアンス市場では、すでに圧倒的シェアを持つテラデータや、新興のネティーザが、こうした製品で市場をおさえている。Exadata2は、サン買収によって得たハードウェアインテグレーション能力を生かしてこの市場でエンタープライズ系データベースベンダの雄、オラクルがかけた“待った”と見ることができる。パフォーマンスについては未知の面はあるが、すでにOracleデータベースを導入してアプリケーションを利用している企業で、これからDWHにも本格的に取り組もうとしているユーザーにはアピールする可能性が高そうだ。

(@IT 西村賢)

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