Oracle Coherenceをヒロセ通商が導入

【事例】FX取引システム、6台で計70〜80GBのメモリグリッド

2009/10/01

 日本オラクルは10月1日、ヒロセ通商がFX取引システムでインメモリ・データグリッド製品「Oracle Coherence」(オラクル・コヒーレンス)を使ってシステムを全面刷新したと発表した。新システムは20台の一般的なx86サーバからなるグリッドとして運用。このうち6台に各十数GBのメモリを搭載し、Coherence用として利用しているという。計70〜80GBの共有メモリを仮想的にDBサーバのキャッシュとして用いることで、大幅に性能を向上したという。

oracle01.jpg 日本オラクルFusion Middleware事業統括本部Fusion Middlewareビジネス推進本部シニアマネージャー 杉達也氏

 オラクルでは、ミドルウェア層で従来なら「アプリケーション・サーバ」と呼んでいた層を、「アプリケーション・グリッド」と呼ぶこともある。これは、アプリケーション・サーバ群とDBサーバ群という従来の構成に加えて、この2層の間にメモリグリッドとしてCoherenceを入れることが可能だからという。Coherenceは複数サーバが搭載するメモリを束ね、あたかも1つの巨大なメモリ空間のように見せるソフトウェアで、「従来のアプリケーション・サーバを超える基盤を提供できる」(日本オラクルFusion Middleware事業統括本部Fusion Middlewareビジネス推進本部シニアマネージャー 杉達也氏)という。

oracle02.jpg 従来のクラスタ構成による処理の分散(左)と、仮想的な共有メモリを持つグリッドの構成(右)の違い。メモリグリッドでは個々のJVMのヒープメモリ容量に制限されないという

 金融取引に限らず、サービス利用者が急増するサービスでは同時接続数の増加に対応しつつ、応答性を向上する必要がある。このときボトルネックとなるのはディスクI/Oで、スケール・アウト可能な構成を取るためにメモリキャッシュを使うのは必須だ。ヒロセ通商でも「ITのシステム費用は(利用が)2倍になれば2倍とはいかずに4倍になる。これをリニアにしていくのが念願だった」(同社代表取締役細合俊一氏)という。9月末にカットーオーバーで稼働を始めた新システム「LION FX」は、従来の5倍の取引量、約定(取引)のレスポンスタイムを5〜10倍引き上げるという目標を達成したという。

 LION FXが採用するU-Forex1を開発したフラクタルシステムズの矢島洋一郎氏(第二ソリューション事業部 事業部長)によれば、同システムでは直近の取引データの参照クエリ、および更新クエリに関してはCoherenceに対してデータを読み書きするという。FX取引ではレバレッジを効かせた投資が可能なため、預託金を超える投資損失が発生するのを防ぐために、“ロスカットルール”が適用される。この処理がリアルタイムに行われないと損失が膨らむことから、いかに短いサイクルで全投資者のロスカット判定を行うかが課題だった。従来、10万口座を対象にした判定処理に数分かかっていたものが、Coherence導入以後は十数秒に短縮されたという。

 Coherenceでは1つのオブジェクトが複数サーバのメモリ上へコピーされる形で冗長化されているため、更新データのディスク(DBサーバ)への書き戻し処理を非同期にしても、高可用性を実現できる。LION FXのシステムでは、アプリケーションサーバからの更新クエリは、まずCoherenceで実行され、その際、オブジェクトには未永続化のフラグが付く。フラグの付いたオブジェクトは順次DBサーバへと反映される。時間帯によって取引量には差があるため、ピーク時に一時的に未永続化オブジェクトが累積することはあっても、1日のトータルでみればDBサーバの更新が十分追従できる設計となっているという。更新系の処理を非同期にできるため、ECサイトなどでCoherenceを利用する場合には、DBサーバの定期メンテナンス時にサービスを停止せずに済むケースもあるという。

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