イノベーションを顧客の価値に変換できなければ意味がない
マクネリ×ラリーの講演で見るオラクル×サンの方向性
2009/10/12
米オラクルは10月11日(米国時間)、同日始まったイベント「Oracle OpenWorld 2009」のオープニングセッションとして、米サン・マイクロシステムズのCEO スコット・マクネリ(Scott McNealy)氏による「SUNday」と題した基調講演を行った。サン・マイクロシステムズの歴史を振り返るとともに、オラクルによる買収の不安をぬぐい去るためのメッセージが多く発信されたセッションとなった。
マクネリ氏はオラクルカラーである赤い服で登場、まずは「エンジニアがやってしまった変なことトップ10」というジョークからスタート。その中には「10位 寿司の形をしたUSBドライブを作ってしまったこと」や「9位 ガスマスクにもなるブラジャーが(イグ・)ノーベル賞を取ったこと」「8位 OS/2」などが次々に表示され、第1位として「Java Ringというアイデア」が出ると、会場は笑いに包まれた。
マクネリ氏はこのジョークに続き、「自慢話になってしまうかもしれないが、ここからはまじめな話」と前置きし、サンがこれまで行ってきたなかで特筆すべき10個のイノベーションを紹介した。
マクネリ氏は、サンがオラクルに買収されたとしてもこれらの技術は生き残るとし、「私たちが最も誇りに思っていること、それは楽しみながら世界を変えることができたことだ」と述べた。
オラクルによる買収の不安はなにもない
サンが持つテクノロジは、オラクル買収によりどのような影響を受けるのだろうか。マクネリ氏はこれについて、一貫して「安心できる」というメッセージを発信し続けた。
マクネリ氏はオラクルにSolaris、SPARC、Java、MySQLなどの開発はどうするのかと尋ねたところ、そのすべてに対して開発継続を約束したという。この中で利用者が最も懸念しているのは、MySQLだろう。MySQLについては講演内でも特に時間を割いて紹介された。マクネリ氏は「Oracle DatabaseとMySQLは競合するとは考えていない」とし、オラクルが2005年に買収発表したInnobaseや、2006年に買収発表したSleepycat Softwareを例に出し、InnoDBおよびBerkeley DBの開発も続けていることから「MySQLも不安になることはない」とした。
Javaについては、米オラクルのCEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏が2009年9月にThe Register誌で「Java speaks for itself」と述べたことを受け、サン・マイクロシステムズのバイス・プレジデント兼フェローのジェームス・ゴスリング氏がJavaの現状を語るために登場した。Javaの誕生から現在までをコミカルにまとめたビデオの上映の後、ゴスリング氏は「Javaは多くの人に使ってもらうため、オープンソースとして世界に広げることを選び、世界の協力を得た。そしていま、オラクルの協力も得られた」とし、一部準備不足であることを認めつつも、オラクルによるサンの買収は「全く心配していない」と述べた。
ゴスリング氏は最後に、「Oracle OpenWorldとJavaOneの同時開催は難しいかもしれないが、これから先は面白いアドベンチャーになる」と述べた。
続いて登場したのは、サン・マイクロシステムズのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、ジョン・ファウラー(John Fowler)氏。サンが持つプラットフォームについて解説した。
ファウラー氏は「サンはSolaris、Java、ZFSなどの技術に加え、システムの可視性を高めるツールも持っており、この上でOracleのソフトウェアを走らせることで、ミッションクリティカルなシステムでも問題なく構築できる」と述べる。サンはこれらのシステムで情報技術セキュリティ評価基準の「EAL4+」に対応できるとした。さらにファウラー氏は、SPARC/Solarisが7つのベンチマークでトップを取っていることを強調した。
本当に安心できるのか――それを語れる男が登場
そして最後に、これらの発言を再確認する形でラリー・エリソン氏が登場した。ここで発せられたメッセージは、サンの資産への継続投資と、IBMへの明確な対決姿勢だ。
まず、エリソン氏はMySQLについて言及、Oracle Databaseとは競合しないことを重ねて強調し、さらに投資を続けていくことを発表すると、会場からは拍手が起きた。さらにエリソン氏はハードとをソフトを同時に考えコントロールするアップルを例に出し、これを同じことをサンとオラクルで行っていくことを目指すと述べる。エリソン氏は、「イノベーションを顧客の価値に変換できなければ意味がない」とし、イノベーションを続けるサンの力により、「巨人」に立ち向かえると述べた。
その「巨人」とはIBMのことだ。以前オラクルが作った広告記事で、「PERFORMANCE Sun vs IBM」と題して、サンとオラクルの方が速いことを10月14日(Oracle OpenWorld期間中)に証明するとしていた。ここでエリソン氏はSun SPARCとIBM Powerとのベンチマーク結果を公開し、TPC-Cにおいてスループットが25%、レスポンスタイムは16倍速いという結果が出たと発表した。このベンチマークを取ったシステム構成についても言及し、IBMのシステムでは76台必要だったシステムも、サンの構成であれば9台で完結でき、消費電力は6分の1で済むとしている。このベンチマーク結果は即日プレスリリースとして公開され、翌週のニューヨークタイムズ紙には再度広告を載せるという。
最後にエリソン氏は、「IBMはSmarter Planetというキーメッセージで広告を展開しているが、いったい何を作り出すのか分かりづらい。オラクルはサンとともに、『もっと働くコンピュータ』を作る」と述べるとともに、サンのハードウェアで2倍以上のパフォーマンスが出なければ、1000万ドル支払うというキャンペーンを発表した。
Oracle OpenWorld 2009はサンフランシスコ、モスコーニセンターにて10月15日まで開催される。日本語によるTwitter公式ハッシュダグは「#OOW09J」。
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