「Data Center 3.0」戦略はどこまで進んだか

シスコのサーバは2010年1月に国内で本格提供開始へ

2009/10/16

 シスコシステムズは、同社のサーバシリーズ「Cisco Unified Computing System」(UCS)を、2010年1月に国内で正式提供開始する。同社は10月15日に実施したデータセンター・ソリューション関連ブリーフィングで、これを改めて確認した。

 UCSは当初ブレード型の「B-Series」のみが発表されたが、その後ラックマウント型の「C-Series」が追加された。B-SeriesはSAN接続技術としてFibre Channel over Ethernet(FCoE)を用い、配線をイーサネットに統合できる。また、仮想インターフェイスカードを用い、Nexus 1000Vで提供するVN-Link (仮想マシン対応ネットワーク)をFCoEとともにハードウェアで処理することもできる。MACアドレスやWorld Wide Nameなどは、複数のB-Seriesを束ねるスイッチ「Cisco UCS 6100 Fabric Interconnect」で統合管理し、論理的に割り当てられることが最大のセールスポイントだ。これにより、サーバ機におけるケーブルの物理的な再配線はほとんど不要になる。

 一方、C-Seriesは一般的なPCIスロットを備えたサーバ機で、B-Seriesにも搭載されたシスコの独自メモリ拡張技術と仮想インターフェイスカードのサポートが最大の特徴。2010年夏ごろには、UCS 6100でC-Seriesも束ね、B-Seriesと混在の統合管理ができるようになるという。同社はさらに、「Cisco Unified Communication Manager」などの自社ソフトウェア製品をアプライアンス化するためのハードウェアとして、B-Series、C-Seriesを活用していく考えだ。

 B-Seriesは通信事業者やデータセンター事業者など、大規模サーバ環境を運用するユーザーを主なターゲットとし、パートナー数社を通じて販売する。これらパートナー企業は、現在実機を評価中だ。C-Seriesの販売体制については検討中という。

 シスコ アーキテクチャ&テクノロジ事業統括マネージングディレクター 石本龍太郎氏は、同社の「Data Center 3.0」戦略はXaaSやプライベートクラウドのためのIT基盤を提供することが目的と説明。同社がこの戦略を提唱して以来、UCSのほかにもFCoE対応スイッチ「Nexus 7000」「Nexus 5000」「Nexus 2000」、VMware対応分散スイッチ「Nexus 1000V」、最近では他社ブレードサーバに搭載できるスイッチ「Nexus 4000」を発表し、製品群を強化してきたと話した。これらはすべて、FCoEと物理的接続の論理的管理を通じ、「ユニファイドデータセンター」(統合化されたデータセンター)を実現するものだという。

cisco01.jpg 「シスコはデータセンター分野に最大の投資をしている」と石本氏は話す。関連製品はこの2年程度で大きく拡大した

 シスコのプロダクトマネージャー、河野真祐氏は、FCoEが2009年6月にANSI INCITS T11委員会で標準化されたことを報告した。同標準では、スイッチが自らに直接接続されていないファイバチャネル機器でも自動検出できるFCoE Initialization Protocol(FIP)という制御プロトコルが定義されたことが重要だと同氏は話した。

 FCoEはFIPをサポートするまで、CNAとFCoEスイッチ(FCoE標準ではFCF:Fibre Channel Forwarderと呼ばれる)の間にスイッチを挟まない直接接続しか考えられていなかった。しかし、これでは非常に単純なトポロジーしか利用できない。FIPは、エンドノードが複数ホップ(複数イーサネット・セグメント)をまたがるネットワークを通じて、接続先のFCoEスイッチ(FCF)を検出し、仮想的な接続を確立できるようにするプロトコルだ。

 FIPが定義されて可能になったことの1つは、一般的なブレードサーバのサポートだという。例えばNexus 5000スイッチでFCoE環境を構築する場合、これまではサーバ機のCNAからNexus 5000スイッチに直接接続し、このNexus 5000からはFCoEでなくファイバチャネルで接続されたストレージを利用するというシナリオしか描けなかった。ブレードサーバの場合、ストレージに対するトラフィックは通常CNAからいったんブレードシャーシに搭載するスイッチに送られる必要がある。この時点で1ホップであり、サーバ外へのストレージアクセスができないことになる。FIPによって複数のスイッチを介したFCoEエンドノード間の接続が可能になったことで、はじめて一般的なブレードサーバでのFCoE利用が実現した。

cisco02.jpg FIPのサポート前はスタンドアロンサーバしか使えなかった
cisco03.jpg FIPのサポート後はブレードサーバも利用できるようになった

 シスコはこれを受けて、他社のブレードサーバに装着して用いることのできるFCoE対応イーサネットスイッチ「Nexus 4000」を発表した。「Nexus 4000」にはFIPパケットの安全性を確認できるFIP Snoopingという機能もついている。

 一方、FCoEとイーサネットを統合するアダプタであるConverged Network Adapter(CNA)もワンチップ化で小型化され、消費電力も低減した第2世代が登場しつつある。従ってCNAについてもブレードサーバへの搭載が可能になった。

 シスコはサーバ仮想化環境を制御しやすくする目的で、「Nexus 1000V」を国内でも4月より販売している。これはVMware ESXにおける仮想スイッチと入れ替える形でインストールするNexusシリーズのスイッチソフトウェアだ。ヴイエムウェアの「vNetwork Distributed Switch」と機能は似ているが、コマンドライン・インターフェイス(CLI)が利用できること、Switched Port Analyzer(SPAN)などNexusシリーズ共通の機能が使えることなどから、利用するユーザー企業が増えているという。現在のところ、このスイッチのコントロールプレーン部分は仮想マシンとしてVMware環境上で動作させているが、シスコは仮想サーバ環境へのログインを嫌がるネットワーク管理者のために、これをC-Seriesに搭載してアプライアンス化することも検討している。

(@IT 三木泉)

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