関連仕様を総まとめ
Web Applications 1.0が登場、HTML5最終草案に一歩
2009/10/28
HTML5策定で中心的役割を果たすWHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)のイアン・ヒクソン氏は2009年10月27日、同グループのメーリングリスト上でHTML5および関連仕様の「Web Workers」、「Microdata Vocabularies」などを最終草案(Last Call)とすると宣言した。Web WorkersはJavaScriptでスレッド処理のようなバックグラウンド処理を行うための仕様。Microdata VocabulariesはvCardやvEvent、iCalendarといった“マイクロフォーマット”の名称で呼ばれていた機械可読なメタデータをHTML内で扱うための仕様。このほか、Web Storage、Server-sent Events、Web SocketsがWHATWGの最終草案となり、Web Database仕様だけが残された形だ。
現在HTML5はW3CとWHATWGが共同で策定を進めているが、作業がスタートしたのも作業自体もWHATWGが主導しているため、大きなステップと言えそうだ。ただし、ヒクソン氏はW3CのHTMLワーキンググループのエディタも務めているが、今回のWHATWGの案が、W3Cの最終草案となるかどうかは別問題だと注意を促している。また、HTML5が最終的にW3C勧告となるには、まだW3Cにおいて最終草案、勧告候補、勧告案などのステップを踏む必要があり、この意味ではHTML5の最終着地にはまだかなりの時間がかかることが予想される。一方で、主要なWebブラウザベンダはHTML5および関連仕様の実装に積極的で、多くの関連仕様がOpera、Google Chrome、Firefox、IE8などで実装済み。技術仕様の基礎が固まることには大きな意義がありそうだ。
ヒクソン氏は最近作成された技術仕様書「Web Applications 1.0」にも言及している。これは肥大化してスペックの分離独立を繰り返しているHTML5関連仕様を取りまとめた文字通りWebアプリケーションのための技術仕様書だ。
これまでHTML5の草案には、テキスト・マークアップ言語としてのHTMLの側面と、WebアプリケーションプラットフォームのためのAPIが混在してきたきらいがある。Web SocketsなどはHTTPの拡張プロトコルで、マークアップ言語とは本来関係がない。この意味では各API群をモジュールに分離させることは技術的合理性がある。モジュール化が進めば、実装時の取捨選択もやりやすいだろう。
HTML5ではこれまでWeb Storage、Web Workers、Web Socketsなどが順次独立したAPI仕様として分離独立してきた。また、最近では2DベクターグラフィックのCanvasを分離させる議論が出てくるなど、「HTML+API仕様群」という構成に変化していた。勢いを得つつあるHTML5策定グループが、Webアプリケーションに必要な機能を一気にHTML5の仕様に盛り込もうとしたものを、仕様策定のスピードや複雑さ回避のためにHTML5自体は文書マークアップのコアに縮小してきたようだ。つまり、Web Applications 1.0は、HTML5の策定プロセスで次々に産み落とされたきた関連仕様を、再び全体像として有機的に結びつけて見せる仕様と言えそうだ。もともとWHATWGでHTML5の元になる仕様策定が始まったときにも、「Web Applications」という名称が使われていたため、その名称が復活した形にもなっている。
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