コンシューマ市場だけじゃない
アップルの企業進出にタブレットMacが貢献する10の理由
2009/10/30
米アップルがタブレットマシンをリリースする計画なのかどうかは依然として不明だ。しかしそういった憶測がしきりに飛び交い始める中、その可能性はますます高いように思えてきた。ただ、それがいつになるのかは分からない。また、このタブレットが具体的にどういった機能を備えたものになるのかも不明だ。現時点ではすべてが推測にすぎない。
だからといって、このデバイスがもたらすインパクトを検討できないわけではない。アップルがタブレットをリリースした場合、すでに市場に出回っている各社のタブレットに見られるいくつかの基本機能は当然備えているものと予想される。例えば、タッチスクリーン、電子メールのチェック、Webサーフィンといった機能だ。
アップルのタブレットをめぐる憶測で見過ごされているのは、企業市場への影響だ。誰もがコンシューマー市場にばかり目を向けているように思えてならない。確かに、タブレットマシンはコンシューマーに最も訴求するかもしれないが、それは企業ユーザーに訴求しないことを意味するわけではない。むしろその逆だ。ネットブックのようなシンプルで非力なマシンを使ってWebにアクセスする企業ユーザーが増えているからだ。私のみるところでは、アップルのタブレットはこのトレンドにうまく合致するように思える。
要するに、タブレットはアップルが企業市場に進出するのに大きく貢献する可能性があるということだ。その理由を以下に示そう。
1. ネットブックの成功
数年前には、非力で小さなネットブックコンピュータが企業市場に進出できるなどと誰が信じただろうか。歴史的に、企業市場はパワーと生産性が絶対視される世界なのだ。しかしネットブックはこの状況を変えた。現在、企業は従業員にネットブックを仕事用に与えており、それで何も問題は生じていない。ネットブックでも高機能ソフトウェアを使えるというわけではないが、Webのブラウジング、電子メールのチェック、重要なドキュメントの編集といった作業には特に支障がない。加えて、3Gネットワークを利用することにより、どこからでもWebに接続できるのだ。アップルのタブレットもこの点は何ら変わらないだろう。
2. クラウド効果
今日、企業の間でクラウドを利用する動きが加速している。社内のデスクトップPCに閉じ込められたアプリケーションよりも、Webを通じて提供されるアプリケーションを利用するメリットを企業が認識するようになったのだ。アップルタブレットは、アップルが提供している各種ノート型Macよりもパワーが低いのは間違いないと予想されるため、Web用として最適なマシンになるだろう。すなわち、従業員がWebにアクセスして仕事をする必要がある企業の場合、アップルのタブレットでも何の問題もないということだ。また、Windowsを使えないという主要な障害もクラウドの中では問題にならない。
3. 豊富なアプリの存在
タッチコンピューティング分野におけるアップルの“トロイの木馬”は、同社のアプリケーションになってきた。同社は現在、ゲーマーやプロフェッショナルなど広範なユーザー層をカバーする8万5000本以上のアプリケーションを提供している。これらのアプリのおかげで、iPhoneに移行する価値に注目する企業が増えている。当然、これらのアプリの一部はアップルタブレットにも組み込まれると予想される。豊富なアプリのサポートのおかげで、企業はアップルのストアで有用なエンタープライズアプリを見付けることができるだろう。
4. タブレットは便利
以前のタブレットPCにはいろいろと不満点もあったが、多くの企業(特に医療機関)にとってはタブレットは実に便利なものだ。まず、重要な情報に直感的にアクセスできる。また一般に、タブレットはすぐに立ち上がる。アップルのタブレットもこういったトレンドを踏襲すれば、多くの企業がその価値を見抜くだろう。それは、シンプルなコンピューティングがさらに直感的になるということだ。
5. 企業はアップルが嫌いでない
ほとんどの企業は現在Windowsを使っているが、マイクロソフトのWindows Vistaは、アップルに対する企業の認識を変えた。企業がソフトウェアやハードウェアを選ぶ際にアップルを検討すらしないという時代は過ぎ去った。今日、アップルのエコシステムに移行するのが正しい選択であるかどうかを検討する企業がかつてなく増えている。こういった企業では、アップルのタブレットを試しに使ってみるのが最初の一歩になるかもしれない。
6. ポータブル性という要素
会社の中で毎日を過ごす従業員は次第に少なくなってきた。顧客のオフィスに向かう車の中や、出張に向かう機内にいる方が多いという従業員もいる。こういった従業員にとっては、持ち歩きに不便なノートPCよりもアップルタブレットの方が実用的な選択肢となりそうだ。
7. 会議に最適
多くの企業が見過ごしていると思われる重要な検討項目の1つが、タブレットは会議に適しているという点だ。ノートPCを会議に持ち込む従業員が増えてきたのに伴い、会議の出席者の間に壁ができてしまった。大したことではないように思えるかもしれないが、ノートPCは会議の様相を変えてしまったのだ。アップルタブレットは、この状況を一変させる可能性がある。テーブルの上(かつてはメモ帳が置かれた場所)に置いても、参加者同士のアイコンタクトが妨げられることがない。このメリットを軽視してはいけない。アイコンタクトは会議で重要な要素なのだ。
8. 「使い勝手」の意味を知っているアップル
Windowsベースのタブレットの多くが失敗した最大の要因の1つが使い勝手だ。マイクロソフトのソフトウェアはユーザーの意図を想定して設計されておらず、ベンダのハードウェアも満足できるものではなかった――初期のタブレットは重くて不格好なデザインだった。しかしアップルはユーザーを理解している。それに同社は、企業ユーザーを含むあらゆるユーザーにアピールするデバイスを提供する方法も知っている。
9. リスクがない
企業がアップルタブレットを何台か購入したところで、何か失うものがあるだろうか。大抵の企業は、全社的にOSを切り替えるのを嫌がる。それに、Windowsで動作するエンタープライズアプリケーションもまだたくさん残っている。だから企業はMac OS Xに移行したがらないのだ。だがアップルタブレットは別だ。企業はWindowsを使い続ける一方で、Web関連業務、文書編集、電子メールの送受信といったシンプルな作業をずっと簡単にこなすことができる製品を従業員に与えることができるのだ。生産性に悪影響を及ぼすというリスクは存在しない。
10. iPhoneとの相乗効果
アップルが何よりも望んでいるのは、iPhoneの企業進出を果たすことだ。それには、電話機能を除けばiPhoneのほぼすべての機能を備えるタブレットをリリースする以上にうまい方法があるだろうか。企業はアップルタブレットを試し、それが使いものになることが分かれば、タブレットを補完するものとして、電話機能の付いたiPhoneを従業員に与えようと考えるかもしれない。言い換えれば、企業市場でのiPhoneの普及という面で、タブレットはアップルに大きな貢献をする可能性があるということだ。両者の相乗効果は大きい。
アップルタブレットを無視すべきではない。このデバイスは企業市場で有望だ。
(eWEEK Don Reisinger)
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