圧倒的な部品調達力によるコストダウンを武器に

総合力で勝負? HPの新ITインフラ戦略

2009/11/16

 米ヒューレット・パッカード(HP)は、「Converged Infrastructure Architecture」という企業ITインフラの新戦略を発表した。日本HPは11月16日、これについてブリーフィングを実施した。

 Converged Infrastructure Architecture、すなわち統合インフラアーキテクチャは、「インフラ運用環境」「柔軟な接続」「仮想化されたリソースプール」「データセンターのスマートグリッド化」の4つの要素で構成される、とHPのエイドリアン・ジョーンズ(Adrian Jones)氏(HP エンタープライズビジネス エンタープライズストレージ サーバー&ネットワーキング 日本およびアジア大洋州担当 副社長兼ゼネラルマネージャー)は説明した。

 「インフラ運用環境」はサービス共用環境を実現し、「柔軟な接続」では1度の配線で動的かつ予測可能性の高い接続環境を実現する。「仮想化されたリソースプール」では演算能力、メモリ、ストレージ、ネットワークのリソースをさまざまな状況に適応できるようにし、「データセンターのスマートグリッド化」ではシステムからファシリティ(データセンター施設)までをカバーしたエネルギー管理を実現する。

hp01.jpg Converged Infrastructure Architectureは4つの要素から成る

 こうしたおおまかな説明を裏付ける製品やサービスの具体的な姿は、まだ明らかになっていない。これまでの「アダプティブ・インフラストラクチャ」との明確な違いも不明だ。今後の製品発表を待つしかないようだ。

 ジョーンズ氏は、HPがシステムエンジニアリング企業のEDSやデータセンターコンサルティング企業のEYP、ネットワーク製品ベンダの3Comなど大型買収を重ねることで、狭義のIT製品・サービス提供の枠を超えた総合IT企業としての体裁を整えてきていることが、新戦略と表裏一体の関係にあることを認める。すなわち、サーバやストレージそれぞれの最適化はもとより、企業のITシステムあるいはITインフラ全体の最適化を担う“ワンストップショップ”として、自社を打ち出そうとしていることになる。

 ジョーンズ氏は、部品調達力の点から新戦略を説明した。HPにはまずPC事業がある。これに加えてサーバ、ストレージ、ネットワーク製品の事業がある。これらの事業すべてにまたがって業界標準の採用と部品の共通化を進めることで、現在680億ドル相当の部品調達力を生かし、全分野の製品の生産コストをさらに低減することができるという。これはすなわち、価格競争力の向上につながる。

hp02.jpg 幅広いハードウェアを自社製造していることが、コストメリットに直結すると説明するジョーンズ氏

 「当社の最大の競合相手(であるIBM)は、PC事業を売却したことで、こうしたレバレッジの機会を失っている」(ジョーンズ氏)。ネットワーク製品事業でも、一部に見られる高いマージンを引き下げることができるという考えを同氏は示した。

 HPは業界標準に従うことで、囲い込みのない、オープンな選択肢を提供していくという。そのうえで、ソフトウェアやコンサルティングによる付加価値、さまざまな事業を1社で提供することによる総合力、そして上述の部品調達力を生かした価格競争力で差別化していくとする。

 ますます多くの製品やサービスをHPが包括的に、一体的に提供できるようになっていくことと、オープンな選択肢を提供し続けていくこと。この2つのバランスをどう保っていけるのか。これについても今後の具体的な製品やサービスの発表で明らかになってくるはずだ。

(@IT 三木泉)

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