音声サービスを足がかりに、パートナーと市場拡大
ドコモ3G上でVoIP実現、日本通信がサービスインへ
2009/12/02
日本通信は12月2日、モバイルIPフォン搭載の3G製品「もしもしDoccica(ドッチーカ)」を10日から発売すると発表した。NTTドコモの3G回線を使ってUSBデバイスでネットワークに接続、モバイルデータ通信の上でIP電話による音声サービスを実現する新しい試みだ。製品にはPC用のイヤフォンマイクが付属しており、PC上で電話を受発信する形。通話中もPCのデータ通信は継続できる。パッケージにはこのほか、IP電話機能やチャージ機能を搭載したWindows用接続アプリケーション「bアクセス」、8000円分の通話・通信利用権もパッケージに付属し、想定市場価格は1万9800円。
オフィスや自宅、ホットスポットなどの有線・無線LANを使って既存の固定・携帯電話にかけることもできるが、セキュリティや安定性の問題から、パブリックなインターネットを経由せずに使うほうをメインターゲットとしているという。
料金は3G接続を使う場合、通信料金1分10円が必要。通信料金と、国内の固定・IP電話へかけた通話料金の2分10円が二重にかかる。このため割安感はないが、今後、各社ブランドなどから日本通信とNTTドコモのインフラを使ったスマートフォンが出てきた場合には、「3Gのデータ通信なしで音声のみにすれば、1分21円という現状の一般的な料金を大きく下回る料金のサービスが提供できる」(同社常務取締役CFO 福田尚久氏)としている。新たに開発したコーデックの消費帯域は平均9kbpsで、一般的な60〜80kbpsに比べて低く抑えられることも価格を下げられる理由という。
もしもしDoccicaは、形としてはNTTドコモの回線交換を飛ばして、3Gデータ通信網上でVoIPを実現するものだ。ただ、音声サービスはあくまで1アプリケーションであり、今後は留守番電話を音声ファイルとしてサーバ上に保存するアプリケーションや、FAXをPDFとしてPCやスマートフォンから確認できるアプリケーション、IP電話、インターネット電話、携帯電話などを問わず複数回線をサーバ側で束ねて複数人通話を可能とするアプリケーションなどを、「年明けからは1カ月ごとに、新機能を提供していき、ユーザーと育てていきたい」(福田氏)としている。また、「来年度か、早ければ来年前半にもWindows MobileやAndroid端末が市場投入されてくる」(福田氏)という。
MVNEとしてパートナーの参入に期待
同社取締役社長の三田聖二氏は同社のビジョンを改めて説明した。
利用者の状況に合わせて、WiMAX、WiFi、3Gなど、そのときどきで電波感度や料金のもっとも安いネットワークを選択して接続する「マルチネットワーク戦略」、自由にネットワークとデバイスを組み合わせる「オープンデバイス戦略」、PC向けWindowsやWindows Mobile、Androidのように自由にアプリケーションが作成、配布できる「アプリケーション進化」などの戦略に基づいて、「次世代のインターネットを日本から発信し、数兆円単位の産業を生んでいく」(三田氏)と意気込む。
その土台作りとして日本通信はこれまで約2年にわたり、NTTドコモとのレイヤー2接続を実現したり、キャリアとの接続試験なしにデバイス製品を市場に投入するといったMVNO事業者としての地歩を固めてきた。三田氏は「われわれは土台を作りながら、自社でも製品を作り市場に紹介してきた。こうした事例を通じて方針を理解していただき、新たなパートナーにもこの流れに乗ってもらえれば」と話す。通信インフラや通信サービスの作り込みは通信事業者に任せて、ブランドや企画力、通信を生かすアプリケーションを持ったパートナーが集まり、日本通信をMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)として利用する方向性に期待していると話した。
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