2010年、一太郎は25周年

グーグル参入は「ウェルカム」、ジャストが新ATOK発表

2009/12/08

 ジャストシステムは12月8日、ワープロソフト「一太郎2010」、表計算やグラフィックソフト、プレゼン作成ソフトなど8種のアプリケーションを含む統合オフィススイート「JUST Suite 2010」を2010年2月5日に発売すると発表した。日本語入力システム「ATOK 2010」の単体販売も同時に行う。また、25周年を記念したパックには「魅せる!グラフメーカー」「かんたん!スケジュール図」「差がつく!写真アレンジ」の3本を特典として同梱する。

製品名 希望小売価格(税別)
一太郎2010 [25周年記念パック] 2万円
ATOK 2010 for Windows 8000円
ATOK 2010 for Windows [プレミアム] 1万2000円
JUST Suite 2010[一太郎25年記念パック] 2万5000円
三四郎2010(表計算) 3675円(税込)
Agree 2010(プレゼン) 6300円(税込)
花子2010(グラフィック) 9800円(税別)
Shuriken 2010(メール) 4800円(税別)

2010年2月に発売予定の製品群

波乱の中、一太郎は来年で25周年

 都内で開いた会見では、今年6月に代表取締役社長に就任したばかりの福良伴昭氏が挨拶した。やや緊張した面持ちで臨んだ福良氏は、集まった関係者らに深々と頭を垂れると、来年で25周年を迎える一太郎シリーズとのあゆみを振り返った。

just01.jpg 製品発表を行うジャストシステム代表取締役社長 福良伴昭氏

 福良氏は2009年6月に創業社長の浮川和宣氏に代わり、代表取締役社長に就任している。創業者でジャストシステムの顔ともいえる浮川夫妻はその後、10月末に突然、取締役を辞任しており、福良体制での大きな製品発表は今回が初めて。

 ジャストシステムは2009年4月に計測機器大手のキーエンスと資本・業務提携を行い、同社を割当先とする第三者割当の新株式発行により約45億円を調達。2006年以来続く赤字決算に対して、有効打があるのか注目される。

 波乱の中にあるジャストシステムだが、来年発売の「一太郎2010」は1985年に登場した初代バージョンから数えて25周年目の節目となる製品だ。

 福良氏は当初から開発に携わり、エンジニア畑を歩んできた。

 「最初はPC-100というマウスを採用した国内初のパソコン向けにJS-WORDというものを作りました。技術的には評価されたもののビジネス的には成功といえず、それで、ふてくされてしまいましたね(笑)」(福良氏)

 若かった福良氏が世間の冷たい評価を受けて失意にあるなか、浮川氏は「マウスではなくキーボードでサクサク動くワープロをもう1度作ってみてはどうか」と諭したという。

 「それで作ったのがJX-WORD太郎で、それをバージョンアップしたものが一太郎です。連文節変換機能などを搭載して大ヒットとなりました」(福良氏)

 その後、一太郎はNECのPC-9801シリーズのヒットとともに、“ワープロソフト”の代名詞となる。プラットフォームがWindowsに移行したときにPC向けワープロソフト市場の勢力図はがらりと変わるが、1990年半ばまでは、ジャストステムの一太郎、Microsoft Word、Lotus Word Pro、Corel WordPerfectといった競合としのぎを削った。多くの競合が市場から撤退し、徐々にマイクロソフトのオフィススイートに市場を奪われつつも、一太郎シリーズは毎年着実にバージョンアップを繰り返している。サン・マイクロシステムズが1999年に買収した独StarDivisionのStarOfficeが、現在、オープンソースの「OpenOffice.org」となり話題となっていること、中国・キングソフトの参入を除けば、この市場に大きな動きはない。

既存ユーザーに配慮した細かな機能向上がメイン

 発表会は淡々と各アプリケーションの新機能を紹介するといったもの。「『一太郎 2010』は、ユーザーの方々から支持が高い機能を中心に強化しています」(プレスリリース)とあるとおり、一太郎が広く使われている文教市場を想定した機能強化が目を引く。

【ワープロ「一太郎」】

  • 文書にインパクトを与える「POP文字」機能の表現力向上
  • タイトルや見出しを装飾する「オートブック」機能を強化
  • 「一太郎」文書でPDFファイルもシートとして追加して一括管理が可能に

【表計算ソフト「三四郎」】

  • 「ワークシートチェック」でエラーや参照関係の確認が容易に
  • 数式入力のミスを防ぐ「入力ハイライト」機能を新搭載

【プレゼンテーションソフト「Agree 2010」】

  • 経過時間やノート表示などでプレゼンテーションを支援する新ツール
  • 立体的な画面切り替え効果の搭載
  • OpenTypeフォント対応
  • PowerPointとの互換性を強化、表の読み込みや保存に対応

【統合グラフィックソフト「花子2010」】

  • 図形や文字の色調を一括変更できる「カラースキーマ」機能
  • 「ふりがな」「数学図記号」機能で学校でのテストやプリント作成がスムーズに

【メールソフト「Shuriken 2010」】

  • GmailやYahoo!メールに対応。複数のアドレスの一括管理も
  • メールに付箋を貼り付け、Todoチェックやメモ書きが可能に
  • IEエンジンへの切り替えでHTMLメールへの対応を強化
taro.jpg 一太郎2010の画面例。POP文字の装飾機能を強化したという
hanako.jpg 花子2010の画面例。配色を1つずつ変更するのではなく、全体でバランスを保ったまま変更する「カラースキーマ」や、数学の図・記号関連の表現力を高めたという

Google日本語入力の参入は「ウェルカム」

 一太郎シリーズがヒットとなったのは、日本語入力システム「ATOK」の存在が大きく、OSに無償のものが同梱される現在も一定のユーザー層を獲得している。また、組み込み市場や、用語統一が求められる企業ユーザーなどでも利用は拡大しているという。

 ATOK 2010では伝統的なアルゴリズムに加え、自然言語処理研究の成果を採り入れた変換エンジンを強化。文脈に応じた同音語の提示や語彙・用例拡充により変換精度を向上しているという。

 英語関連では、和文の中に英語のスペルのまま入力しても、正しく変換する機能を搭載。例えば「いんてrねtで知り合った」(internetdeshiriatta)を正しく「インターネットで知り合った」と変換できるという。英語入力支援では、スペルチェックや推測入力の精度を向上。「8カ国語Web翻訳変換 for ATOK」を新たに提供し、オンラインの辞書サーバと通信して日本語入力を外国語に翻訳変換することができるようになった。

 入力支援機能として「重ね言葉」の指摘に対応。「あらかじめ予約しておく」「すべてを一任する」「再び再開する」など、同じ意味の語を重ねて使っている表現に対して、指摘と訂正候補の提示を行う。ATOKでは、「変換効率以前の課題に対しても取り組んでいる」(コンシューマ事業部企画部 井内有美氏)という。

 先日ベータ版がリリースされた「Google日本語入力」が話題となっていることについて、コンシューマ事業部企画部の佐藤洋之氏は、「現時点でわれわれが競争相手としているのはアップルやマイクロソフトの無償のIME」としながらも、「グーグルのように新しいことをしているものが市場に入るのは(日本語入力システム自体に)注目が集まるのでウェルカム」と話した。

 今後のATOKの方向性については、グーグルが発表したChrome OSへ対応や、iPhone/Androidへの対応をはじめ、クラウドやRIA、WebプラットフォームでのATOK対応強化を進めていくという。

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(@IT 西村賢)

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