独自のマーケットプレイスも
NECビッグローブ、Android端末利用のクラウド事業を開始
2009/12/17
NECビッグローブは12月17日、閲覧性と可搬性を両立させたネット端末に、ネット接続や各種サービス、コンテンツを一体的に組み合わせて提供する「クラウドデバイス&サービス事業」の取り組みを発表した。
都内で開催された発表会の冒頭であいさつに立った同社代表取締役執行役員社長の飯塚久夫氏は、ネットがすでに生活に密着したコミュニケーションインフラと化しており、インフラ面だけでなく、インターネット上のサービスも生活シーンに浸透していると話す。さらに、モバイルブロードバンドの浸透が、家でも外でもインターネットを利用させるに至ったと今日のインターネットの使われ方を改めて説明した。
しかし一方で、PCは画面が見やすいが、持ち運びにくく設定が難しい。携帯電話は可搬性は高いが画面が小さいなど、利用シーンの広がりとともに新たな問題点とニーズが顕在化しているとし、ISPが今後取るべき1つの道として、インターネット接続サービス、ポータルサービスと一体化したデバイスの開発に踏み込む必要があると判断、「クラウドデバイス&サービス事業」の誕生につながったという。
「クラウドデバイスのコンセプトはPCの閲覧性の高さと携帯電話のモビリティを融合させたもの」と話すのは、同社取締役執行役員常務の古関義幸氏。同氏は、現時点で投入予定のクラウドデバイス2機種を披露した。台湾Camangi社とNECの製品である。
いずれも7インチのWVGA(800x480)端末で、重さはCamangi社の製品が約380グラム。OSにはAndroidが採用されており、無線LANだけでなく3G/WiMAX(イー・モバイルとUQコミュニケーションズのMVNOで実現)にも対応する。操作はタッチパネルで行い、接続の自動設定機能により、接続回線を意識しない利用が可能。本体価格は3〜4万円を想定しているという。
Camangi社の製品は実際に稼働しているものだったが、3G/WiMAXが内蔵されておらず、USB接続のアダプタを介す必要があった。また、動画再生にはやや難があるスペックであると古関氏は話している。なお、Android OSはバージョン1.6が用いられていた。
一方、モックアップの披露にとどまったNEC製のクラウドデバイスは2010年度中の投入が予定されているという。こちらは30fpsの動画再生に耐えるスペックにすることが伝えられた。
これらのクラウドデバイスはAndroid搭載だが、ネット端末としてみれば、例えばchumbyのような製品に近い。違うのは、クラウドデバイスは(バッテリーの駆動時間が4〜5時間ではあるが)持ち運びも想定されている点である。その一点をのぞけばchumbyなどが提供している機能、つまり、天気予報やフォトアルバム(同社ではフォトポケと呼んでいる)などと同様のサービスを用意している。
しかし、製品には同社がこれまで培ってきたコンテンツ提供ノウハウなどが強く押し出されており、広範な世代に対してサービス面で訴求しようという姿勢が見て取れる。例えば、各種アプリケーションの配布は、Androidマーケットに相当する独自のマーケットプレイス「andronavi」を立ち上げることが明らかにされた。andronavi自体はWebサイトで、日本語圏に特化したアプリケーションなどを中心に、コミックなどのコンテンツもここから提供される予定となっており、2012年度末にはアプリ/コンテンツ数で10万本を目指すという。古関氏は「特にコミックなどの日本が誇るコンテンツで海外展開も視野に入れたい」と話した。
andronaviでは日本語によるレビューなども充実させ、有象無象のAndroidアプリが集まるAndroidマーケットとはすみ分けを図るとともに、開発者との利益配分率をiPhoneアプリのケースより優遇するなどして開発者の取り込みを図りたい考えだ。なお、アプリやコンテンツを購入する決済方法については、ISPの料金に含める方法や海外企業との連携を検討しているという。
同社は、クラウドデバイス&サービス事業で2012年度の年間売り上げ目標を100億円とし、クラウドデバイス、サービス、アプリ/コンテンツマーケットでそれぞれ30億円程度の売り上げを見込んでいるという。展開スケジュールは、2010年2月からBIGLOBE会員を対象にモニターを行い、その後本格展開を図る予定で、andronaviについては1月からサイト上に情報を集約していくとした。
発表会終了後に飯塚氏は「これはISPの生き残りをかけた戦いである」と記者に話してくれた。現状、同社の売り上げが大きく落ち込んだりしているわけではないが、ISP事業だけでは先細りになるという危機感は強い。同社のクラウドデバイス&サービス事業は、ISPとしてこれからのビジネスをどう戦っていくかという1つの姿勢を示すものとみることができる。
ISPをインターネット・サービス・プロバイダーではなく、インターネット・サービス・“パートナー”と位置付け、よりユーザーとの密な関係を構築するのに、Androidを採用したハードウェアも扱うことで、ユーザーをどれだけ囲い込めるかが注目される。なお、同社は2012年度末までにクラウドデバイスの利用者を約20万人にしたい考えだ。
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