全社横断的にクラウドビジネスを推進
日本IBM、社長直属組織新設で「クラウドに本気で取り組む」
2010/01/15
日本IBMがクラウドへの取り組みの本気度をアピールした。同社は1月14日、クラウド戦略を報道関係者に説明。このなかでクラウド事業部の新設をはじめとする機構改革と人員への投資計画を明らかにした。
日本企業はほかの国に比べ、クラウド・コンピューティングへの関心が高いと日本IBMでは分析する。世界のCIOを対象としたIBMの調査(2009年1〜4月に実施)で、「競争力強化のために、どのような分野での取り組みを検討されていますか?」との問いに、「クラウド・コンピューティング/SaaS」を選択した回答者の割合は、世界平均の33%に対し、日本では50%に上ったという。
日本IBM 執行役員の吉崎敏文氏は、それでも2009年の前半は勉強モードの顧客がほとんどだったと話した。それが「9、10月くらいからお客様の取り組みが変わってきた」という。
「日本IBMはクラウドに本気で取り組む」(吉崎氏)。同社は1月1日付で社長直属のクラウド統括組織として「クラウド・コンピューティング事業」を設立。吉崎氏がクラウド事業担当執行役員に就任した。同事業はクラウド関連の事業企画、事業開発、ソリューション構築を担当。既存事業部や大和研究所、米IBMクラウド部門などと連携し、クラウドビジネスを推進する。また、同事業はクラウドCTOを任命。クラウドCTOは社内の技術エキスパートである技術理事29名をまとめ、ソリューションの技術的検討を行う。
また、1月中に「Team Cloud」として、全社から事業部横断的に約300名のクラウドスペシャリストを任命。これらスペシャリストを通じ、既存事業部と連携して全社的にクラウド関連の事業を推進していく。また、約1000人に対してクラウド関連の教育を行っているという。同社は今後5年間でクラウド関連の人材に500億円を投入する。
2010年は企業単位だけでなく、業界単位のクラウド・ソリューションの提案を加速。またクラウドビジネスにおけるパートナーとの協業を進めていくという。
日本IBMがクラウドにおける自社の強みと考えているのは技術的な優位性、ソリューションの充実、導入実績、世界的な対応の4点だ。
技術的な優位性という点では、クラウドに必要な仮想化、標準化、自動化のための技術や製品を以前から展開しており、プロセスとITサービスを標準化するためのメソドロジーができているという点をアピールする。「Tivoliを含め、クラウド・コンピューティングに必要なプロビジョニングやセキュリティなどの製品を自社で持っている。社内で構築したい、あるいはIBMにやらせたいなどいろいろなパターンがある。そのときに、品ぞろえが豊富なのは非常な強み。外部クラウドに移行するか、社内に残すかの仕分けも、全体的な技術やレガシーの技術が分かっていないとできない」(吉崎氏)。
ソリューションについては、IBM社内の業務を分析して、クラウドに向く業務と向かない業務は何か、そしてどのようにクラウド化すべきかといった点に関する知見をベースとして、製品化するとともにスキルを蓄積しているとする。また、レファレンス・アーキテクチャを含めて包括的な製品・サービスのロードマップを備えているのも強みだという。日本IBMでは2010年に、下の図の黄枠で示された製品・サービスの投入を予定している。2009年はプライベート・クラウド関連の発表が多かったが、2010年はパブリッククラウドのサービスが目立つ。
実績については、IBM社内で11万人の研究・開発者が2年以上使ってきているほか、200以上の顧客プロジェクトの経験があり、すでに55件の事例を公開しているという。
また、IBMはグローバルな対応により、クラウドのスケールメリットを生かせるとする。同社は世界的にクラウド検証センターを10カ所(日本国内に1カ所)、クラウド・データセンターを9カ所(日本国内に2カ所)用意しており、顧客のグローバルなクラウド展開に対応できるとしている。
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