パートナーサミットで宇陀氏が説明

セールスフォースはオーガニックな成長を目指す

2010/01/20

 「本来の市場規模からすると、多分ようやく100分の1に来たのではないか」。セールスフォース・ドットコム社長の宇陀栄次氏は1月18日、同社が都内で開催したパートナー向けカンファレンスで、日本におけるビジネスの進展についてこう話した。

salesforce01.jpg セールスフォース・ドットコム社長 宇陀栄次氏

 セールスフォース・ドットコムが世界的に展開しているクラウドプラットフォーム・サービス「Force.com」のうえで、現在13万5000のアプリケーションが稼働していると宇陀氏は続けた。「半年前は7万5000だった。クラウド上でアプリケーションをつくるお客様が急速に増えてきた」。

 宇陀氏は、いま起ころうとしているのはIT業界の構造変化だと話した。

 「従来のやり方では、中小のパートナーは(大手SI業者の)サブコン、サブサブコンをやるという構造。これが大きく変わろうとしている。クラウドではいろいろな人の知恵が加わって、市場のニーズに合わせて柔軟に変化していく。そういうITの時代が到来した。従ってどんな企業にもチャンスがある」。

 同社は昨年、Force.comのOEMパートナープログラムを発表した。それまでユーザー企業は、Salesforce CRMあるいはForce.comのライセンスをセールスフォース・ドットコムに支払い、それとは別に、このプラットフォーム上で動くアプリケーションのライセンスを運営企業に支払うという形だった。だが、OEMパートナープログラムによって、Force.comのプラットフォームライセンスはISVやSI業者が支払う形になった。このため、ISVやSI業者は、従来よりも自由に、自社のアプリケーションサービスを値付けできるようになった。しかも、そのプラットフォームライセンス料は、固定額でなくアプリケーション売り上げの一定比率で支払えばいい。パートナーのリスクは大きく下がったといえる。

[追記:当初の記事ではOEMライセンスは固定額ではないと表現しましたが、誤りでしたので訂正させていただきます。2010/02/09]

[追記:再びセールスフォース・ドットコムより、OEMライセンス料はアプリケーション売り上げの一定比率となり、固定額ではないため、本記事の当初の表現が正しいとの説明がありました。このため、当初の表現に戻させていただきました。 2010/02/18]

salesforce02.jpg OEMパートナープログラムでビジネス形態が変わった

 NEC、富士通、日立などの大規模システム/SIベンダも、中小のISVも、OEMパートナーという点では同じ立場だ。さらに今後は、NEC、富士通、日立などが中小ISVと協業し、自社のワンストップ・ソリューションの一部として、このISVのアプリケーションライセンスを売るといったビジネス形態も出てくるだろうという。

 従来の一般的なパートナー制度はがんじがらめで、禁止事項が多すぎると宇陀氏は話した。「ネットワークの時代にそれでは適応できない。当社と1対nという関係でいくのではなく、コミュニティ型のような形で広がっていく」。

 Salesforceを導入した日本郵政のケースでは、CRMアプリケーションから、(パートナー企業が提供する)データウェアハウスの受注へとビジネスが広がっている。こうして、セールスフォース・ドットコムだけが儲けるのではなく、SI業者やISVが多様なアプリケーションを追加的に提供するチャンスが広がる。「さらにこれまでできなかったビジネスができるようになる。ローソンではNotesのリプレースが行われ、2000社のサプライヤー、社内の5000人、8500拠点、15万人のクルーを結ぶ大規模なシステムを短期で構築できる」。新会社の設立や買収、エコポイントなどの特別プロジェクトに伴うシステム需要も、Force.comを中心に集うパートナーにとって大きなフロンティアになると宇陀氏は説明する。

 「これまでITは難しいプロの世界だった。しかしコモディティ化することによって大きな規模になる」。メリルリンチのレポートでは、ITサービスビジネスは1600億ドル市場と予測されているが、その2倍も3倍も大きくなる可能性があると宇陀氏は訴えた。

(@IT 三木泉)

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