日本発、Twitter関連の注目サービス
Twitterの面白さが分からない!? そんな人にこそ「Togetter」!
2010/02/19
Twitterが新しいコミュニケーションのプラットフォームとなるという予感は多くの人が持っていると思う。それはTwitter上で今まで見えなかったものが可視化され、新しいコミュニケーションが生まれているからだ。ソフトバンクの孫正義氏や楽天の三木谷浩史氏がダイレクトに利用者とコミュニケーションするようなシチュエーションは、これまで考えづらかった。
こうした新しいコミュニケーションに加え、Twitterが利用価値を高めているのは、Twitterを土台にして新しい使い方やアイデア、サービスが次々に誕生しているからだろう。
140字という気軽さから多くの人が心情や情報をアウトプットし、シェアする。あるいは“ボット”と呼ばれる機械(サーバ上のプログラム)までがリアルな世界のアップデートをつぶやくようになる。後は、それをどうフィルタし、加工し、検索し、統計処理するかという話になってくる。
Twitterが当初ギークの間でウケたのは、こうした可能性についてうっすらと予感のようなものがあったからだと思う。APIで遊ぶことができ、さまざまな実験をすることもできた。今でも実験は継続中で、APIも進化を続けている。本当のところ、まだ誰にもTwitterの全体像は見えていないのではないだろうかと、私はそんな印象を受けている。
日本発で注目のTwitter関連サービスが続々
Twitterはアメリカ発のサービスだが、注目すべき関連サービスが日本からも登場してきている。「ふぁぼったー」、「Togetter」(トゥギャッター)、「ツイテレ」、「OKetter」などだ。
ふぁぼったーは、発言に対して「お気に入り」の星アイコンをクリックした/された、という情報を可視化するサービスだ。これはもともとTwitterが提供する機能だが、本家Twitterサービスではほとんど活用されていない。しかし、Twitter利用者の間では、特定の発言に対してあえて返信するほどではなくても、「ああ、そうだね」「面白い!」「なるほど」という肯定的な頷きに相当する行為として“ふぁぼり”が利用されている。これが見えることで、直接的に見えていなかった非音声的なコミュニケーションが見えてくる面白さがある。
Togetterは、特定の誰か、あるいは複数人のつぶやきを1本のリストに集めてそこにパーマリンクを貼るサービスだ。ハッシュタグや検索でのまとめと異なり、あるテーマにそって人為的に発言を集めて新しいコンテンツとできるところが新しい。
ツイテレは、テレビの各チャンネルに対して仮想的なチャットルームに入るような感じで、視聴者がテレビの前で行ってきたようなつぶやきを共有するサービス。Twitterを利用しているが、それはあくまでもリアルタイムのメッセージング・プラットフォームとしてであって、ツイテレはTwitterとは異なる付加価値を提供している。
OKetterは、Q&Aサイト運営の大御所、OKWaveが放つサービスだ。国内の多くのQ&AサイトのエンジンをOEM提供しているOKWaveだが、あのQ&A掲示板と同じことを、140字でやってみようという試みがOKetterだ。より気軽に聞けて、答えるほうも端的でいい。
いずれも、Twitterを使いやすくする補助的サービス、というよりも、Twitterを土台として付加価値を生み出す新しいサービスと捉えるべきだろう。
Togetterが面白い!
私は文章コンテンツを作る立場にあるので、特にTogetterに大きな可能性を感じている。Togetterのサービス公開自体は2009年の9月末と少し前だが、最近利用が活発になってきているようだ。年末に注目されるまとめコンテンツがいくつか出たことで、ページビューは急増している。
Twitter上ではRT(リツイート:誰かの発言をそのまま、もしくはコメント付きで再発信すること)という仕組みがあるものの、基本的にはすべてがリアルタイムで流れ去るようできているし、フォロー関係にない人々のやり取りは全体像をつかみにくい。ハッシュタグや検索を使ったフィルタリングでは、以下のように問題がある。
- 重複や関係のない発言(ノイズ)が多い
- ハッシュタグを使わない人の発言が拾えない
- 時系列でしか見られない
- 検索では一定期間以前の古い発言が取れない
かといってTwitter上で興味深い発言をウォッチしようとフォローを増やしすぎると、もっとワケが分からなくなる。本当はTwitter上では毎日のように興味深いつぶやきや議論、喧嘩、tsudaりなどがあるのに、こうした散発的に発生していた「注目のコミュニケーション」は多くの人に見えていない。
こうしたTwitter内の注目コンテンツをすくいあげ、見えるようにしてくれるのがTogetterだ。
Togetterの基本機能は単純だ。任意ユーザーの発言を引っ張ってきて(Webブラウザ上のドラッグ&ドロップで)、新たなリストとして並べ直すというだけだ。アイデアはTwitter同様にシンプルだが、使い方にはかなりの広がりがある。すでにいくつか利用方法の類型が出てきているので、以下にまとめてみよう(これはサービスを紹介する上で私が便宜的に分類したものに過ぎない)。ちなみに、Togetter上で注目を集めつつあるまとめリストを定期的につぶやくボット「トゥギャッたん」(@togetter_jp)をフォローすれば、Twitterウォッチが楽しくなるかもしれない。
【パターン1】問わず語りをまとめたもの
Togetterの1つ目の利用形態は特定の1人の発言を時系列に切り出す、というものだ。例えば、以下のまとめ(トゥギャり、と呼ぶのだろうか)を見てみてほしい。
1つ目はITを中心に精力的に取材・執筆しているフリージャーナリストの佐々木俊尚氏が、電子書籍市場の立ち上がりを前に紙媒体の今後について考察を述べたものだ。約2時間にわたって30個ほどポツポツとつぶやいて自説を展開している。途中、ほかの人の意見も取り混ぜたり、返信したりしつつ、1つのまとまったコンテンツとなっている。ブログのエントリほどしっかりした論旨展開というものはないが、十分に読み応えがある。同じ佐々木氏による「佐々木俊尚氏が語る伝説の“着流し記者”」も問わず語り的なコンテンツだが、極めて面白い。
2つ目は私がメモ代わりに自分でまとめたもの。取材メモとしてTwitter上に吐き出したものを、後から自分で参照するためにまとめたものだ。自分のためにまとめたのだが、これが非常に注目を集めてしまって驚いた。これは後に記事としてもまとめて公開したが、Togetterの“簡易CMS”としての側面に大きな可能性を感じた。例えばブログのエントリを起こすのには気が重い、かといって140字で収まるようなものではない、というテーマをアウトプットする場合、「Twitter+Togetter」をCMSとして捉えれば使えるのではないか。Togetterは後から追加編集もできるし、必ずしも時系列に並べる必要はないので、歩きながらポツポツとメモしておいて、後でまとめるという使い方もありかもしれない。
3つ目のものは、岡田斗司夫氏による実験的な試み「公開読書」だ。感想や評論よりも本文の抄訳の分量が多いのでメモ的な印象だが、非常に興味深い試みだ。もともと読書というのは、誰が何を読んでいてどう思ったかという文脈を共有するソーシャルな営みの面が強いが、電子書籍市場が立ち上がって、ますます読書がソーシャルになるのだとすれば、TwitterやTogetterといったプラットフォームの有用性が増してくるのではないだろうか。
【パターン2】tsudaりをまとめたもの
Twitter上には、イベントや発表などをリアルタイムにレポートするユーザーが多い。「tsudaる」と動詞が生まれたほどで、もともとはジャーナリストの津田大介氏が会見内容や発言を1人で怒涛(どとう)のように打ち込む“テキスト・ストリーミング”のことだったが、これを複数人で行うと、けっこうその場の雰囲気が見えてくる面白いコンテンツとなる。
例えば、
などは、会合の雰囲気をよく伝えている。本格的なまとめ記事やUstreamによる中継などと比べると情報の劣化は否めないが、何もないよりはずっといいし、Togetterなら短時間で拾い読みできるというメリットもある。本来なら、たとえリアルに会場にいたとしても聞こえてこないはずの個人的な感想までもが見えているのは、Twitterのハッシュタグ利用時と同様だ。
【パターン3】複数人による議論や喧嘩をまとめたもの
Togetterの利用形態でメジャーなのは、2、3人でちょっとした意見交換をしたり、議論を行うといったコミュニケーションのまとめだ。わざわざブログにまとめたりするほどではないが、このまま流れ去ってしまうのは惜しい、と思った当人や周囲の人が関連発言を拾い集めるというパターンだ。
1つ目のまとめは、変革期にあるコンテンツ産業のあり方について、音楽系のクリエイターを中心に議論を展開しているのをまとめたものだ。ブログのトラックバックやコメントとはまた違った速度で、どんどん話が進んでいく様子や、周囲にコメントを寄せている人々がいる「オープンエンド」のコミュニケーションとなっている様子も見て取れる。ジャンルを問わず、オープンで闊達な議論の場として、Twitterに期待を寄せるのは私だけだろうか。Twitter上の意見交換をベースにブログへまとまった議論を移すという使い方もあるだろう。
2つ目は、おなじみのテレビ番組「朝まで生テレビ」の議論をネット上に持ってきたような雰囲気だ。1つ目の議論に比べると絡みが少ない気もするが、Twitter上である程度ヘビーな議論、少なくとも論点の共有が可能なことを示す例だと思う。
Togetterにまとめられる議論は、何も高尚なものばかりでなく、「エスカレーターは片側を開けるべきか?」を巡る、「エスカレーター議論まとめ」などというものもある。
disりや喧嘩はネットの華?
複数人のつぶやきをまとめたものの中にはトゲトゲしいやり取りや、ケンカと呼べるようなものもある。例えば以下のように。
2007年、格差問題が騒がれ出したころに注目を浴びた著作、『若者を見殺しにする国―私を戦争に向かわせるものは何か』の著者である赤木智弘氏が、Twitter上でフリーのジャーナリスト 常岡浩介氏と絡むという一幕があった。私はいずれのアカウントもフォローしていないが、野次馬的にTogetter上にまとめられていて、このやり取りについて知ることができた。タイトル通り、私は常岡氏のオトナの議論に分があると思うが、みなさんはどうだろうか。今のところ、こうしてまとめられたコンテンツに対してさらにコメントが付加されることは少ないが、システム的にはつぶやきとして誰でもコメントをつけることができる。誰にでも発言や反論の機会が与えられていて議論を発展させられる「Twitter+Togetter」はフェアな場だと思う。
“disり”と炎上はネットの華。野次馬根性丸出しで紹介すると、次のやり取りもTogetterの面白さを知るのに最適だ。
内容が内容だけにコメントは控えるが、Twitter上に尋常ならざる空気が流れたようで、それが見事にTogetterでスナップショットとして切り取られているのが分かる。
すでにTwitterの世界はかなり広い。どんなにヘビーなTwitterユーザーであっても、見えているタイムラインはTwitterのごく一部に過ぎない。Twitterはもっとずっと広い世界なのだ。Togetterで日々新たに掘り出されるコンテンツを見ていると、そういう認識を新たにする。「Twitterって何が楽しいの?」と思っている未経験者であれば、Togetterは、日々そこで何が起こっているかをつまみ食い的に知るきっかけになりそうだ。
【パターン4】緩やかにテーマを共有した発散的な議論
4つ目のTogetterの利用パターンとして、特定のテーマを投げかけて、それに対する返信や意見表明をまとめたものがある。例えば、
というまとめは、タイトル通りの問題提起に対してコメントが付けられたものだ。直接面識がある人たちばかりでなく、地域やライフスタイルの違いを超えてコメントが寄せられているのが興味深い。さらにこのコンテンツでは、まとめの後にもコメントが伸びていて、結論の出しようがないコミュニケーションでも、それなりに読めるようにまとめられているという印象だ。
もっと身近な井戸端会議的なコミュニケーションもTwitter上にはある。例えば、
は、使っている本人は方言と思っていない、「透明な方言」に気づいた瞬間の個人的体験を中心にリストにしただけのものだが、ちょっと興味深い。
Twitterのタイムラインを見ていると、同じタイミングで共有されるテーマが感じられることがある。誰もが一斉に特定のニュースやテーマに反応してコメントや感想をつぶやくというものだ。あえてハッシュタグも付けず、当該URLや当該キーワードも使わず、「ゆるーく話題に乗る」というTwitterらしいコミュニケーション作法のようなものだ。
こうした発言を後から検索してまとめるのは難しいが、こうしたTwitterの境界線のない広がり感が漠然と感じられるのが、次のようなTogetterまとめだ。
- 猪口邦子元大臣が政治活動資金ゼロの窮状をつぶやく。ついったーで広がった支援・議論まとめ
- 「どうしてウチのヨメは片付けが出来ないんだろう」に対して全twitter上の主婦達が平謝り
- お気に入りGoogleバズで本名と位置情報がダダ漏れになっている件と解決方法まとめ
1つ目は猪口邦子元大臣が政治活動資金がゼロになったとつぶやいたことに対して、さまざまな声が寄せられているのが分かる。猪口元大臣はTwitter上の交流を「小さな奇跡」だと述べている。確かに、こうしたテーマで選挙民とダイレクトに会話するチャンネルは、今までなかったかもしれない。
2つ目は、これはジョークネタだが、Twitterらしいコミュニケーションの広がり方が見えるようなまとめだ。
「声に出しては言えないが、どうしてウチのヨメは片付けが出来ないんだろう」というつぶやきがRTされ、それに対して「ごめんなさい!ごめんなさい!」「反省してます」などヨメ族たちから続々と反応があったという構図だ。
3つ目は、新サービス「Google Buzz」が投入された直後に起こった騒ぎをまとめたもの。今は改善されたが、Buzzスタート当初は個人情報の初期設定ポリシーに違和感を持つ人が多く、これに対して対処法などをつぶやく人が多かった。このまとめは、騒ぎが起こった直後に編集されていて、リアルタイム性も高かった。
【パターン5】外部リンクを含むまとめ
140字のつぶやきだけでなく、そこに含まれるリンク先までをもコンテンツとして捉えれば、もう少し高度なコミュニケーションや情報の流れをまとめることもできるだろう。例えば、
は、写真付きのつぶやきをまとめたもので、Togetterは写真も表示してくれている。凄まじい数の「初日の出」がTwitter上に投稿されていたことが分かる。
も、投稿写真が並らぶ面白いコンテンツだ。
写真とは違うが、ブログやニュースへの外部リンクを含むつぶやきをまとめる使い方もあるだろう。ちょっといい例が見つけられないが、今後、後でTogetterでまとめることを前提にリンクをつぶやいて、例えば「記事紹介リスト」を作るようなこともできそうだ。
Togetterはロングテール・メッセージのCMSだ
現在のTogetterは、万人のつぶやきという大きな海から特定の切り口でスパッと切り出すサービスに見えるが、あらかじめ「後でTogetterでまとめる」ことを前提にして利用するケースも出てくるかもしれない。オープンにできる議事録や、公開質問のやり取りなどだ。
もともとTwitterは、ブログや掲示板に書くには気が重いようなメッセージを140字制限という絶妙の区切りで吐き出させることで人々のアウトプットを何倍にも増幅させるプラットフォームという特徴がある。ただTwitterには編集機能がなく、個別のつぶやきにしかパーマリンクがないし、検索もリストも常時変化する前提でのフィルタリングとなっている。
これに対してTogetterは、Twitterが引き出した“ロングテール・メッセージ”と呼ぶべきものをコンテンツとしてまとめるCMS(コンテンツ管理システム)となっていると言えるだろう。
【パターン5】公開インタビュー
さて、Togetterの利用パターンとして最後に紹介したいのは「公開インタビュー」だ。特定の誰かに質問をして、Twitter上でインタビューをするというものだ。
- 100万PV/日のmixiアプリモバイルをGoogle App Engineで実装した@gclue_akira氏に直撃インタビュー
- #togetter で行われたTogetter中の人インタビューまとめ
1つ目はTogetterが開始してまもなく登場したまとめだが、ちょっとした注目を集めた。内容自体もIT系の人々にとっては注目だが、私が注目したのは、誰でも“インタビュー”を手軽に行い、それを広くパブリッシュできるプラットフォームが登場したのだという点だ。これは従来であれば、雑誌や新聞など媒体にアクセス可能な人たちだけが行ってきたことだ。
もちろん、今までであってもブログなどで同様のことは可能だったが、時間や移動コストの制約は大きかった。そうしたコストが小さくなり、「話を聞く」のが手軽になったこと、相手の発言をダイレクトにコンテンツに含めることができるようになった点で、ブログや、現在の取材記事とは異なる。
だからといって、いきなり著名人に話しかけても返信してもらえる可能性はもちろん低いだろう。質問を受ける方にしてみれば「ちゃんと分かってるやつ1人が代表して聞いてくれ」ということもあるだろう。そうした煩わしさを差し引いて考えても、ここに、記者クラブ制度と正反対の、オープンなマス・コミュニケーションの新しいチャンネルの可能性を感じるのだ。
Twitterサービス単体では、チャンネルとしては細い。「答えたところで流れ去るだけ」と思えばインタビューに答える気にならないだろう。しかし、「Twitter+Togetter」で事後にコンテンツとして公開するという前提なら、さまざまな“インタビュー”ができるのではないか。
例えば企業やお店と消費者・利用者の間で、サービスや製品についてグループインタビューをすれば、これは立派なプロモーションやマーケティング調査になるし、本当に製品が良いものかどうか、愛されているかなど、一目瞭然になる。ハッシュタグだけだと流れ去る可能性があるが、Togetterを使えば、そのコンテンツを固定化できる。
上の2つ目の公開インタビューだが、これは私自身がTogetterの「中の人」にインタビューを申し込んでやってみたまとめだ。なかなか思ったほど効率の良いインタビューにならず、先方には迷惑だったかもしれないが、発言がそのまま取材メモとなること、非同期で話を聞けることなど、ほかのメディアにない特徴を感じることができた。
ヤフーを飛び出し、個人開発のスピード感で勝負
Togetterというサービスを立ち上げて運営しているのは、まだ28歳の若者だった。
「Togetterには、Twitterの多様な面が現れていて、作られるリストを眺めているだけでも面白い。最近Twitterを始めたけど面白さが分からない、という初心者の方にも遊びに来てほしいと思っています」
2009年9月にTogetterを立ち上げた吉田俊明さんは、そう語る。もともとは自分が感じたニーズをサービスとして実装してみたのが発端だという。
「一番最初は、社内でのプレゼン資料用にTwitter上のつぶやきをまとめたいと思ったのがきっかけです。社内でランチタイムに行われているエンジニアを中心とした交流会の場で、天下一カウボーイ大会というイベントのレポートを発表することになり、イベント用のハッシュタグでTwitter上で関連するつぶやきを抽出して、それを資料にすればいいやと思ったのが始まりです。ドラッグ&ドロップでまとめられたら便利だなと思って」
「といっても、社内で作ったわけではなく、自宅でせっせと作ってみた感じです。ちょうどTwitter関連のサービスを作ってみたいと思っていたのと、試作したツールの評判が良かったので、これはみんなで共有できるような仕組みを実装したらもっと面白くなるかなと考えて、少しずつ実装を始めました」(吉田さん)
東京農工大学で情報系の学部を卒業した吉田さんだが、プログラミングの楽しさに目覚めたのは、むしろ卒業後に勤めたヤフーに入ってからだったという。
ヤフーではメール関連のサービスを担当した。歴史が長くユーザー数の多いプロダクトでは、日々“改善”を中心とした作業が多くなる。それはそれでやりがいがある一方で、吉田さんは新規サービス立ち上げにも強い関心を持ち、個人でWebサービスをいくつも立ち上げた。
立ち上げては閉じ、閉じては立ち上げを繰り返すうちに、自作のPHPフレームワークまで作ってしまったという。吉田さんは「だてに個人で10個も20個もサービスを立ち上げてきたわけじゃありませんから」と言って爽やかに笑う。サービスの企画やサイトデザイン、開発、サーバ管理など必要なことはすべてこなす。
「両者は補完関係にあるのだと思います。個人でWebサービスを立ち上げれば自宅でスキルを磨けますし、本業にもいい影響があります」(吉田さん)
Togetter開発当初もヤフーに在籍していた吉田さんは、仕事から帰宅した後も、寝る間を惜しんで開発に没頭していたという。しかし、次第にヤフーから外に飛び出して自分の力を確かめたいという思いが強くなったという。
「新卒でヤフーに4年ほど勤めました。ただ、個人で行っているWebサービスの開発を、スピード感はそのままにビジネスとしてトライできないかと考えて、現在の会社に転職しました」(吉田さん)。
現在務めているWeb制作会社のバスキュールは、規模や知名度からいえば、ヤフーとは比較にならない。それでも自由度は違う。Togetterは今でも個人の活動で会社とは無関係ということになっているが、そうした活動もおおらかに認めてくれているという。
Togetterはサービス公開から半年足らずだが、すでに2010年2月中旬現在、まとめコンテンツ数が約6000、1日100個のペースで増えているという。Twitter上で注目すべき動きがあれば、誰かが必ずTogetter上でまとめを作っているというほど、利用が広まっている。UU(ユニーク・ユーザー数)は1万5000人、PV(ページ・ビュー)が1日に3万5000程度。今のところ、ページを見た人がほかのページに移動するいわゆる“回遊率”の向上が課題という。また、UIのリニューアルを予定していて、吉田さんは「その後はiPhoneクライアントの開発や英語圏でのサービス提供も考えていきたい」と話している。
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