法人向けのエコシステム醸成の決定打となるか

グーグル、Google Apps向けマーケットを開設

2010/03/10

 グーグルは3月9日、ビジネスアプリケーションのオンライン市場「Google Apps Marketplace」を開設したとブログで明らかにした技術仕様解説動画より詳しい解説動画)。Google Appsを利用する企業向けのサービスで、Google Appsに追加アプリケーションを導入するようにして、会計、プロジェクト管理、旅行計画、人事関連ソリューションなどが利用できるようになる。現在すでに50社以上がGoogle Apps向けアプリケーションを提供しているという。無償版のほか、1ユーザー当たり年額20〜40ドルなどの有償版のアプリケーションが販売されている。

 Marketplaceで提供するアプリケーションのホスト先はGoogle App Engine上でなくても構わず、すでに自社インフラなどで稼働中のWebアプリケーションを統合することもできる。LAMPサーバやWindows Azure、Amazon EC2なども利用できるだろう。

gam01.png Google Apps Marketplace

グーグルの取り分は20%

 Marketplaceへのアプリケーションの初期登録時には100ドルがかかるが、以降はいくつアプリケーションを登録してもコストはかからない。ただし、有償アプリではアプリケーション提供者が収益の80%、グーグルが20%を取るレベニューシェアとなる。

 Google Apps Marketplaceではアプリケーションの紹介ビデオや利用者によるレビュー、評価などの情報をもとにアプリケーションを選択できる。実際の導入は管理者が「Add it now」ボタンをクリックしてドメイン名を入れることで行う。既存Google Appsのアプリケーションとの連携では、どのデータにアクセスかを明示的に許可することで利用を開始する。アプリケーションからGoogle Appsへのデータアクセス時にはOAuthを使う。アプリケーション作成者はマーケット登録時に、どのデータを読み書きするかを明示するマニフェストファイルを添付する。

 Google Appsユーザーは、ほかのGoogle Appsのアプリケーション同様にGmailの画面などから「その他」のドロップダウンメニューからアクセスすることができる。また、Google Appsと連携することで、シングル・サイン・オン環境を実現できる。

 ISVはオープンなAPIを使ってGoogle Appsと統合したアプリケーションを提供できる。現在Googl Appsと連携するAPIとしては、

  • シングルサインオン(OpenID)
  • Universal Navigation(Gmailなどの上に出るメニュー)
  • Calendar API
  • Contacts API
  • Doclist API
  • Docs API
  • Gmail Inbox API
  • Provisioning API
  • Sites API
  • Talk API
  • Gmail Sidebar Gadgets
  • Sites Gadgets

などが利用できる。このほかにも、アプリケーションのライセンス状態を管理できるLicensing APIも“Labs”の機能として利用可能のようだ。

 例えば、すでに公開されているアプリのManymoonは企業向けのコラボツールで、タスクやプロジェクトの管理ができる。タスクを新規作成し、これに担当者(参加者)やドキュメントを割り当てて共同作業ができる。担当者の割り当て時にはContacts APIを使って、動的にアドレスや名前を補完できるほか、ドキュメントはGoogle DocsやSpreadsheetsが使える。プロジェクトのタイムラインはGoogle Calendarと同期する、といった具合だ。

先行するSalesforce.comと微妙に異なるモデル

 Google Apps Marketplaceの提供は、これまで同社がGoogle AppsやOpenSocialで培ってきたオープンなAPIの周辺にできつつあったエコシステムにおいて、アプリケーション作成者に一気にマネタイズまで含めたマーケットをワンストップで提供可能とする大きな一手だ。

 法人向けのアプリケーションマーケットではSalesforce.comが提供するappexchangeが先行している。この意味では2大クラウドベンダがPaaS領域でぶつかることになるが、両者には以下のような違いがありそうだ。

  • appexchangeはAPEX(Javaライクな独自言語)を利用。Google Apps MarketplaceはGoogle AppEngine上ならJVM上の言語かPython、それ以外のホスティングサービスを利用すれば任意の言語、フレームワークが選べる
  • OAuthやOpenIDの採用などGoogle Apps Marketplaceのほうが既存のWebサービスとのマッシュアップが容易
  • Salesforce.comはCRM利用を中心にスタートしているため、appexchange上のアプリケーションも、CRMに付加価値を提供するタイプのものが多いが、Google Apps Marketplaceではそうした特定の方向性はない
  • Salesforce.comがPaaSというジャンルを切り開き、自社クラウドで完結する開発環境や実行環境を提供しているのに対して、グーグルは自社クラウド(Google AppEngine、Google Apps)だけでなく、より分散したWeb上のサービスを連携させて使うことを前提にしている。

 これまでにも、公開されているAPIを使ってアプリケーションを提供する例はあったが、Google Apps Marketplaceの提供でエコシステムが活性化するかどうか注目だ。グーグルによれば、Google Appsは過去3年間で200万以上の組織が採用し、2500万人のユーザーがいるという。

(@IT 西村賢)

情報をお寄せください:

Java Agile フォーラム 新着記事

キャリアアップ

- PR -

注目のテーマ

- PR -
ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

プログラマティック広告はどう変化? 米国レポートから見える「今後の動向」
CTVとプライベートマーケットプレイスへの広告支出のシフトにより、米広告業界ではプログ...

「顧客体験」の重要性高まる 2024年「CX」関連の人気記事TOP10を紹介
今回の記事では、2024年「ITmedia ビジネスオンライン CX Experts」のアクセスランキング...

SNSの情報がアルゴリズムで最適化されていることを「知らない」が6割超 年代別では?
ロイヤリティ マーケティングは、10〜60代のSNS利用者を対象に、SNS情報の信用度に関する...