OSSでミドルウェア・ポートフォリオの充実

ヴイエムウェア、KVSのRedis開発者を雇い入れ

2010/03/16

 米ヴイエムウェアは3月15日、オープンソースとして開発されているKVSの一種「Redis」の創始者で主要開発者のSalvatore Sanfilippo氏が同社のエンジニアリングチームに加わったとブログで明らかにした。Redisは2009年2月に公開された比較的新しいソフトウェアで、memcachedやTokyo Cabinet、Cassandra、CouchDBなど“NoSQL”で総称されるデータストアのためのインフラソフトウェアの一種だ。現在の最新版はバージョン1.2.5。

 Redisには以下の特徴がある。

  • インメモリでデータを保持するため読み書きが高速
  • メモリ上のデータは一定イベント回数後もしくは一定時間の後にディスクに書き出す永続化対応
  • 単なるkey-value型ではなく、リスト型、集合型、順序付き集合型などのデータ構造が扱え、サーバ側でコレクションに対するpush/pop、コレクション同士のunion/intersection、数値のincr、decrなどの操作がアトミックに行える
  • ANSI Cで書かれていて、LinuxやMac OS Xを含む多くのPOSIXシステムでコンパイルできる
  • 1対Nのマスター・スレーブ構成に対応し、読み出しについてはスケールアウトが容易
  • Ruby、Python、PHP、Erlang、Perl、Java、Scala、C#、C、JavaScriptなど主要言語をサポート
  • Github、Craigslist、The Gardian、Engine Yardなどで利用実績がある

 RedisはもともとWebアプリケーションのスケーラビリティの問題を解決するためにSanfilippo氏が個人的に開始したプロジェクトだったが、コミュニティが成長し、ビジネス利用が進むにつれて開発継続が困難になっていたという。Sanfilippo氏はRedisの開発に注力したいと希望していたが、コンサルティングやカスタマイズなどサービス面など、現実にRedisのユーザーが求めるものが欠けていたという。

 このため、当初は有償の関連ツールを提供することでビジネスモデルを構築しようとしたが、その見通しは明るいものではなく、そうこうしているうちにRedisのフルタイム開発を条件に数社から雇用のオファーがあったという。数社の中からヴイエムウェアを選んだ理由は、Redisを完全にオープンソースのプロジェクトにしておくと同社が確約したばかりか、むしろ関連ツールをオープンソースとすることを同社が提案するなど理解を示したからだという。Sanfilippo氏はイタリアの南部のシチリア島に住んでいるが、住所や仕事のスタイルはそのままに、Redisをフルタイムで開発するという好条件だったようだ。

 一方、ヴイエムウェアから見てみれば、RedisのようなKVSをミドルウェアのポートフォリオに加えておくことは重要な意味を持つだろう。クラウド・サービス部門のDerek Collison氏はブログの中で多くの顧客がRedisを使って速度上の大きなメリットを得ていると指摘。Redisはスナップショット的にディスクにデータを書き出し、再起動時に読み込むということができるため、中にはRDBMSを完全にRedisで置き換える事例もあるという。

 クラウド時代にはRDBMSに加え、NoSQLで総称される各種のデータストア・アクセス技術の併用が進むだろう。ヴイエムウェアがKVSのRedisを傘下に収めるのには、こうしたトレンドが背後にある。

(@IT 西村賢)

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