きめ細かな自動階層化管理機能を投入
3PAR、新機能で「今後ファイバチャネル・ストレージはニッチに」
2010/03/18
ストレージベンダの3PARは3月16日、同社のストレージ製品「InServ」用のSSD、および自律的なデータ配置最適化機能を発表した。「3PARのみならず、ストレージ業界全体にとって今年最大の発表」と米3PARのインターナショナルセールス担当副社長 ティム・ピッチャー(Tim Pitcher)氏は表現する。新ソフトウェア機能はコスト効率向上に加え、少ない管理負荷で大規模ストレージ環境のサービスレベル管理を可能にすることから、クラウド的なストレージ運用を促進する効果があるといえそうだ。
今回の発表は、「高価なファイバチャネル・ハードディスクドライブの必要性を減らすことで、ストレージのコストパフォーマンスを向上する」という、同社の以前からの戦略の延長線上にある。3PARは多数のSATAドライブにデータをストライプ化することで、ファイバチャネル/SASドライブが必要といわれてきたアプリケーションにも対応できるとし、SATAドライブの利用を推進してきた。「3PARのストレージでは、SATAドライブの利用が50%を占めている」と、米3PAR マーケティング担当副社長 クレイグ・ヌネス(Craig Nunes)氏は話す。
InServ用にSSDを提供することで、高度なIOPS(1秒当たりのI/O数)要件に対応できる。この結果、非常に高いパフォーマンスを求める場合はSSD、低コストを求める場合にはSATAドライブという使い分けができるようになる。「将来、ファイバチャネルドライブはニッチになる」(ヌネス氏)。3PARは同社のストレージでファイバチャネルを今後もサポートしていくが、企業の社内クラウドにしても、クラウドサービスにしても、ファイバチャネル・ストレージの利用が今後大きく広がることはないだろうという。
3PARが今年第2四半期に投入するのはSTECの「Mach8IOPS」というSLC型SSD。その50GBモデルを8基、RAID 5(従って実効容量は350GB)で利用する構成の場合、価格は約400万円の予定。数多くの小容量SSDを並列化して使うことで、少数の大容量SSDを使う場合よりもパフォーマンスを高めることを狙っている。
自動階層化管理機能をきめ細かな単位で実現
SSDを利用するにしろ、既存のファイバチャネル・ドライブを今後も併用し続けるにしろ、コストの高い記憶媒体は必要な場合だけに限定して使えるのが理想だ。そこで3PARは今回、ストレージ階層にまたがるデータ自動再配置機能「3PAR Adaptive Optimization(AO)」を発表した(同日受注開始)。EMCのFASTなど、自動階層化管理機能は最近、他社からも発表され始めている。しかしそれらは記憶媒体間のデータの自動移動をボリューム単位で行うもので、3PARは2005年にすでにこのレベルの自動階層化管理機能を実装しているとヌネス氏は説明する。AOではデータの移動をボリューム単位でなく、3PARが「リージョン」と呼ぶ小データブロック単位で行うのが特徴だ。これにより、きめ細かなデータ配置の最適化が実現する。新機能は、ストレージのコントローラ上で動作する新ソフトウェアに、同社の管理ソフト「3PAR System Reporter」を組み合わせて利用する。
使い方はこうだ。例えばSSD、ファイバチャネル・ドライブ、SATAドライブにまたがってボリュームを設定する。そしてIOPS密度(どのレベルのIOPSがどう集中するか)およびサンプリング時間に基づくこれら媒体間のデータ移動をポリシーとして設定する(単一のポリシーを複数のボリュームに適用することもできる)。すると、設定した条件が満たされた場合にリージョン単位でデータがストレージ階層間を自動的に移動する。つまり例えば特定ボリュームのなかでもアクセスの集中しているリージョンだけが、ファイバチャネルやSSDと、上の階層に移動する。例えばデータベースのインデックスとデータを同じボリューム上に置き、このボリュームにAOを設定すると、アクセスの集中するインデックスだけがSSDに自動的に移動するなどが可能。「管理者が面倒な配置設定を行う必要がない」(ヌネス氏)。
条件が満たされてからデータ移動までにどれくらい待つかは別途設定可能。データ移動によるパフォーマンスへの影響はほとんどないというが、夜間や週末に限定するなどの設定もできる。
こうしたポリシー設定は複雑な作業になりがちだ。そこで3PARでは「QoSグラディエント」と呼ぶ簡易設定機能を提供する。この機能では「パフォーマンス重視」「コスト重視」「バランス重視」の3つの選択肢から選ぶだけで、各ボリュームのポリシーを設定できるようになっている。
ヌネス氏は、一般企業のみならず、クラウドサービス事業者にとってもこの機能は非常に有益だと話す。ストレージインフラのコストを極力抑えながら、サービスレベルを確保することができるからだ。データ配置の自動化は、大規模なストレージインフラにおける管理コストの低減にも寄与するという。
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