ホスティング/クラウドサービスにも注力

デルはPerot Systemsの統合でフルソリューション企業に進化

2010/03/26

 「われわれは、デルを製品オンリーの会社から、フル・ソリューションの提供企業に変身させようとしている」。デルのグローバル・データセンター・コンサルティング・グループ・ディレクター、ティム・ウェブ(Tim Webb)氏は@ITの取材にこう答えた。

 米デルは昨年11月に米Perot Systemsの買収を完了し、これにより、デルのサービス事業は大きく広がることになった。米デルのサービス部門の今後をウェブ氏に聞いた。

 Perotの統合によって、年間売上80億ドルのサービス部門「Dell Services」が誕生した。デルが2月に発表した2010年度の年間売上は530億ドルなので、80億ドルでは全社売上の2割に満たないことになる。しかし42000人という陣容は、デル社内で最大の規模で、10大ITサービスベンダの一角を占めることになるという。

 デルはこれまでもサポートやITコンサルティングのサービスを展開してきた。その点では「製品オンリー」の会社だったというのはおそらく言い過ぎだ。しかし、Perotの統合により、サービス売上はこれまでの2倍近くに拡大し、さらにサービスの幅も大きく広がるとウェブ氏は説明する。「Perotの買収によって、マネージドサービス、クラウドサービス、アプリケーションサービス、ヘルスケアや保険分野のビジネスプロセスサービス、そしてビジネスコンサルティングサービスを獲得できた」。これらのサービスを、北米だけでなく世界中に展開していきたいという。

「inside out」のITコンサルティングとは

 ウェブ氏が直接の指揮をとるデータセンター最適化コンサルティングサービスで事業では、競合他社と逆のやり方をしているという。

dell01.jpg データセンター最適化は包括的なサービス

 「デルでユニークなのは『inside out』のアプローチだ。他社の場合、どれくらいのスペースやエネルギー密度が必要かを教えてくれればデータセンターを設計するという方法が多い。われわれは、どうすれば最大限の効率化を図ってビジネスニーズに適合できるかを考えるのが重要だと思っている。それに基づいて、電力や冷却の点から効率的な施設を設計する」

 「顧客はなによりもデータセンター設備自体のコストと運用のコストを非常に気にしている。同時に、変化するビジネス要件に対応するための俊敏性と拡張性を求めている。景気の悪い状況下では、場合によってはITを縮小できる用意も必要だ。エネルギー効率や災害などのリスクへの対処も求められる」

 デルのデータセンター最適化コンサルティングサービスでは、「コスト」「俊敏性」「拡張性」「効率」「リスク」の5つの側面で、現在の状況と12〜36ヶ月後にどうありたいかを考えることから始めるという。

dell02.jpg 5つの側面で、現状とあるべき姿を考える

 「最初に現在のインフラ維持に掛かっているコストと新しいことのための投資にどれくらい金を使えているかを比較する。典型的にはメンテナンスで80%程度掛かっているが、これを50%からそれ以下にもっていくことを目的とする」(ウェブ氏)。

 実際の最適化では、サーバ機やストレージなどの個々のコンポーネントの使い方(例えばストレージの階層化)から、計算流体力学を用いた施設全体の再設計までを行う。最適化を支援するツールを大規模顧客とともに開発し、これをほかの顧客に提供しているという。自動的に資産をディスカバリ・分析し、As Isの姿を迅速に把握できる「Measureable Rapid Insight」、仮想化環境の利用や運用のためのポータルやプロセス自動化を実現する「streamlined optimization」、1ユニット500〜1500台の仮想化環境をデルがパッケージとして構築し、これを顧客に送る「vPOD」などがあるという。

 デルは一般企業のほかに、「ハイパースケール・コンピューティング顧客」と同社が呼ぶユーザーに対するコンサルティングやソリューションの提供にも力を入れている。ハイパースケール・コンピューティング顧客とは、大規模なWeb 2.0/インターネット企業だ。グーグル、マイクロソフト、アマゾン、eBay、中国ではテンセント、バイドゥ、アリババなどを助けているという。

 こうした環境は、少数のアプリケーションを大規模に運用している点が、一般企業とは全く異なる。多くの場合、アプリケーションレイヤで冗長性や信頼性を確保しているため、ハードウェアとしてはこの部分を省いた特殊な機器を使って、密度を高められる。「従って当社としては、データセンターの効率化に非常に力を入れている。施設の設計や、コンピュータ/ストレージの設計で手助けできる」。

今後はクラウドサービスにも注力

 ウェブ氏は、Perotの統合によって、デル自体のデータセンター/ホスティング機能を使ったデータセンターの運用代行や、サードパーティ業者へのデータセンター移行サービスが大規模に展開できるようになったという。

 「ただし、従来型のアウトソーシングをやるつもりはない。顧客の効率化を助けるために、これにアウトソーシングが必要なら、その機能を提供できるようになったということだ。デルの運用と製品の効率を通じ、他社より大幅に安く効率的な方法を提供するのが最終的な目的だ」

 デルは昨年末、アジア太平洋地域でクライアントPC遠隔管理サービスと電子メールの災害復旧(DR)サービスを提供開始した。これらは英語版だが、今年中に日本語版も提供の予定。こうした機能特化型のクラウドサービスも、今後増やしていきたいとしている。

(@IT 三木泉)

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