“暗黒時代”後の新製品群が鍵に
Microsoftはコンシューマーを呼び戻せるか
2010/04/06
Microsoftが“暗黒時代”以後に生み出したBingやAzure、Project Natalといった製品の成否が、同社の将来を占う鍵であるとアナリストはみている。
「Windows Phone 7」や「Project Natal」など米Microsoftの数々の新製品は、コンシューマー市場での同社のシェア回復に貢献する可能性がある――米調査会社Jefferiesは最近の報告書でそう指摘する。さらに同報告書によれば、これらの製品は将来の収益源になる可能性があるだけでなく、2004年から2007年までのMicrosoftの“暗黒時代”以後の研究開発投資の成果であるという意味でも重要であるという。
「Microsoftは昔から俊足の追跡者として成功してきたが、独禁法訴訟を抱えていた時代は研究開発投資が落ち込み、製品投入サイクルが一部停滞した」とJefferiesのアナリスト、キャサリン・エグバート氏は4月5日付のリサーチノートに記している。「Bing、Windows Azure、WP7(Windows Phone 7)、Natalは独禁法時代後の最初の製品群だ。これらの製品の成功が、Microsoftがコンシューマーの想像力を再び刺激できるかどうかの鍵になるだろう」
エグバート氏によると、2004年から2007年までの期間は“Microsoftの暗黒時代”だったという。「この時期には独禁法訴訟のせいで研究開発投資が大幅に減少するとともに、巨額の制裁金を科せられ、経営陣も交代した」と指摘する。この期間中の売上高に占める研究開発投資の割合は15%以下に落ち込み、その間に投入された新製品(Windows Vista、Zune、Windows Live)は話題性においても市場シェアにおいても足掛かりを確保することができなかった。一方、米Googleや米Apple、そして米FacebookやカナダのResearch In Motion(RIM)といった企業は、それぞれの市場セグメントでかなりの市場シェアを確保するのに成功した。
「欧州連合などによる訴訟が、開発を妨げる大きな要因となったと考えるのが妥当だと思われる。こういった訴訟は研究開発から多くのリソースを奪い、同社のビジネス戦略の一部見直しを余儀なくさせた」とエグバート氏は記している。「しかしAzure、Windows Phone 7、Natalなどを見れば、Microsoftは俊足の追跡者という本来の姿に戻ったようだ」
Microsoftに対する欧州連合の独禁法訴訟が2008年初めに決着したことも、「非デスクトップベースのサービス」への投資拡大につながった。その直接的な成果が、Natal、Azure、Office 2010、Bing、Windows Phone 7、Xbox 360といった製品だ。
Microsoftによると、Windows 7は昨年10月のリリース以来、約9000万本売れたが、「こういった新製品の多くは数年間、収益改善に大きく影響することはないだろう」とエグバート氏は指摘する。しかし同氏の推定によると、これらの新製品はMicrosoftのターゲット市場、すなわち特定の製品あるいはサービスの潜在市場全体の規模を53%拡大するという。とはいえ、Microsoftが“暗黒時代”にGoogleなどの競合企業に奪われた市場シェアを取り戻せるのかという疑問は残る。
「同社が生き残るためには、イノベーション、そして俊足の追跡者という伝統的戦略に頼るしかない」とエグバート氏は結論付ける。「同社には守らねばならない市場シェアがたくさんあり、競争相手の防御は強固だ。訴訟後のこういった一連の新製品がコンシューマーのイマジネーションを再び喚起し、アプリケーション開発者の関心を同社のプラットフォームに引きつけるのに貢献するかどうかは、まだ分からない」
Project Natalなどの取り組み以外にも、Microsoftは米Fordなどの企業と新技術の開発を進めている。両社は3月31日、ニューヨーク国際自動車ショウにおいて、Fordの将来の電気自動車に「Microsoft Hohm」が採用されると発表した。Hohmはクラウドベースの電力管理ツールで、自動車に充電するのに最適な時間と場所を判断するのに利用されるという。
またMicrosoftは、企業市場でのWindows 7普及拡大に向けた取り組みも進めている。コンシューマー市場と比べると、企業市場では同OSの普及が遅れている。Microsoftは3月30日、「Windows 7 Enterprise Trial」プログラムを2010 年12月31日まで延長すると発表した。このプログラムでは同OSを90日間試用することができる。
しかしMicrosoftは、本業の妨げになる恐れがある係争をまだ抱えている。米連邦控訴裁判所は4月1日、同社がカナダの小規模企業i4iと争っている知的財産訴訟で、複数判事による再審理を求めたMicrosoftの申し立てを却下した。i4iでは、Microsoft Word 2003と2007が自社のカスタムXML関連の特許を侵害していると主張している。この訴訟では既に、Microsoftに対して約3億ドルの賠償を命じる判決が出ているが、Microsoftはこれを不服として争っている。同社はそのほかにも、特許侵害をめぐって米VirnetXなど数社の小規模企業と係争中だ。
(eWEEK Nicholas Kolakowski)
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