エンジニアの視点で見るSQL Server 2008 R2
BIでエンジニアもハッピーに? SQL Server新機能の狙いとは
2010/04/06
Business Intelligence(BI)が注目されている。企業内のデータを縦横にクロス集計し、経営陣が判断できる形にする――マイクロソフトが5月にリリースするSQL Server 2008 R2(以下、2008 R2)でも、目玉機能としてBIをアピールしている。
では、エンジニアはBIをどう見るべきだろうか。マイクロソフトがユーザー向けにアピールしているBIの機能を「エンジニアの視点」で見ても、実は大きなメリットがある。その点を、マイクロソフトの製品プロダクトマネージャに聞いてみた。
エンジニアとユーザーに「楽」を
「時間をかけてお客様の話を聞いて、キューブを設計するのもエンジニアの仕事ですが、正直、これはあまり楽しい仕事じゃないですよね。ならば、その部分はお客様自身ができるよう、セルフサービスとして提供するのがいいのではないでしょうか」。エンジニア視点でのBIのとらえ方を簡潔に話すのは、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 アプリケーションプラットフォーム製品部の北川剛氏だ。そして北川氏はこう続ける――「エンジニアは、楽しい仕事をしたいですよね」。
システムに「データベース」は必須のコンポーネントだ。エンジニアはまずデータモデルを設計し、その上にシステムを構築していく。エンジニアが見る業務の姿は「データモデル」といってもいいだろう。しかし、実際の業務の場、とりわけBIで必要なのは、そのデータモデルの中に入っている「データ」である。システムエンジニアがBIにかかわろうとすると、中身のデータを熟知しなければならない。
「エンジニアは、データの加工方法を知っています。でもユーザーにはデータの加工方法が分からない。その状態で、エンジニアが“BIの枠”を作っていくのはかなり大変だと思います。その枠をユーザー自身で作れるとしたら、当たり前ですが満足できるものが作れます。2008 R2ではこの部分を、Excelというなじみ深いインターフェイスで実現したので、セルフサービスでできてしまいます。エンジニアはBI構築部分には何もタッチしなくて済むので、その分時間が空く。その時間こそ、クリエイティブで楽しい仕事をするためのものです」
ユーザーにとってもこれは福音だと語るのは、同社のアプリケーションプラットフォーム製品部の斎藤泰行氏だ。「ビジネスマンであるユーザーから見ると、BIという機能は大変魅力的です。しかし、従来はBIを実現するためのステップが分かりませんでした。相談する相手がいないんです」と斎藤氏は述べる。「だからエンドユーザーにBIが浸透しなかった。そこに日本におけるBIの限界点があったのです」。
「ほとんどの職場では、生きたデータは個人のExcelシートで持っていることが多いでしょう。そうなると、普通のシステムエンジニアならば『では、共通フォーマットを用意して、特定の場所にCSVファイルを置いたら自動で取り込みする機能を……』というような提案になるでしょう。これではシステム作成に数カ月単位の時間が必要で、スピード感が失われてしまいます。データの持ち主はビジネスユーザーであり、エンジニアではないので、BIはエンジニアからは歩み寄りにくい分野なのです。これをエンジニアが考えてしまうと、ビジネスユーザーがどこかであきらめなくてはならないシステムになりがちです」(斎藤氏)。
では、BIでエンジニアの存在は不要だろうか? 「SQL Serverのダッシュボードでは、ユーザーが作成したBIのシート(PowerPivotワークブック)の利用状況が視覚的に表示できます。どのくらいのメモリを使っているのか、使用頻度はどうかなどが見られるのです。ユーザーが作った特定のシートが多用されているようであれば、エンジニアがそれをシステム化し、さらに使いやすくできるよう提案をするべきです。そこには稼働実績がある“仕様”があるわけですので、ユーザーにとってはさらに利便性やパフォーマンスが向上し、エンジニアはユーザーの望みそのものをシステム化できるわけです」と、北川氏はエンジニアの役割を述べた。
RDBMSという「資産」を守る仕組みを
データベースエンジンを取り巻く環境に変化が現れつつある。クラウドを見据えたKey-Valueストア(KVS)など、SQLを廃したNoSQL(Not Only SQL)という概念も登場している。ビジネスに携わるエンジニアはこの流れをどうとらえるべきであろうか。
北川氏は「NoSQLが注目を集めているのは間違いないですが、アプリケーションのプラットフォームとしては、いまもRDBMSの仕組みは汎用性、実効性の面で無視はできません」と述べる。企業にとってはすでにプログラム資産としてのRDBMSが稼働しており、これをメンテナンスする作業が存在している。
しかし、クラウドの利点である「必要なときに必要なリソースを迅速に手に入れる」というメリットは無視できない。同社のクラウドサービス上で提供するSQL Azureは、既存の資産をそのまま活用しつつ、クラウドの利点をも取り込むためのものだ。
「ビジネスを継続させるという点で、SQL Azureは重要です。しかしクラウドだからといって別の仕組みを提供するわけにはいきません。もし自分のためのシステムを、自分たちだけのために作るのであれば独自のプラットフォームや独自の方式を取れます。しかし、私たちにはユーザーの皆さまと、パートナーの皆さまがいる。継続性があり、きっちりと移行できる仕組みをSQL Azureで提供できた」(北川氏)
エンジニアにもアピールできるSQL Serverに
斎藤氏は、これまでのSQL Serverの見られ方を振り返る。「正直にいうと、SQL Serverは『BI機能はいいね、でも、データベースとしては微妙』と評価されることが多かったと思います。それは単にイメージであり、ほかのデータベースを選定するための言い訳でしかありません。ビジネスユーザーの心をつかむためには機能の豊富さがポイントになると思いますが、エンジニアの心をつかむことも重要です。このリリースでは、スレッド数の上限もCPUの進化に合わせて256になりました。圧縮も問題ありません。技術的にも大変素晴らしいリリース。新しいデータベースを試してみたいというエンジニアにはいいタイミングにリリースできました」(斎藤氏)
「機能の比較表だと、例えば「行ロック機能――SQL Server:×」となっていることが多いでしょう。エンジニアの視点では、『バツが多いから別のRDBMSを使おう』ではなく、本当にそれが必要なのか、○だったとしても必要十分な機能なのかを判断しなくてはなりません。そのためには、エンジニアの皆さんに機能の詳細を知っていただく必要があります。そして、その判断に足る情報を積極的に出さなくてはならないと思っています」(北川氏)
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