日立システムがサポートサービスを提供開始

日本からも使いやすくなったRightScaleのメリットとは

2010/04/07

 米RightScaleの日本におけるサポートサービスを、日立システムアンドサービスが4月1日に提供開始した。国内でも一部のAmazon EC2ユーザーの間で知られているRightScaleだが、同社と提携して国内展開するのは同社が初めて。日立システムに、新サービスの目的と内容を聞いた。

 RightScaleは、Amazon EC2などのIaaSサービスのフロントエンドとして、クラウド環境の構築や監視、自動スケーリング、移行などが行えるサービス。Amazon EC2のみのためのサービスと誤解している人もいるようだが、そうではない。Eucalyptusによるプライベートクラウド環境やRackspace Cloud(Amazon EC2と競合するIaaSサービス)、VMwareを使ったIaaSサービス事業者の一部にも対応しており、Windows Azureへの対応も予定しているという。ただし、日本国内のRightScale利用者のほとんどは、現在のところAmazon EC2のフロントエンドとして使うことになるだろうと日立システムでは話している。

 RightScaleサービスの中核には「サーバテンプレート」があると、プラットフォームソリューション部 アプリケーションプラットフォームソリューション部 技師 森田貴司氏は話す。サーバテンプレートはスクリプトの集合体のようなもので、クラウド上で作成するOSのみの仮想マシンインスタンスに対し、この仮想マシンの起動時に、「RightScripts」と呼ばれるスクリプトで、ツールやアプリケーションのインストールや設定を実行する。RightScaleサービスでは、アプリケーションや用途に応じた多数のサーバテンプレートが用意されている。これらから選択するだけでシステムの展開ができるため、「Amazon EC2でスクラッチからつくるよりはるかに早い」とプラットフォームソリューション部 アプリケーションプラットフォームソリューション部 主任技師 柳瀬康二氏はいう。

 カスタマイズされたサーバテンプレートやスクリプトはRightScaleサービスに保存できる。保存したサーバテンプレートを使って、同一構成の仮想マシンを1つあるいは複数生成するなどが即座にできる。これはテストやソフトウェアアップデートで便利だ。複数の仮想マシンのためのスクリプトを一括して「デプロイメント」として管理することも可能。また、定期的なバックアップなど、仮想マシンの稼働中にスクリプトを自動適用することもできる。

 RightScaleサービスで目立つ特徴として、自動的なスケーリング(仮想マシンの増減)がある。このサービスにはサーバの監視とレポートを実行する機能があるが、自動スケーリングはこの機能をサーバテンプレートと連係させることで実現できる。すなわち、各サーバの負荷が一定レベルを超えると、自動的にクラウドサービス上で新たな仮想インスタンスを立ち上げて負荷を分散するような設定が可能だ。

rightscale01.jpg RightScaleではサーバインスタンスのCPU負荷などを監視し、スクリプトを自動適用するなどができる

 サーバテンプレートは障害対策にも生かせる。例えば、Amazon EC2で利用中のAvailability Zoneがダウンした場合、そのZoneの復旧を待たずに別のzoneに同一構成の仮想サーバ群を立ち上げ、こちらにフェイルオーバすることができる。同様な方法で、例えばAmazon EC2で動かしていたサーバを、(RightScaleが対応する)ほかのクラウドサービスに即座に移行することもできる。

 日立システムでは、このRightScaleサービスを国内で再販する「RightScaleサポートサービス」を、4月1日に提供開始した。RightScaleサービスの利用に関するユーザーからの問い合わせを日立システムが日本語で受け付け、必要に応じてRightScaleに問い合わせるなどして対応する。当初は平日9〜17時の間に限定するが、最終的には24時間年中無休でのサービス提供を目指す。

 日立システムは、RightScaleサービス利用料に同社のサポートサービス利用料を含めた月額料金を、請求書ベースで請求する。サービスの最低月額料金は、Amazon EC2のスモールインスタンス相当で月間5000時間までが8万円。これはおおよそ、7インスタンスを無停止で稼働するケースに相当する。

 Amazon Web Servicesの利用料金については、現状ではユーザー企業が別途クレジットカードで支払うことになる。日立システムでは、Amazon Web Servicesと販売代理店契約を結んでおり、今後請求書によってすべてを一括請求できるようにしていきたいとしている。

 日立システムでは、今年度中にオプションとして、コンサルティングサービスやトレーニングサービスも提供開始するという。このサービスのみで利益を上げるというよりも、同社のシステムインテグレータとしてのソリューションをつくるための土台として活用していきたいとしている。顧客のシステムに合ったサーバテンプレートの作成をはじめとして、クラウドサービスへのシステム展開を支援していくという。

(@IT 三木泉)

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