初年度無償キャンペーンも実施
MSとシトリックスがデスクトップ仮想化で共同作戦、ヴイエムウェア切り崩し狙う
2010/04/26
マイクロソフトとシトリックス・システムズ・ジャパンは4月26日、デスクトップ仮想化製品の共同推進に関し、ヴイエムウェアのデスクトップ仮想化製品ユーザーに対する無償乗り換えキャンペーンを含む、積極的な具体策を発表した。
2社はシトリックスの「XenDesktop VDI Edition」とマイクロソフトの「Microsoft Virtual Desktop Infrastructure Standard Suite」の組み合わせについて2つの販売プロモーションを実施。1つは「VMware View」ユーザーを直接ターゲットとした「VMware VDIユーザー向け無償プログラム」で、2製品のライセンスを最大500ユーザーまで無償提供するというアグレッシブな取り組みだ(ただし無償なのは1年間のみ)。もう1つは新たにデスクトップ仮想化を始めるユーザー企業向けの「VDIクイックスタート」で、最大250ユーザーまで、Microsoft Virtual Desktop Infrastructure Standard Suiteは最大約70%、XenDesktop VDI Editionは最大約50%の値引きをするという(こちらも1年間のみ)。2つのプログラムはどちらも2010年12月31日までの期間限定だ。また、対象はどちらもMicrosoft Core CAL/ECALを利用するユーザー企業に限定される。
Microsoft Virtual Desktop Infrastructureとは、マイクロソフトのデスクトップ仮想化製品をスイート化したもの。シトリックスでいえばXenDesktopに当たり、System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)やSystem Center Configuration Manager(SCCM)などの管理製品、接続管理やアプリケーション管理のWindows Server 2008 R2 Remote Desktop Services、Application Virtualization(App-V)といった製品の組み合わせとして実現されている。
2社の製品のすみ分けはどうなる
シトリックスとマイクロソフトは、デスクトップ仮想化やアプリケーション仮想化で、製品が競合する部分も多い。だが、今回の組み合わせでは、XenDesktopはVDI Edition、つまりXenApp(ターミナルサービスやアプリケーションストリーミングの機能を持つ)を含まず、デスクトップ仮想化に特化したバージョンが使われている。一方Microsoft Virtual Desktop Infrastructureについては、アプリケーションストリーミングの機能(App-V:Microsoft Application Vertualization)や管理ツールを含むStandard Suiteを採用している(すなわち、ターミナルサービスなどを備えたPremium Suiteではない)。
少なくとも今回の組み合わせでは、接続プロトコル/接続管理、およびデスクトップ仮想化管理の仕組みについてはシトリックス製品を用い、サーバ仮想化ソフトウェアやアプリケーションストリーミングについてはマイクロソフト製品を用いるのが推奨構成となる。マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏は、「マイクロソフトの場合、1つの仮想イメージ当たりクライアント1台をつなげるのがいまの実装。XenDesktopでは、(複数クライアントのための)イメージを1つに絞れる。これはXenDesktopを使わないとできない。また、ターミナルサービスの時代からシトリックスは接続管理に一日の長がある。また、一方、(App-Vの基になった)SoftGridはこの分野で長い歴史があり、枯れた製品。アプリケーション配信プラットフォームとしてはこれを使っていく」と説明した。
中川氏によると、XenDesktop VDI EditionとMicrosoft Virtual Desktop Infrastructure Standard Suiteの組み合わせは、値引きせずとも他社(ヴイエムウェア)より大幅に安い1台1年当たり8856円(参考価格)。さらに今回のVDIクイックスタートの適用で3916円と、さらに大きく差が広がるとしている(ただし2社が示した図はVMware Viewのライセンスが同時接続数ベースであるのに対し、マイクロソフトとシトリックスのソリューションは端末台数ベースなので、単純には比較できない)。3916円のうち、マイクロソフトのソフトウェア分が766円で、シトリックスが3150円だ。マイクロソフト分がシトリックス分に比べて非常に少なくも見える。しかしマイクロソフトとしては、OSの仮想デスクトップアクセスライセンス(VECDと呼ばれてきたライセンス。後述する)の収入が別途得られるため、(どのベンダの製品を使ったものであっても)デスクトップ仮想化が普及すれば売り上げが増えることを期待できる。
マイクロソフトとシトリックスは、今回のキャンペーンをきっかけとして本格的な共同販売活動を始める。キャンペーンの対象は前述のとおりMicrosoft Core CAL/E CALを使う大規模ユーザー企業であり、こうした企業とはマイクロソフトの営業担当者が直接やり取りしているため、全社に対して今回のソリューションを紹介するという。シトリックス側は、「マイクロソフトの営業やパートナーの活動を後押しする、あるいは一緒に攻める体制を(整備し)始めている」(シトリックス マーケティング本部担当部長 竹内裕治氏)という。
デスクトップ仮想化のライセンスを簡素化して値下げ
マイクロソフトはまた、デスクトップ仮想化におけるWindows OS関連のライセンス変更も発表した。
デスクトップ仮想化では、Windows PC端末から利用する場合にも、仮想デスクトップへのアクセスライセンスが追加的に必要とされてきた。これが「Windows Virtual Enterprise Contralized Desktop」(Windows VECD)だ。従来、ソフトウェアアシュアランス(SA)対象のWindows PCは米ドルでは23ドル、それ以外の端末は110ドルとなっていた。米マイクロソフトは3月、7月1日よりSA対象のWindows PCについては撤廃し、それ以外の端末については100ドルに値下げするとともにVECDをVDA(Virtual Desktop Access)に名称変更すると発表した。
日本法人も今回、上記と同じ趣旨の発表を行った。この発表により、多少なりともデスクトップの仮想化にかかわるライセンスのシンプル化と値下げが実現した。
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