API利用でAmazon EC2/S3やOSSとも連携
mCloud:国内iDC事業者をPaaS提供者に変えるアプライアンス
2010/05/11
モーフ・ラボはクラウド環境の構築、管理を自動化するアプライアンス製品、「mCloud Controller 2.1」を5月12日から主にパートナー向けに販売開始すると発表した。自前で仮想マシンプールを用意するか、Amazon EC2/S3(AWS)といったパブリッククラウドを利用することで、このインフラ上にRuby on Rails、Java、PHPを使ったアプケーションを手軽にデプロイできる機能を持つクラウドサービスを提供できるようになる。GUI画面からアプリケーションサーバ、DBサーバなどの数と種類を“テンプレート”としてあらかじめ設定しておくことで、アプリ開発やデプロイに必要なシステムを素早く稼働できる。システム監視やスケーリング、HA構成やアプリの自動修復にも対応する。
mCloudは既存IaaSを、単なる仮想マシンの寄せ集めではなく、有機的にサーバ同士が連携するPaaSに変えることができる、クラウドリソース管理のためのユニークなアプライアンスだ。もともとモーフ・ラボは、RightScaleと同様にAWS向けにサービスを提供してきたが、ビジネスモデルの比重を、アプライアンス提供によるエンタープライズ市場へと移しつつある。モーフ・ラボは米国、日本、オーストラリア、ドイツ、フィリピンなどに拠点を持つが、mCloudでは先行して日本市場に参入。まだ日本国内でAWSが立ち上がっていないことから、iDC事業者やSI業者に対してクラウドサービス提供を促すイネーブラーとなる路線を選択したようだ。日本市場ではアプライアンス提供によるパートナービジネスに注力し、既存の自社サービスは縮小していく。
mCloudはラックマウントサーバ2台で構成され、50から5000台以上のVMを管理できる製品で対象規模によって3製品をラインアップする。仮想化ソフトとしてVMware、Xen、KVMに対応する。Eucalyptus、OpenNebulaなどOSSでAmazon EC2互換のAPIを提供するクラウド構築のインフラソフトウェアを使うことで、プライベートクラウド、パブリッククラウドのどちらにもシームレスにアプリケーションのデプロイ先を変える柔軟な運用が可能になるという。開発・運用環境のシステム構築はGUIによるドラッグ&ドロップで、各種サーバやソフトウェアを選択する。バックアップ、サーバ同士のルーティング、モニタリングの設定は自動で行われるため、インフラ構築の専門知識がないアプリ開発者であっても利用できるという。実際のデプロイは、自動生成されるスクリプトにより、例えばRailsアプリであればCapistranoで書かれたスクリプトがmCloud Controllerで生成される。スクリプトを実行することでアプリケーションのコードは、プライベートクラウドなら対応するストレージ、AWSならAmazon S3にストアされ、VMが起動する形になる。
モーフ・ラボ 代表取締役社長の金野諭氏は、mCloudを利用するメリットとして、クラウド向けアプリのポータビリティを挙げる。GoogleやSalesforceに新規システム開発を展開するのは時期尚早と考えている企業や、セキュリティ指針も策定されていない企業なら、mCloudを使うことでプライベートクラウド上にアプリを構築し、段階的にAWSへと展開するといった拡張が可能だからだ。
今回リリースした新バージョンでは、iDC事業者がクラウド型サービスを始めたり、ISVがクラウド上にSaaSを構築しやすいように、ユーザー管理、課金、レポートなどの機能を強化。GUIの管理画面を用意した。現在10社以上がmCloudの技術検証を行っていて、今夏にも対応サービスがスタートする見込み。同社は向こう3年間で20億円の売り上げを計画しているという。
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