デスクトップ仮想化を補完
シトリックス、年内にクライアントPC用ハイパーバイザを正式リリースへ
2010/05/13
米シトリックス・システムズは米国時間5月12日、同日開幕したプライベート・カンファレンス「Citrix Synergy 2010」でクライアント・ハイバーバイザ「Citrix XenClient」の評価キット「XenClient Express」を、同日ダウンロード提供開始したと発表した。シトリックスはこれを、XenClientのリリース候補(RC)版と呼んでいる。年内に予定するXenDesktopの次期リリースにおける一機能としてXenClientを組み込む。
XenClientは、ユーザー端末上で動作するベアメタル・ハイパーバイザ。マイクロソフトがWindows 7でWindows XP mode用に搭載している「Windows Virtual PC」などのアプリケーション型仮想化ソフトウェアとは異なり、ハードウェア上で直接動作する。ベアメタル・ハイパーバイザ上で複数のOS(およびアプリケーション)を仮想マシンとして動かすことで、例えば従業員の業務用PC環境と、プライベート用PC環境を、あたかも別のPCであるかのように分離することができる。
これにより、企業は従業員に対し、会社支給のPCにおけるプライベート用の仮想マシン利用を許す代わりに、業務用の仮想マシンは必要最低限の環境にとどめてセキュリティの維持と生産性の向上を図るといった使い方ができるとシトリックスでは説明している。
シトリックスは現在、サーバ上で動作するPC環境(仮想マシン)を、ユーザー端末から遠隔的に使うデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」に力を入れている。デスクトップ仮想化はユーザー端末が常時ネットワーク接続されている場合には有効だが、オフラインの環境では利用できない。このため、シトリックスはXenDesktopを補完する目的で、XenClientを開発してきた。
シトリックスは2年前からクライアント・ハイパーバイザの開発を進めている。しかし開発作業は当初の計画から大幅に遅れている。サーバ用のハイパーバイザであるXenServerをベースに開発しているが、グラフィック性能の最適化や電源管理機能の利用、そしてクライアントPC特有の多様な周辺機器への対応に手間取っているようだ。
XenClientはもともとインテルとの共同開発で、vProテクノロジ搭載PC向けに開発が進められているプロジェクトだ。今回発表のXenClient Express Test Kitは、インテルの無線チップおよびグラフィックチップを搭載したHP、デル、レノボの12機種(ノートPC 11機種、デスクトップ機1機種)をサポートする。今後、インテル以外の無線やグラフィックに対するサポートも進めるという。XenClient上で仮想マシンとして動かせるOSは、現在のところWindows XP/Vista/7の32ビット版。将来はLinux、Macへの対応も考えているという。また、シトリックスでは将来XenClientを、AMDのCPUにも対応させる予定という。
XenClientはクライアント・ハイパーバイザにシトリックスのデスクトップ通信ソフトウェア「Citrix Receiver」を組み合わせたユーザー端末用のソフトウェアと、「Synchronizer」というサーバ用ソフトウェアで構成されている。Synchronizerは、サーバとユーザー端末上の仮想マシンとの間での、双方向でのデータ同期を行う。このため、クライアントPC上で動作する仮想マシンのOSやアプリケーション構成、データは常時バックアップされる。バックアップはブロックレベルで行うため、ネットワーク帯域の消費は少ないという。
ユーザーは、CD/DVDからユーザー端末にOSをインストールする、あるいはサーバ側にある仮想マシンを指定してダウンロードすることにより、新規仮想マシンをユーザー端末上に作成できる。シトリックスはXenClientとXenDesktopを緊密に統合し、社内ネットワーク環境でXenDesktopを利用しているユーザーが、外出時には仮想マシンの利用を継続しながらノートブックPC上に移動して、オフライン環境で利用できるようにすることを目指している。しかしこの機能は、最初の正式リリースでは搭載されないという。
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