異機種混在ストレージの拠点間クラスタを構築

EMC、複数拠点にまたがるストレージ仮想化を現実に

2010/05/20

 EMCジャパンは5月19日、複数拠点のストレージをまとめて1つのストレージであるかのように使える製品「VPLEX」を発表した。代表取締役社長の諸星俊男氏は、「競合他社の数年先を行く」製品だと話している。

emc01.jpg EMCジャパン 代表取締役社長の諸星俊男氏

 VPLEXはストレージ仮想化製品の一種。複数ストレージの前段に配置し、サーバに対してこれらのストレージをあたかも1台であるかのように見せることができる。この装置の実体は同社のスケールアウト・ストレージ「V-Max」に搭載されているのと非常に似たエンジンだ。CPUとメモリを搭載し、メモリはキャッシュとして利用する。VPLEX自体はデータ用のストレージを持たず、EMCやそれ以外のベンダのストレージのフロントエンドとして機能する。

 VPLEXを使うと、配下の異機種ストレージ装置間での業務を止めないデータ移行や、異機種ストレージ装置間でのデータミラーリング、異機種ストレージ装置の論理的な統合による容量の有効利用が可能になる。

emc02.jpg VPLEXはまず配下のストレージを統合、次に複数VPLEXの配下のストレージを統合する

 VPLEXのさらに大きな特徴は、複数導入した場合の相互連携・統合機能だ。VPLEXのエンジンに搭載されたメモリはキャッシュとして機能するが、複数のVPLEX間で単一のキャッシュ管理テーブルに基づき、一貫性を確保することができる。これにより、複数のVPLEXにまたがって、配下のストレージ装置を利用した前述のデータ移行やデータミラーリング(レプリケーション)、容量統合が実現できる。この際、複数のVPLEXはファイバチャネルプロトコルで相互通信を行う。

emc03.jpg VPLEXでは各エンジンのキャッシュデータの一貫性をグローバルに確保するテーブルを保持する

 複数のVPLEXをこのように一体化して利用できることを活用して、複数拠点にまたがる統合的で機動的なストレージインフラを構築できる。

 例えばA拠点とB拠点にVPLEXを配置し、それぞれにストレージ装置をぶら下げれば、まず両拠点のストレージ装置をすべて単一のストレージ装置であるかのように扱い、単一のデータに両拠点のサーバからアクセスできるようになる。

 また、仮想化環境でA拠点のストレージ装置の残り容量が少なく、B拠点のストレージ装置には空きがあるという場合、両拠点のVPLEXを経由してA拠点から一部の仮想マシンを(VMotionやライブマイグレーションなどを用いて)無停止で移動し、ストレージリソースの有効活用を図ることができる。

emc04.jpg 一部の仮想マシンをライブマイグレーションなどで遠隔拠点に移動した後も使い続けられる

 さらに、A拠点とB拠点のVPLEX経由で、両拠点のストレージデータを同期することができる。A拠点のストレージ装置に障害が発生した場合も、透過的にB拠点のストレージ装置を利用して業務を継続できる。

 EMCでは、低コストでのディザスタリカバリ(災害対策)を実現する製品としてもVPLEXを推進している。ディザスタリカバリでは、ストレージ装置で提供される遠隔レプリケーション(複製)機能を利用して、遠隔拠点間でデータ同期を図るのが一般的だ。異機種混在だと、装置ごとに違ったレプリケーション手法を使う必要があり、運用の複雑化とコスト上昇が避けられない。VPLEXを使えば、VPLEX自体のレプリケーションに一本化し、各ストレージ装置間のレプリケーションを使わなくてよいことになる。

 これらの利用シナリオすべてを通じて、ストレージ装置としてEMCの製品を使うかどうかは自由だ。ここにVPLEXの最大の特徴がある。

 5月19日に販売開始となったのは「VPLEX Local」と「VPLEX Metro」。VPLEX Localは単一データセンター内で利用するもので、最大4台のエンジンにより1つのクラスタを構成できる。VPLEX Metroは2つの拠点間でのストレージ統合/連携に利用できるもので、最大4台のエンジンによるクラスタを2つ構成できる。価格は、10TBの仮想ボリューム管理用永続ライセンスを含むVPLEX Localが929万円から。そして10TBの仮想ボリューム管理用永続ライセンスを含むVPLEX Metro(2拠点分)が1726万円(税込)から。

 VPLEX Metroでは2拠点間をファイバチャネルで同期接続するため、拠点間の最大距離は100kmに限定される。EMCではファイバチャネルではないプロトコルを用いて数千km離れた拠点間の非同期接続を行う「VPLEX Geo」、さらに多拠点間で距離無制限のストレージ統合/連携を実現する「VPLEX Global」も開発中で、VPLEX Geoは2011年に投入の予定という。

(@IT 三木泉)

情報をお寄せください:

Server & Storage フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

キャリアアップ

- PR -

注目のテーマ

ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

生成AIを業務で使わないマーケターはもはや3割以下 御社はどうする?
HubSpot Japanが日本で実施した調査によると、日本のマーケターの8割以上が従来のマーケ...

新富裕層の攻略法 「インカムリッチ」の財布のひもを緩めるマーケティングとは?
パワーカップルの出現などでこれまでとは異なる富裕層が生まれつつあります。今回の無料e...

ブラックフライデーのオンラインショッピング 日本で売り上げが大幅に増加した製品カテゴリーは?
Criteoは、日本国内のブラックフライデーのオンラインショッピングに関する分析結果を発...