「4分の1の電力、スペース、TCOを実現」
ネットワンが国内投入した超高密度Atomサーバの実力
2010/06/24
ネットワンシステムズが6月21日、米SeaMicroのサーバ機「SM10000」を7月30日に発売すると発表した。SM10000は米Khosla Venturesなどの有力ベンチャーキャピタルが支援する新興企業であるSeaMicroの初の製品として、米国で前週に発表されたものだ。この製品はほかのサーバとどこがどう違うのか。独自取材で得た情報を交えて紹介する。
1ラックにAtom 2000個という圧倒的な高密度
SM10000はAtomをCPUとして採用した高密度な大規模データセンター向けサーバ。しかし、Webサーバとして用いるサーバでは、個々のCPUの処理能力よりもスレッドをかせぐのが有利というのは常識。このため、Atomを搭載した高密度な大規模データセンター向けサーバは、すでに複数の企業が発売している。SM10000がユニークなのは、そのCPU密度の圧倒的な高さだ。
SM10000では、高さ10Uのシャーシ型サーバで、最大512個のAtom Z530を搭載できる。1ラックに換算すると、2000個以上ということになる。例えば5月にNECが発表したAtom搭載サーバ「Express5800/E110b-M」は3Uの筺(きょう)体にAtom 20個で、1ラックでは240個。まさに桁違いのCPU数だ。この高密度によってSeaMicroが訴求するのは省電力と省スペース。最新CPUを採用した1Uのラックマウントサーバ40台と比較して、10UのSM10000は電力消費と占有スペースがそれぞれ4分の1で済むと同社はいう。
「(これまでのAtom搭載サーバ)は、既存のマザーボード・アーキテクチャに沿って、CPU、メモリ、IPMI、クロック、イーサネット、SATAなどの部品を小さい基板に載せて使ってくださいと言っているだけだ。これではソリューションになっていない」と、SeaMicroの共同設立者でプロダクトマネジメント&マーケティング担当バイスプレジデント、アニール・ラオ(Anil Rao)氏は説明する。
「Webデータセンター in a box」を実現
SM10000の目的は、単に高密度というだけでなく、大規模データセンターにおける消費電力とスペースを大幅に削減すること。このためにx86 CPUを採用しながらも、仕組みは全体的に独自開発したものとなっている。
SM10000は、CPUボード、ネットワークカード、ストレージカードをシャーシのインターコネクトに接続する構成となっている。CPUボードは1枚当たり8個のAtomを搭載したもので、1 CPUにつき1GBあるいは2GBのDRAMを挿すことができる。このCPUボードにはSeaMicroが開発したASICを搭載、これが同社のいう「CPU I/O仮想化」機能を果たす。すなわち、このASICはCPU/チップセット側へPCI Expressでイーサネット/AHCIのインターフェイスを提供する一方、バックプレーンのインターコネクトとの接続を行う。これによりマザーボード上の部品数を90%減らしたという。CPUボードは、1シャーシに最大64枚搭載することができる。
ネットワークカードは1Gbpsイーサネットポートを8個搭載したもので、1シャーシに最大8枚挿せる。また、ストレージカードはSATAドライブを8基接続できるもので、これを1シャーシに最大8枚挿せる。当然、ネットワーク・インターフェイス経由で外部のNASなどへの接続も可能だ。1.28Tbpsの総スループットを発揮するというインターコネクトが、これらすべてを相互接続する。つまり、シーゴ・システムズなどの製品に見られるようなI/O仮想化装置、および多数のサーバをネットワーク接続するために必要なギガビットイーサネットスイッチの機能は、この10Uシャーシに組み込まれていることになる。さらにネットワークカードはシンプルながらサーバ負荷分散の機能を備えているため、負荷分散装置も不要となる。こうしてみると、SM10000は「Webデータセンター in a box」と表現できるような統合性を備えている。
「顧客はXeonやAtom(といった特定のCPU)を使いたいわけではない。自分たちが処理しなければならない演算量を考えたときに、どれが最もTCOに優れているのかを考える。この観点で各社の製品を比較すると、SeaMicroの製品のやり方には根本的に、ビジネス的および技術的なメリットがあることが分かる。インターコネクトはこの点で重要だ。電力消費を抑え、部品数を減らし、遅延を減らすことができる」(ラオ氏)
SM10000の負荷分散機能はラウンドロビンあるいは最大接続数に基づいてアクセスを振り分けるものだが、負荷分散グループの動的な再構成ができる仕組みを備えている。これは、各CPUの利用率をモニタし、これが一定のしきい値を超えると、いくつかのCPUを負荷分散グループに自動的に加えることでHTTPトラフィックの処理能力を高めることができるというもの。逆に、CPU利用率がしきい値以下になると、不要なCPUを解放することができる。サーバファームを複数の用途に使っていれば、ピークのずれを利用して、CPUリソースを有効活用できる。
なお、少なくとも現在のところ、SM10000では複数シャーシのインターコネクト同士を直接つなげることはできない。シャーシをまたがる通信は、イーサネット配線経由で行う。負荷分散も、外部の負荷分散メカニズムを使わないかぎり、複数のシャーシにまたがることはできない。
目的はあくまでも省電力と省スペース
高速インターコネクトを備えているということは、CPU間通信に使えるのではないかという期待にもつながる。SeaMicroはAtom以外のさまざまなCPUにSM10000のアーキテクチャを適用できるとしている。ということは、Xeonなどの強力なCPUを搭載して、データベースクラスタリングなどの処理にこのサーバを利用することもできるのではないか。あるいはむしろこうした使い方が当初の目論見ではなかったのか。この疑問に対し、ラオ氏は同社の目的があくまでも消費電力とスペースの最小化にあると答える。
「当初から小型CPUを使うことを考えていた。小型CPUのほうが消費電力当たりの処理能力に優れている。第2に、データセンターで支配的なx86 CPUを使いたかった。第3に、特定CPUにまったく依存しない形にしたかった。そして2008年の終わりごろ、インテルがSilverthoneと呼んでいたAtomを目にし、Atomを使うことになった。Atomは現在最高のワット当たり性能をもたらしている。しかしだれかがさらに優れたワット当たり性能のCPUをだしてくれたら、それを使うだろう。Atom以外のCPUを搭載したCPUボードを6カ月以下で作り上げることができる」
「SeaMicroはスケールアウトのワークロードに注力している。Webと一部のアプリケーションサーバは、このサーバにとって最も適した使い方だ。電力効率の向上が最大の目標だ。今日のWebデータセンターでは、サーバの80〜90%はWebとアプリケーションの階層で使われている。当社は電力効率に焦点を当てているため、顧客にとって最大のインパクトを提供するべく、この最大のセグメントに注力していく」
SeaMicroは2007に設立された企業。ネットワンは2008年から同社と協力し、日本の顧客に対するテストマーケティングを重ねてきたという。ネットワンの代表取締役社長 吉野孝行氏は、6月21日の記者発表で、同社の2010年の事業の4つの柱であるネットワーク事業における差別化、サービス事業の拡充、ユニファイドコミュニケーション事業の促進、データセンター・仮想化事業の促進を改めて説明。SM10000をデータセンター事業における重要な武器として推進していくと話した。データセンター内のWebサーバにはSM10000のようなスケールアウト型サーバを展開することで、既存のサーバに対する投資を生かしながら、データセンター全体としての処理能力を強化し、効率を向上できるという。
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