電気やガス、水道のようなストレージを目指す企業

デルとHPが争奪戦を繰り広げる3PARとは

2010/08/25

 ストレージベンダの3PAR(スリーパー)をめぐり、デルとHPが争奪戦を繰り広げている。

 デルは8月16日(米国時間)に3PARを買収することで、両社の取締役会が合意したと発表。しかしHPは8月23日、デルの提案よりも33.3%高い金額(総額約16億ドル)での買収提案を3PARに提示し、これに待ったをかけた。

 2社に注目される3PARとはどんな存在なのか。

 3PARはストレージ製品「InServストレージサーバ」を提供する企業だ。InServはハイエンドからミッドレンジの市場セグメントをカバーするストレージシステムだが、「ユーティリティ・ストレージ」というコンセプトで差別化し、市場における存在感を高めてきている。「ユーティリティ」という言葉は「電気・ガス・水道」を意味し、これらと同様にデータ領域を使いたいときに使いたいだけ、面倒な設定や構成変更の作業なしに使えることを目指している。

 これを象徴する技術が、同社がいち早く投入した「シン・プロビジョニング」だ。従来のように、将来利用するかどうか分からないような大量のストレージ領域を当初から購入して割り当てておくのではなく、必要になったときに実際に使う分だけディスクドライブを追加すればいい。まさにストレージ容量を「使いたいときに使いたいだけ」使えるようになる技術だ。現在では主要ベンダがこぞって採用するメインストリーム技術となった。同社はその後も、シン・プロビジョニング機能を業界で初めてASIC化し、さらにいったんシン・プロビジョニングを適用した領域を再びシン・プロビジョニング化できる機能を追加するなど、この技術をさらに進化させている。

 また、InServでは容量の追加を、ストレージの稼働を止めることなくほとんど自動的に行えるようにしているほか、データを全ドライブに自動的にストライプ書き込みすることで高速化するなど、ストレージ運用の自動化を進めている。さらに直接的なストレージコスト削減につながるのが、「基幹システムにもSATAドライブを十分活用できる」という主張だ。並列ストライピングで読み書きのスループットを向上し、さらにInServが搭載する小容量データセグメント単位でのRAID的データ冗長化機能で耐障害性を高めることによってSATAドライブの欠点を克服でき、ファイバチャネル/SASドライブの利用を最小限に抑えられるとしている。

 3PARは最近、SSDへの対応とともに、データ自動再配置機能を発表した。これにより、例えばSSDとSATAドライブ混在のストレージシステム構成で、アクセスの集中する小データセグメントが自動的にSSDに移動する、つまり高価な高速データ保存媒体を効果的に利用する仕組みが作れる。

 全体的にいえるのは、3PARのInServがコスト削減/最適化をさまざまな角度から追求しているということだ。デルとHPのどちらが3PARを買収する結果になったとしても、注目に値する存在であることはたしかだ。

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(@IT 三木泉)

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