まかせっきりにできるストレージアレイ

アップルっぽい(?)ストレージが日本に本格上陸

2010/09/17

 プロシューマーを中心に、SOHO、中小企業までをターゲットとしたストレージ製品シリーズ、「Drobo(ディーロボ)」の日本における本格展開が始まった。

 Droboを展開する米データロボティクスでは、アップルを強く意識しており、ストレージ界のアップルになることを目指していると、同社アジア・太平洋地域 営業担当シニア・ディレクターのフィリップ・カズーボン(Phillippe Cazaubon)氏は話す。

 「(アップルは)製品がとにかく違う。(他社の同種製品と)機能を比較するというレベルではない」。データロボティクスでも、製品の圧倒的な魅力が事業戦略の中心になっているという。

 では、ストレージという地味な世界で、どんな魅力が出せるというのか。

 Droboは、個人や小規模組織向けの小型ディスクアレイ装置。USBやeSATA、FireWireによる直接接続が基本だが、AFP/CIFSによるNAS機能やiSCSI接続機能を備えた上位機種も用意されている。5機種のいずれも黒のフラッシュサーフェス・デザインで、ドライブの正常・異常、データ保存容量はインジケータですぐに分かるようになっている。

drobo01.jpg Drobo FS

 Droboでは、RAIDに似た技術を使い、複数のディスクドライブでデータを保護しながら保存できる。いずれかのドライブが壊れてもデータは失われることなく、アクセスできる。壊れたドライブを抜いて、新しいドライブを挿せば、再びデータが保護される構成に戻せる。これだけなら普通のRAIDディスクアレイ装置と変わらないが、Droboにはいくつかの「常識破りポイント」がある。

 常識破りポイントその1は、ハードディスクドライブなしで売られていること。別売りというのでもない。データロボティクスはドライブを売らない。秋葉原でもインターネットでも、ユーザー自身が好きなSATAドライブを買ってきてくださいというスタンスだ。ドライブの組み込みはだれでもできる。裸のドライブをスロットに差し込むだけでいい。そういうビジネスでは、次々新しいユーザーを開拓していかなければならないことになるのではないかとたずねると、上位機種に買い換えるユーザーがかなりいるのだとカズーボン氏は答えた。

 常識破りポイントその2は、いろいろなサイズのドライブを組み合わせて使っても、容量の無駄が少ないこと。RAID のデータ保護の仕組みは、同じ容量のドライブでそろえることが基本になっている。容量の違うドライブを組み合わせても、最小容量のドライブにそろえた形でデータ領域が構成されるため、ドライブ容量の差分は完全に無駄になってしまう。Droboの場合は、組み込まれたドライブのいずれか1基を、より大きな容量のものに差し替えるだけで、全体的な容量を増やすことができる。Droboでは、最下位機種ではRAID 5相当、そのほかの機種ではRAID 5/6相当のデータ保護が可能という。

 異なる容量のドライブを組み合わせて構成できるDrobo独自のRAIDの仕組みについて探ってみたが、いまのところ判明していない。データロボティクスは自社を差別化する重要技術として、詳細な説明を避けている。パリティ情報を生成して保持する点では、一般的なRAIDと同様のようだ。その証拠に、ドライブを入れ替える際にはリビルドの作業が発生する。ただし、このリビルドの作業は完全に自動的に行われ、さらにデータの保存量分を再構築する時間しか掛からない(一般のRAIDでは、データの保存量にかかわらず、ドライブ容量分だけの再構築時間が掛かる)。また、ドライブが2台しか装着されていない場合は、自動的にRAID 1相当の保護が行われる。

drobo02.jpg Droboシリーズ5機種の仕様

 常識破りポイントその3は、ポイント2を含め、設定作業や適切な構成に関する考慮を、ユーザーがほとんどしなくていいという点にある。既存のドライブ群に、新たにドライブを追加すると、通常はRAIDを再構成し、データ領域を拡張する作業が必要になる。しかしDroboでは自動的に領域拡張が行われる。本格的企業向けストレージに見られるシン・プロビジョニングの機能も備わっていて、例えばWindowsに対しては、最初からディスク容量が(最大限の)16TBあるように見せかけておき、必要に応じて後からドライブを増設していくことができる。つまり、容量が足りなくなりそうになったら、新しいドライブを買ってきて追加する、あるいはすでに装着されているドライブのうち最小容量のものを抜いて、差し替えるだけでいい。まとめていえば面倒なことを考えなくていい使いやすさ、どれほどPCになじみがない人でも使いこなせる親しみやすさがDroboの最大の魅力だ。

drobo03.jpg データロボティクスのカズーボン氏

 Droboは、すでに一部の業者経由で売られていたが、今年7月には日本オフィスが設立され、製品管理画面の日本語化も完了。オンラインショップからIT製品流通、中小企業向けSI業者まで、販売体制を拡充している。国内では当面、5機種のうち「Drobo」「Drobo FS」「DroboPro」に力を入れていくという。

 米データロボティクスは、昨年に上位機種を追加し、プロシューマーに加え、SOHOから中小企業への販売に力を入れるようになっている。カズーボン氏は、マーケティング投資、売り上げのいずれも、コンシューマー向けと企業向けの比率は半々になっているという。「個人で使って気に入り、会社でも使うようになったり、会社で使っていて個人で使うようになったりすることはよくある」(カズーボン氏)。特にSOHOや中小企業の市場は、さまざまな産業にたずさわる個人がカギとなっているため、コンシューマー市場からの自然な広がりが期待できると考えているようだ。

 中小企業向けのバックアップストレージという位置付けのDroboProには、rcopyのような簡単なファイルコピーツール(Windows、Macに対応)がついていて、バックアップ作業が気軽にできるようになっている。また、データロボティクスの日本オフィスでは、既存バックアップソフトウェアとの検証も進めている。

(@IT 三木泉)

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