セキュリティや可用性などの品質をアピール
富士通が世界展開するクラウドサービスの中身
2010/09/29
富士通が10月1日に商用サービスとして国内提供を開始するIaaS、「オンデマンド仮想システムサービス」は、Amazon EC2などの先行するIaaSサービスを研究し、これらと比較した場合の欠点をつぶしながら、企業が業務システムのために使えるレベルの品質を実現したことを前面に押し出している。9月27日に富士通が行った説明に基づいて新サービスを紹介する。
「オンデマンド仮想システムサービス」は、1時間単位で課金される仮想サーバサービス。「Amazon EC2に比べ、1.3〜1.8倍の価格」(クラウドビジネスサポート本部 本部長の岡田昭広氏)という(もちろん単純な比較はできない)。
利用者はセルフサービスポータルを用い、自分でサーバ群の構成、起動、停止、バックアップ/リストアなどの作業を行える。管理用のWeb GUIはデフォルトで無償提供される。まずこの点でAmazon EC2に優るとする。
富士通が既存パブリッククラウド・サービスとの最大の差別化ポイントとしているのは、セキュリティや可用性などの品質面だ。
SLAは、しきい値となる稼働率がAmazon EC2では99.95%なのに対し、同サービスでは99.99%に設定している。「これで基幹システムにも使える」(岡田氏)。基本ポリシーはAmazon EC2などと同じで、しきい値を超えてインフラ全体がダウンした時間に応じ、料金を返却する。99.99%が実現できる理由を、岡田氏はすべてのIaaSサービスを構成するすべてのレイヤを、富士通の製品で固めているからだと説明した。仮想化ソフトウェアは、オープンソース・ソフトウェアを富士通の技術者が最適化したものを使っているという。
仮想マシンはデフォルトで(追加料金なしに)無停止フェイルオーバが行われる。すなわちサーバ機や仮想化ソフトウェアがダウンした場合、別サーバ機上で稼働しているバックアップ仮想マシンが、無停止でアプリケーションを引き継ぐという。ストレージ・データもデフォルトで多重化される。
意識的なリクルーティングの結果なのかもしれないが、5月末から200社を対象に提供しているベータサービスでは「インターネットサービスのために使っているユーザーはほとんどいない。業務システムがほとんど」(岡田氏)という。また、競合他社のユーザーが採用する例も出てきているという。その理由を、岡田氏は「(安心して)3階層システムが組めるサービスがほかにないから」だと表現した。同サービスの場合、Webサーバを顧客ごとの専用DMZに配置し、アプリケーションサーバやデータベースサーバは(これも顧客ごとの)プライベートネットワークに置くような構成がとれる。ファイアウォール機能はデフォルトで提供される。他社のパブリッククラウド・サービスで、基本的にすべての仮想サーバが基本的にインターネットにさらされる状態の1セグメントになっていて、ユーザーがファイアウォールを配置することはできるものの、DMZ/プライベートネットワークに分けるようになっていないのとは大きな違いだとする。
また、運用面でのセキュリティに関する配慮として、作成した仮想サーバはファイアウォールを設定するまでインターネットに露出しないようになっている。
さらに同サービスでは、ホストされた仮想サーバへのアクセスで、インターネット以外にFENICSによるIP-VPNや広域イーサネットといった閉域網サービスが利用できる。このため、ベータサービスでは、企業のITインフラの延長として同サービスを利用する例が目立つという。富士通では、同じデータセンターにホストされた同じ顧客のサーバとのLAN接続も提供している。
仮想サーバ環境の構築は、Web GUIからウィザード形式で実行できる。仮想サーバ群の作成は、10種類用意されたシステムテンプレートを使って行えるようになっている。例えばWebサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバの3階層システムを、一括して作成することが可能だ。例えば構築後にWebサーバを追加したい場合は、新たにWebサーバのアイコンをドラッグ&ドロップしていけばいい。システムテンプレートは今後追加される予定だ。なお、ユーザーが購入したアプリケーションのインストールも可能。サポートも含めた富士通としてのアプリケーション提供も拡充していくが、SAP製品については現在仮想化環境としての認定申請中。オラクル製品は、原則としてOracleVM以外の仮想化プラットフォームでのサポートが提供されない。
なお、「オンデマンド仮想システムサービス」ではクレジットカード決済は行わない。請求書ベースの決済であり、新規ユーザーは、利用開始時に富士通の営業担当者と契約を結ぶ必要がある。いったん契約を結ぶと、後は利用実績に基づき自動的に毎月請求される。
富士通は2010年度中に、このサービスを日本に続きシンガポールとオーストラリア、さらに米国、英国、ドイツの拠点からも提供開始する。低価格なIaaSサービスは日本でも海外でも続々登場するが、「オンデマンド仮想システムサービス」では価格競争に加わるつもりはないという。同社はマイクロソフトと協力して、Windows Azureの展開も進めるが、低価格ニーズへの対応は、Azureなどにまかせたいと岡田氏は説明している。
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