ネットワークを上に広げてインテリジェンスを
シスコの次の一手は「アプリケーション」の仮想化、最適化
2010/10/28
シスコシステムズは10月26日、同社が提唱する「ボーダレスネットワーク」構想を実現する新製品群を発表した。スイッチ、ルータやセキュリティアプライアンスの新製品に加え、アプリケーションを高速化する機能をルータに実装し、クラウド対応をさらに推進するという。
同社は2009年より、ボーダレスネットワーク構想を掲げてきた。「データセンターだけでなく、キャンパスや拠点でのクラウド対応を推進し、エンドツーエンド時代の新しいネットワーク基盤を提供するもの」(シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括 木下剛氏)だという。
2010年3月には、エンドポイントの仮想化およびセキュリティにフォーカスしたソリューションを発表している。今回の発表はそれに続く第3ステップに当たるもので、「アプリケーションの仮想化」に焦点を当てた。「ロケーションによらず、安全に、適切なユーザーが適切なコンテンツを利用できるようにする」(木下氏)。
その中核としてシスコが掲げているコンセプトが、「Application Velocity」というものだ。WAN高速化(シスコでは「WaaS:Wide Area Application Services」と表現)や仮想化といった技術を駆使して、データセンターに置かれたアプリケーションを、キャンパスネットワークや拠点で快適に利用できる環境を整える。
具体的には、Cisco IOSの機能を強化し、TCP最適化や重複排除といったレイヤ4での最適化機能を持たせた「WAAS Express」を実装した。さらに、従来アプライアンスとして提供してきたWAN高速化装置を、拠点側ルータ「Cisco ISR G2」のServices Ready Engine(SRE)モジュールとして実装できる「WAAS Express」を発表している。アプリケーションの可視化と分類を行うNBAR(Network Based Application Recognition)と組み合わせて、「これまでサポートしてきたレイヤ3までのネットワークを上に広げて、レイヤ4〜7までのインテリジェンスを持たせる」(木下氏)。
拠点でのアプリケーション活用を支えるという意味で、Cisco ISR G2にはもう1つ別の機能を追加した。SREモジュール上に仮想サーバを実装できる「Cisco USC Express」だ。VMware vSphere Hypervisorを元にしたハイパーバイザーが載っており、その上で仮想サーバを稼働できるようになっている。例えばDHCPサーバやディレクトリサーバ、あるいはPOS用アプリケーションなど、拠点で稼働しているさまざまなサーバ類を搭載、集約することで、運用コストを削減できるほか、データセンターと拠点を結ぶWAN回線に障害が発生してもサービスを継続できることがメリットだ。
インフラ製品のリフレッシュも完了
シスコシステムズは同時に、インフラを支える製品群にも新しいモデルを追加し、「インフラに位置付けられる製品のリフレッシュが完了した」(木下氏)。これによって、EnergyWiseやTrustSecといったボーダレスネットワークで提供する機能をフルに活用可能な環境を整える。
スイッチでは「Catalyst 4500Eシリーズ」を投入した。同シリーズは、最大848Gbpsのバックプレーン容量を実現する「Supervisor Engine 7-E」を搭載できるほか、「Flexible NetFlow」のサポートにより、ネットワークトラフィックのきめ細かな可視化、制御が可能だ。
ファイアウォールやVPN、IPSといったセキュリティ機能を提供するアプライアンス「Cisco ASA」では、新たに、性能を強化した「Cisco ASA 5500シリーズ」を追加した。また、エンドポイントのシームレスかつ安全な接続を可能にする「Cisco AnyConnect セキュア モビリティ」を強化し、MACsecによるレイヤ2暗号化機能の追加、Windows 7やiPhoneも含む対応プラットフォームの拡大などを図っている。
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