仮想アプライアンスで導入、運用を楽に
中小企業のサーバ仮想化で仮想ストレージを武器に、ネットワールド
2010/12/02
ネットワールドが12月1日、仮想アプライアンス形式のストレージ製品を同日販売開始したと発表した。目的はスバリ、国内の中小企業におけるサーバ仮想化の普及だ。
ネットワールドは国内でVMware vSphereによる多数のサーバ仮想化導入実績を持つ。今後は、中小企業におけるサーバ仮想化が大きなテーマになると同社はみる。しかし同社代表取締役社長の森田晶一氏は、「ヴイエムウェアは中小企業のサーバ仮想化で、まだ課題を残している」と話す。共有ストレージなどの運用における難しさ改善への期待に、十分応えることができていない、という。
サーバ機は、仮想化に適したマルチコアCPU搭載製品が安価に手に入るようになった。サーバ仮想化ソフトウェアについても、ヴイエムウェアは「VMware vSphere 4」で、最大2 CPU搭載のサーバ3台までに限定した特別パッケージ「VMware vSphere Essentials Kit」「VMware vSphere Essentials Plus Kit」を投入。最新版のvSphere 4.1では、Essentials PlusでvSphereの人気機能であるvMotionが利用できるようになった。Essentials Plusでは再起動型可用性確保機能のVMware HA、そしてサードパーティ・バックアップソフトウェアの要らないデータバックアップ機能であるVMware Data Recoveryも使える。これにより、小規模でも運用性と可用性の高いサーバ仮想化環境を構築しやすくなってきた。
残る課題はvMotionなどを利用するときに必要な共有ストレージだ。自律性を高め、運用を楽にした製品が登場してきているが、安価とまではいえない。また、専用の管理ツールを必要とし、それなりの運用に関する知識を備えた担当者が求められる。しかし、中小企業では、ストレージ管理者の育成もままならない。
ネットワールドはこうした共有ストレージの問題を克服するためとして、英StorMagicによる「StorMagic SySAN v 4.4」の国内投入を発表した。「事実上の国内総代理店」(森田氏)として、同社およびパートナー経由で提供するほか、国内のサーバベンダにも採用を働きかけていくという。
小規模な冗長化ストレージをシンプルに実現
SySANは仮想アプライアンス形式のiSCSIストレージ構築ソフトウェア。物理サーバ機の内蔵ハードディスクを、あたかも外部接続されたiSCSIストレージであるかのように利用できる。イメージしにくいかもしれないが、まずフラッシュメモリなどからVMware ESXを起動し、次にSySANを動かせば、SySANの管理するディスク領域に保存しておいた業務システムなどの仮想マシンを起動できる。
2台の物理サーバ上でそれぞれ1インスタンス(コピー)のSySANを稼働すれば、完全なミラーリング構成ができる。この2インスタンスのSySANは、vSphereからは2 基のコントローラを備えた単一のiSCSIストレージのように見える。あとは、2台の物理サーバが1台のストレージに、iSCSIで接続されているのと変わらない運用が可能だ。例えば物理サーバ1では仮想マシンAとBを稼働し、物理サーバ2では仮想マシンCとDを稼働させる。この場合に、すべての仮想マシンおよびアプリケーションのデータは物理サーバ1と2の双方に、常に同期された形で存在することになる。仮想マシンAとBの処理データは物理マシン1のSySAN(が管理するハードディスク)に書きこまれ、仮想マシンCとDの処理データは物理マシン2のSySAN(が管理するハードディスク)に書きこまれるのだが、2つのSySANが常時ミラーリングされるために、これが可能になる。
この構成で、例えば物理サーバ1のSySANに障害が発生した場合、vSphereが備えるパスフェイルオーバ機能(代替経路で接続する機能)により、全仮想マシンの読み書きは物理サーバ2のSySANがすべて受け持つことになる。障害が復旧した時点で、再同期により冗長性を回復できる。物理サーバ1のサーバ全体が落ちた場合は、VMware HAにより、仮想マシンAとBは物理サーバ2の上で自動的に再起動される。さらに、vMotionを使えば、例えば物理サーバ2をメンテナンスしたいとき、仮想マシンCとDを、管理者は明示的に物理サーバ1に無停止で移行させることができる。
SySANでは、ハードディスクドライブにSSDを組み合わせ、高いパフォーマンスが要求される仮想マシンについてはSSDに配置するような使い方もできる。今後、ハードディスクとSSD間でのデータ配置を自動化する機能の搭載も予定しているという。
英StorMagic CEOのハンス・オサリバン(Hans O'Sullivan)氏は、ハードディスクやSSDの価格低下に比べ、専用ディスクアレイ装置の価格低下は遅いと指摘、ハードディスクを直接使うことにより、コスト効率よくストレージが利用できると話した。また、SySANでは特別の管理ツールが不要で、VMware vSphereの管理ツールであるvCenterから一体的に設定や監視ができる点をもう1つのメリットとして強調した。
LeftHand Virtual SAN Applianceとの違いは?
HPが買収したLeftHand Networksも、仮想アプライアンス形式のストレージ製品を提供している。オサリバン氏は同製品との比較でも、SySANは価格が安く、物理サーバ2台で可用性の高い利用が可能であり(Lefthandの場合最低3台必要)、専用管理ツールが要らないといった優位性を説明した。StorMagicはソフトウェアによるストレージであるとともに、可用性向上ツールとしての側面を持ち合わせる点も、LeftHand Virtual SAN Applianceとは方向性が若干異なっている。SySANは2物理サーバ/2インスタンスで構成し、データ冗長化を行うのが目的だ。提供できるストレージ領域の全体的な容量は、物理サーバ1台に搭載できるディスク容量に制限を受ける。物理サーバの台数を増やしても、容量は増えない。一方、LeftHand Virtual SAN Applianceでは、複数サーバの内蔵ディスクをまとめ上げ、容量の大きな仮想ストレージを構成することができる。しかし、SySANが実現しているような冗長性はない。
ネットワールドはこの製品を、特にVMware vSphere Essentials Plus Kitとの組み合わせで推進していきたい考えだ。2011年3月31日までのキャンペーン価格は下記のとおり。販売経路によって異なることもあり、その後の価格については未定という。
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