ストレージクラウドサービスを透過的に利用

ファイルストレージをハイブリッドクラウド化する武器を発表、F5

2010/12/10

 F5ネットワークスは12月9日、企業内のファイルストレージをクラウド連携させる新製品を2011年初めに国内で販売開始すると発表した。ファイルストレージ仮想化装置「ARX」のオプション製品で、クラウドストレージサービスや遠隔拠点のストレージを、あたかも同一拠点内にあるかのように利用できる。

 F5が日本で2007年から販売しているARXは、配下にあるNASやファイルサーバを仮想化する装置だ。さまざまなベンダのNASをまとめ上げ、エンドユーザーに対して、論理的に単一のファイルストレージであるかのように見せ、利用させることができる。

 新製品「ARX Cloud Extender」はWindowsサーバ上で動作するソフトウェアで、これをARXと同一の拠点で動かすと、アイロンマウンテンデジタルの「Virtual File Store(VFS)」や米アマゾンの「Amazon S3」を、論理的にアーカイブ階層として組み込むことができる。すなわち、ARXで管理されているローカルデータのうち、古いものやアクセス頻度の低いものはこうした外部のストレージクラウドに自動的に移動される。しかし、ARXでは移動したデータがあたかも同一拠点内のストレージに保存されたままであるかのように見せかけることができる。これにより、企業はストレージクラウドサービスを臨機応変にアーカイブ目的で利用しながら、ユーザーにとっての利用環境をこれまでどおりに保てることになる。低コストなストレージクラウドサービスを積極的に活用できれば、総体的なデータ保存コストを押し下げることが期待できる。日常的なバックアップについても、必要なデータだけを対象にすることができるため、バックアップ所要時間やコストの点でもメリットがある。また、一時的なデータ保管ニーズへの対応も可能になる。F5の日本法人では、国内のストレージクラウドサービスとの同様な連携も進めていくという。

 Cloud Extenderでは、ストレージクラウドサービス以外に、別拠点に置かれたオブジェクトストレージとの間でも同様のことを実現できる。当初はネットアップの「NetApp StorageGRID」、EMCの「EMC Atmos」、Caringoの「CAStor 5」に対応する。

f5network01.jpg Cloud Extenderはクラウドサービスや田拠点のオブジェクトストレージとの翻訳機能を提供する

 Cloud Extenderは、ARXと、個々のクラウドストレージサービスやオブジェクトストレージに対するアクセスプロトコル/APIとの間での、いわば「翻訳」サービスを提供する。ファイルストレージベンダの中には、自社製品間でWAN越しにこうしたデータの自動階層管理機能を提供する動きもあるが、ARX Cloud Extenderの場合はマルチベンダ/マルチサービスでこれが実現できることが大きな特色だ。

F5では段階的に、Cloud Extender上での付加価値機能を増やしていく予定だ。暗号化機能は当初から搭載。その後ミラーリングやフェイルオーバ、データ圧縮/重複除外、さらに、あるサービス/オブジェクトストレージから別のサービス/オブジェクトストレージへのマイグレーション機能も提供する。

 一方、アイロンマウンテンデジタルなど、ストレージクラウドサービス側でARXへの直接的なゲートウェイ機能を提供していく動きもある。この場合はCloud Extendeerなしに同様な連携が可能になる。

仮想アプライアンス版も提供

 F5はあわせて、ARXを仮想アプライアンス化した「ARX Virtual Edition」を、2011年初めに販売開始することを発表した。VMware vSphereによるサーバ仮想化インフラ上に、比較的低コストでARXと同様のファイルストレージ仮想化機能を実装できる。性能としては現状のアプライアンスの最下位機種である「ARX 500」よりも下のレベルで、これまでリーチしにくかった中小規模での導入を狙うという。

 ARX VEはトライアル版、製品版、OEMパートナー版の3種を提供。トライアル版は無償だが、使用期間を45日間、ファイルオブジェクト数を約4000に限定する予定という。製品版は290万円程度(F5からの提供価格)を予定する。

 F5は、ARXとの連携をサードパーティ製品に組み込むためのデータ管理用API「F5 iControl」を無償で提供開始したことも発表した。

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(@IT 三木泉)

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