統合クラウドインフラ製品を来春提供開始へ

ヴイエムウェアに闘いを挑む米Nimbulaが日本デビュー

2010/12/16

 米ヴイエムウェア共同創立者で元CEOのダイアン・グリーン氏も社外取締役を務める米国のベンチャー、Nimbulaが、12月6日にパブリック・ベータテストを開始したばかりの同社初の製品、「Nimbula Director」について都内で説明した。Nimbula Directorとはひとことで言えば、「ビジネス向けクラウド構築・運用のための統合プラットフォーム」だ。クラウド技術関係者に注目される最先端技術を活用し、プライベート―パブリックを連携させた仮想データセンターの運用管理も守備範囲としている。従って、Nimbula Directorは企業とクラウドサービス事業者の双方を対象とする。

 Nimbulaの経営陣には、Amazon Web Servicesとヴイエムウェアの元主要メンバーが名を連ねている。これに象徴されるように、Nimbula Directorでは、ヴイエムウェアがvCloud Directorで実現を目指すIaaSレベルのマルチテナント・ビジネスクラウド環境に、Amazon EC2ライクな拡張性、俊敏性、柔軟性を与えることを狙っている。都内で説明を行った同社マーケティング担当副社長のレザ・マレクザデ(Reza Malekzadeh) 氏は、「VMwareは、これまでのプライベートクラウド環境をうまく管理できる。しかし、Amazon EC2をVMwareで構築することはできない」と表現した。すなわち、大規模な業務向けクラウド環境には、Amazon EC2に象徴されるような自動化と俊敏性が必要というのがNimbulaの主張だ。

 「NimbulaはVMware vSphere+vCenter+Oracle Database+vCloud Directorと競合する」(マレクザデ氏)。NimbulaはOS/ハイパーバイザとして出荷時にDebian/KVM、CentOS/Xenをサポートするが、これを含め、企業内あるいは商用IaaSを実現するための、すべてのミドルウェアや管理モジュールが一体化しているのが特徴だ(マレクザデ氏がOracle Databaseに言及しているのは、ヴイエムウェアのvCloud Directorが(なぜか)管理用にOracle Databaseのインストールを必要とするからだ)。

 マレクザデ氏は、大規模クラウド環境を非常に短時間でシンプルに構築し、その規模の拡大・縮小も容易だということを第1の差別化ポイントとして挙げる。

 Nimbula Directorでは、新たなサーバをネットワークブート(PXEブート)しさえすれば、ハイパーバイザを含め、必要なソフトウェアをすべて自動的にインストール可能。こうしたインストールを多数のサーバに対して次々に実行するだけで、大規模なクラウド環境が構築できるという。運用管理を始める前の、細かな構成が不要だというのだ。詳細な運用ポリシーはあとで設定するとして、とりあえずのIaaS環境は整ってしまう。vCenter ServerやEucalyptusに見られる管理ノードは不要。各仮想化ホスト、すなわち各物理サーバ上に管理情報が分散複製されるため、管理ノードの障害で仮想化インフラ全体がダウンしたり、制御できなくなったりということはない。可用性確保の観点からも、こうした完全分散構成は有利という。

nimbula01.jpg Nimbula Directorは、ストレージ領域運用も含めて統合的に自動化する

 マルチテナント性を柔軟に実現するためのネットワーク機能の充実は、もう1つの大きなポイントだと、マレクザデ氏は@ITに語った。vCloud Directorと同様、Nimbula Directorでは単一の大規模クラウド環境を複数の論理セグメントに分割し、別個のサービスレベルやアクセスポリシーを割り当てるといった、マルチテナント運用を意図している。各テナントがITリソースを、複数の物理データセンターにまたがる形で単一のポリシーのもとに運用することもできる。また、Amazon EC2などとAPI連携し、こうしたパブリックサービスに構築したプライベート空間と、Nimbula Director上の論理セグメントをつないで、一貫したポリシーのもとに運用することも可能だ。VMware vSphereを使ったデータセンターとの間でも同様な連携ができる。ただし、社内データセンターで動いている仮想マシンを社外クラウドサービスに移動するには、当然ながらこの仮想マシンを複製したのち、相手先サービスの用いる仮想マシンフォーマットへ変換する必要がある。

 vCloud Directorでは、論理セグメント間のネットワーク的な分離を、イーサネットのカプセル化によって実現している。対してNimbula Directorでは、このところクラウド関係者の間で急速に注目が高まっているOpenflowを採用するとマレクザデ氏は話す。レイヤ3で処理することにより、WAN越しにデータセンター同士を論理結合する作業が容易になる。ユーザーアクセス管理では、既存のLDAP/Active Directoryを活用できる。

 Nimbula Directorは、ソフトウェアとして2011年前半に一般提供開始の予定。ライセンス料は未定だが、サブスクリプション(期間ライセンス)形式で、コア数に比例するものになるという。提供開始当初から日本市場でも展開したいという。経営陣が著名で、セコイア・キャピタルやアクセル・パートナーズといった著名ベンチャー・キャピタルが出資していることもあり、日本のIT関係者からの問い合わせもすでに多いという。今回はネットワールドがNimburaによる説明の場をつくった。ネットワールドがNimbula Directorの国内展開にどう関わることになるかは未定というが、他の国内ITディストリビュータの機先を制する狙いもあったようだ。

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(@IT 三木泉)

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