日本法人はサーバ仮想化市場開拓へ

「10年前ならアイシロンは必要なかった」

2010/12/27

 「10年前は、アイシロンのようなベンダは必要なかった」と、アイシロン・システムズ日本法人の代表取締役、ティム・グッドウィン(Tim Goodwin)氏は12月初めの戦略説明会で話した。

 最近、EMCが買収を表明したアイシロン(米EMCは12月20日、買収の完了を発表した)は、ストレージの注目分野、スケールアウトNASで急成長してきた。NASを並列に接続することで、容量とスループットを同時に拡張できるのがスケールアウトNASだが、アイシロンの「Isilon IQ」は単一のファイルシステムで10ペタバイト(PB)までを扱うことができる。グッドウィン氏のコメントは、同社の成長が、メディア/エンターテイメント、設計、研究などの大容量ファイルを扱うニーズに支えられてきたことを踏まえたものだ。

isilon01.jpg アイシロン・システムズ日本法人 代表取締役、ティム・グッドウィン氏

 メディア/エンターテイメントは同社にとって一番のユーザーだ。世界的には遺伝子解析などのライフサイエンス、そしてサーバ仮想化などの一般的な業務利用が進みつつある。日本でもメディア系は売り上げの4割以上を占めるが、そのほかは研究関連を中心とした公的機関やCAD/CAMなどの製造業系の設計業務でよく使われているという。日本では、まだサーバ仮想化などで使われるケースが少ないが、グッドウィン氏によると、今後さらに仮想化が普及すれば、アイシロンのNASもこの用途で使われるようになっていくだろうという。今後アイシロンは、国内でクラウド/仮想化のニーズ取り込みに力を入れていく。

 アイシロンは今年9月、これまでのCIFS/NFS、HTTP、FTPに加え、iSCSIに対応した。これに伴い同社は、「スケールアウトNAS」ではなく「ユニファイド・スケールアウト・ストレージ」と表現するようになっている。例えばVMware vSphereでは、以前からNFSによるストレージアクセスをサポートしているため、iSCSI対応が必ずしもサーバ仮想化ニーズの取り込みに即座に貢献するというわけではない。しかしさまざまな種類のデータを単一のストレージシステムで統合管理するためには、複数のストレージアクセス・プロトコル対応は役立つ。アイシロンでは、今後ほかのストレージプロトコルへの対応も検討しているという。

 マーケティング部長の武堂貴宏氏は、「ITはコストセンターではなく生産性を上げることが求められる一方、半年先が見えない状況がある。この2つを満たすキーワードはシンプル」と説明した。そしてアイシロンのIsilon IQは、ほかではできないシンプルさを実現できるという。容量拡張は実質的には新たなストレージノードを接続するだけですみ、単一のファイルシステムで最大10PBを扱えるため、容量拡張は必要に応じて行えばよく、無駄がないし、ITの都合で業務の足をひっぱることもない。通常だとこれだけの容量を実現するには複数の別個のストレージシステムを使わなければならず、管理対象が増えてしまうが、Isilon IQでは単一のシステムを管理すればいい。こうしたメリットを、今後はクラウド/仮想化で発揮していきたいという。

(@IT 三木泉)

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