デルに対するOEM供給はどうなる
EMC大々的な発表、ミッドレンジ製品ラインを一新
2011/01/20
EMCは1月18日にニューヨーク、ロンドン、シンガポールで「記録を破る」というスローガンを掲げたイベントを開催、同社の主要事業全般にわたり、製品再編や新製品の投入を発表した。その最大のトピックはミッドレンジ・ストレージ製品の再編だ。
製品ラインをシンプル化、ユニファイドのメッセージを前面に
EMCはミッドレンジ市場で、ブロック・ストレージの「EMC CLARiiON(日本名CLARiX)」、およびこれにNASヘッドを組み合わせた「EMC Celerra」を展開してきた。同社は今回、これらを「EMC VNX」という単一の新製品ラインに置き換えることを発表した。なお、CLARiXとCelerraはただちに販売終了となるわけではない。販売終了時期は未定だ。
VNXはインテルのWestmereプロセッサと6GbpsのSASバックエンドを搭載、アクセスプロトコルとしてFCoE、ファイバチャネル、iSCSI、CIFS/NFSなどをサポートするユニファイド・ストレージだ。数年前にEMCに入社したユニファイド・ストレージ部門プレジデントのリッチ・ナポリターノ(Rich Napolitano)氏は、「私が雇われたのは製品の統合を行うためだ」と話した。「まだ多くのユーザーは、Exchange、SQL Server、VMware、ファイルサービスなどのそれぞれに別個のストレージを使っている」。ブロック・ストレージとファイル・ストレージを1つの製品にすることで、シンプル化と効率化に向けたメッセージを明確化し、企業におけるストレージ統合を促進するという。それは、急速に成長するファイル・ストレージ市場と、規模の大きいブロック市場の双方を、EMCがさらに積極的に取りにいくということでもあると、同氏は説明した。
VNXは、ファイバチャネルしかサポートしない最下位機種を除き、すべてがファイバチャネル、FCoE、iSCSI、CIFS/NFS、pNFS、MPFSをサポートする。記憶媒体は全機種でSAS、ニアラインSAS、フラッシュドライブが利用可能。搭載可能なドライブ数は、最下位機種で75基、最上位機種で1000基だ。
EMCでは、VNXを含むミッドレンジ製品の管理に、発表済みの管理ソフトウェア「EMC Unisphere」を用い、運用作業の簡略化を図っている。Unisphereではストレージ容量がどのようなアプリケーション/用途に割り当てられているかをグラフィカルに円グラフで表示でき、疑問については管理ソフトウェア内からオンライン・コミュニティなどの情報にアクセスできるといった機能を備えている。VMware環境についても、仮想マシンとボリュームの配置関係など、さまざまな情報を取得することができる。
付加価値ソフトウェア機能については、用途に応じた5種類のパッケージとして提供する方式に改めた。5種類とは「FAST Suite」「Local Protection Suite」「Remote Protection Suite」「Application Protection Suite」「Securiy and Compliance Suite」だ。EMCはこのなかでも特に、FAST SuiteをVNXシリーズにおける最重要機能として強調している。
FAST Suiteはデータの自動階層化機能と、フラッシュドライブを用いたキャッシュ機能(「FAST Cache」)を含んだもので、既存製品でも提供されている。新製品本体の性能向上に、FASTの機能を組み合わせると、既存製品をFASTなしで利用する場合に比べ3倍のパフォーマンス向上が見られるという。例えばSQL ServerやOracle Databaseでは3倍のユーザー数、3倍のトランザクション数に対応でき、VMware Viewではレスポンスタイムが3分の1に向上するとしている。
VNXeは中小企業を狙った売り方の変革
EMCはさらに今回、VNXの下に「VNXe」という別個の名前の製品ライン(2機種)を用意した。これは興味深い取り組みだ。
VNXeは「中小企業や、大企業・中堅企業の部門レベルを対象とした、1万ドル以下からスタートできるユニファイド・ストレージ」。すなわち、これまでの「CLARiX AX4」「Celerra NS4」の代替と考えれば大きな間違いはなさそうだ。デフォルトでNFS/CIFSとiSCSIに対応する。
ハードウェアの位置付けとしては既存製品とそれほど大きな違いはないものの、EMCはVNXeで新たな市場を開拓すると強調している。VNXeにおける新しさは、主にその売り方にある。
VNXeを担当するブライアン・マホン(Brian Mahon)氏によると、VNXeはEMCにおける初の「流通チャネル・オンリー」製品だという。EMC本体が直販することもない。デルが売ることもない。そのうえで、新規の販売業者が参加しやすい環境を整備していくという。具体的にはこれまでのVelocityプログラムの下層に新たな認定プログラムを配置。3時間の無料オンライン・トレーニングを受けるだけで、VNXeを売れるようにする。これによって販売業者が事前に販売のための投資をすることなく、即座に結果を出すことができる(販売実績を作れる)ようにした。
また、販売業者がいったんVNXeを販売したあとも、ユーザー企業とビジネスを継続できるようにするための仕組みを提供する。例えばVNXeの電源装置の1つが故障した場合、管理ツールのUnisphereでは故障の根本原因が電源装置だということをユーザーに対して明確に示す。ユーザーはワンクリックで代替品をオーダーできる。この情報は即座に販売業者に伝えられ、業者はパーツ供給による売り上げを獲得できる。また、販売業者はユーザー企業の運用担当者によるUnisphereの操作履歴から、ユーザー企業で何が課題となっているかを把握し、迅速な提案につなげることもできるという。
VNXeに標準添付されるUnisphereには、ストレージを簡単に操作できるようにするための仕掛けも組み込まれている。具体的には何をやりたいかに応じて、ストレージを即座に構成できるようにするためのウィザードが用意されている。例えばExchange Serverをメールボックス100個の規模で運用したい場合、こうした情報を入力するだけで、数分のうちに必要なストレージ領域を設定できる。Exchangeのほかには、NFS/CIFSの共有ボリューム、iSCSIボリューム、VMwareのボリューム、Hyper-Vのボリュームをウィザードで設定できるようになっている。
なお、VNXeにはスナップショットを含む主要なソフトウェア機能は同梱されており、別途購入する必要はない。
デルとのOEM関係はどうなる?
EMCのミッドレンジ・ストレージに関して避けられないトピックは、「EMCとデルとの関係が、今後どうなるのか」という点だ。EMCはデルに対し、ミッドレンジ・ストレージをOEM供給してきた。しかしデルは最近、米EqualLogicに続き米Compellentを買収するなど、自社製品を急速に拡充し、いわば「自給自足」の体制を整えてきている。@ITの質問に対し、ナポリターノ氏は「タクティカル(tactical:戦術的)に考えていく」と話した。すなわち、デルに対するOEM供給契約は現在のところ維持されているが、今後のデルの出方によって、契約内容を見直すということのようだ。
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